伝統技術の継承と未来へのバトン 金継ぎを知る

金継ぎは、昨今はたくさんのお教室を見かけるようになりました。

しかし、本当の金継ぎとは、ただ単に壊れたものを繋ぎ合わせるだけではありません。

京都市北区に工房「漆芸舎 平安堂」を構える職人、清川廣樹さんは漆芸修復師として、古くからの文化やモノを守り伝えています。伝統の技法である「金継ぎ」はモノを直すという行為によって、後世へと繋いでいきます。この技法を継承している清川さんに江戸時代の職人とモノを通して会話をし、そしてまだ見ぬ将来の職人へと伝えていく金継ぎの意義やその大切さについて伺いました。

清川廣樹さんは、半世紀にわたり、江戸時代に確立された伝統技法の継承者として、漆を用いた「漆芸」修復に携わり、その対象は、神社仏閣、仏像などの文化財や陶磁器、漆器、古美術品など多岐にわたります。

今回のインタビューでは、職人としての経験と使命について、江戸時代から続く日本人の技術を未来へ伝える「バトン役」としての自覚を持って活動しているという話を聞きました。

「伝統芸術を現代の人たちに伝えていきたいという強い思いで技術者の育成にも携わっています。さらに伝統だけにとらわれるのではなく、伝統を未来に繋ぐ役割を担い、時代の変化に合わせていくことも大切です」と語る清川さん。

「日本の伝統文化や精神性を、一般の人々やまだ気が付いていない人々にも伝えたいと考えています。その伝統技術の継承は、単なる技術だけでなく日本人の精神性や文化力の伝達でもあるからです」と、伝統芸術を現代社会にどう伝えるかを模索し、文化の持つ力を広く共有したいという清川さんの思いを感じます。


2024年9月、ベネチアの修復家養成学校IVBCの講座の様子

「僕はAIやITの発展だけでは『良い国づくり』はできないと感じています。人間の感性から生まれるもの、感性そのものの重要性が置き去りにされていることに危機感を感じています。日本人だけでなく、世界中がもう一度『感性』を見直すきっかけ作りが必要で、AIやITの進展が進む中で、人間の感性や精神性が失われないようにすることが重要だと感じています」とA I時代について指摘をされました。

日本産の漆を使うことにこだわっています

「自然素材を使った伝統技法は、数千年の寿命を持たせることができるのです。ケミカル素材は手早く作業できる利点がありますが、伝統的な木製品や漆器には適さず、石油製品を使うと木が死んでしまいます。素材本来の寿命や美しさも損なうリスクがあります。ケミカル素材と伝統技法の違いを理解し、伝承することが重要で、伝統技法の本質や価値を次世代に伝えるため、正しい知識と技術の継承が不可欠です」と、熱く語ってくださいました。

清川さんは、今後の展望として、海外、特にイタリアでの活動を通じて、伝統技術の価値や意義を再認識し、国際的な技術継承のモデルを作りたいと考えているそうです。

日本古来の漆芸修復の技をイタリアで伝えています

「海外での日本伝統技術の修復・保存活動が早急の課題で、日本の伝統的な製品(特に木を使ったもの)が壊れつつあり、修復活動の職人不足によって伝統芸術が継承できない危機に直面しています。イタリア国内で修復職人を増やす取り組みが進められていますがスポンサー不足や、資金面での困難さが課題です」と言います。

海外の美術館には、日本の美術作品が多く収蔵されているのを目にしたことがある方も多いと思います。日本の漆器はヨーロッパでも高く評価されており、江戸時代に海外にたくさん渡っています。伝統技法を持つ職人の減少と育成の停滞により、江戸時代から続く根本的な技術や伝統研究が失われつつあり、技術継承が危機的状況にあることを多くの方に知っていただきたいとインタビューを通して感じました。

金継ぎに触れてみたい方に、御茶ノ水にある「平安堂 京都」のTOKYO STUDIOにて、清川氏の元で学んだ講師によるスタートアップレッスンが開催されています。

スタートアップレッスン 金継ぎの美と心】 
基本の工程を学ぶためのコース:費用:55,000円 全6回 (金粉、白金粉などの仕上げ粉以外の材料費は込み)

詳しい日程などは、下記の平安堂のH Pよりお問い合わせ下さい。
https://heiando-kyoto.com/contact/

Text / 酒・食・旅・文筆業 磯部らん

コミュニケーションやマナーに関するビジネス本を多数出版。とくに発展途上国 が好きで、アマゾン川でピラニア釣り、南インドにドーサを食べになど、好きなこ とをしに海外をひとり旅する。日本酒利き酒師。http://isoberan.com

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