悲劇のような喜劇、必見の気になる邦画が北欧エストニアの映画祭での受賞をひっさげ上映中!

ニートの兄と会社をクビになった弟が繰り広げるブラックコメディ&ロードムービー『北浦兄弟』が絶賛公開中。人間って、なんて愚かしくて可愛らしいの!!

 映画「北浦兄弟」チラシより (C)「北浦兄弟」製作委員会

昨秋、北欧のバルト三国のひとつであるエストニアの首都タリンで開かれた世界15大映画祭のひとつである「タリン・ブラックナイト映画祭」で、見事クリティック・ピックス・コンペ部門(批評家選出部門)で最優秀作品賞を受賞した辻野正樹監督の邦画『北浦兄弟』。

受賞が決定し喜ぶ中野マサアキさん(左)と辻野正樹監

今年4月渋谷・ユーロスペースで公開をスタートし、6月に入って監督の故郷である関西の映画館、京都では烏丸御池の「アップリンク京都」、大阪では九条の「シネ・ヌーヴォX」で上映中です。

 辻野監督は京都で生まれ、滋賀県大津市育ち京都市立芸術大学卒。京都での上映はまさに凱旋上映です。先日、辻野監督、主演の中野マサアキさんの舞台挨拶がある日に映画を鑑賞してきました。

ファンや旧友らと触れ合う中野さんと辻野監督

 上映前のロビーでは主演の中野マサアキさんがファンの皆さんと談笑されたり、辻野監督の学生時代の友人たちも集まり、さらに辻野監督の前作『河童の女』に出演した俳優 近藤芳正さんも舞台挨拶のために駆け付けられて、ロビーは温かいムードに包まれていました。

辻野監督、近藤芳正さん、中野マサアキさんが映画「北浦兄弟」の象徴的なポーズで一枚

 今、日本では80代の高齢親が50代の未婚の子供を年金などで養うという社会問題「8050問題」がありますが、この映画はまさにどの家庭でも起こりそうな日常の延長線上にあるリアルなシチュエーションがベースになっています。

 仕事もせず、長年引きこもり実家で父と二人暮らしの兄は、ある日、ふとしたはずみで父親を殺害してしまい、遺体遺棄について相談した弟は兄を手伝う羽目に。そして兄弟は父の遺体と共に海へと向かいます。

場面写真 (C)『北浦兄弟』製作委員会

普通なら「それはダメでしょ!」と思うことが、役者さんたちの演技力やシナリオの妙でなぜかストンと腑に落ちて納得してしまう。そして、兄弟の逃避行はどんどん思わぬ方向へと展開していく――。

本人たちは至って真面目、必死。それがまた、なんとも面白おかしく、でも哀しく切なくて、滑稽で情けなくて、でも愛おしくて可愛らしくて・・・・・・。

本来なら父殺しの息子など許されるはずもないのですが、いつしか力を合わせる兄弟にもなぜか共感し、応援してしまう。いやいや、やっぱり彼らはとんでもない凶悪殺人犯だし、と思い直しては、でも映画のキャッチコピーにあるように「莫迦莫迦しい、愛おしい、人間は、こんなにも」と思えてならない、そんな心に残る作品でした。

舞台挨拶の様子(アップリンク京都にて)

 上映後の舞台挨拶では、この作品を作った経緯の他、撮影は9日間を予定しながらも一日巻いてわずか8日間で撮りきったこと、途中から死体となった父親役のたかお鷹さんもノリノリで演じてくださったこと、後半海辺のシーンでは強風が奇跡的に吹いたこと、主演でありプロデューサーも兼務している中野マサアキさんがなんと死体!などの小道具まで手掛けたり(器用!!)撮影中の食事の用意までされていたなど裏話満載で、出演者が皆、この作品を愛し進んで協力したエピソードを聞くにつれ、辻野監督のご人徳を感じました。

 映画『北浦兄弟』、京都では6月12日(木)まで毎日12時05分~、大阪では6月13日(金)までは16時30分~、6月14日(土)~20日(金)までは18時25分からの上映予定です。

 また、この後、神奈川県横浜市中区の「ジャック&ベティ」で6月28日(土)から、また栃木県「宇都宮ヒカリ座」などでも上映を予定しています。 詳しくは映画の公式HPに掲載されます。

パンフレットと脚本もご一緒にぜひ!

私はパンフレットと一緒に脚本を買い求め、読むと色んな点が気になってしまってもう一回見たくなり、なんと翌日また劇場に行ってしまいました!!

気になる点がまた次の考察を呼び、新たな視点で見ることが出来てとても面白かったです!

 これは主役の中野マサアキさんからうかがったのですが、辻野監督が東京の上映会場で運命的な出会いをした落語家の立川こしら師匠(立川志らく師匠門下総領弟子)がこの映画で創作落語をつくられたり、またYouTubeでユニークな考察もされています。(ネタバレ含むのでご注意を)

一度『北浦兄弟』をご覧になった方はぜひそちらでもお楽しみいただくと、一層理解が深まり、また何度でも映画『北浦兄弟』を見たくなるはずです!

辻野監督の前作『河童の女』はAmazonプライムなどで視聴可能

辻野正樹監督の前作『河童の女』は今、AmazonプライムやU-NEXT、FODでの視聴も可能だそうです。こちらもぜひご覧下さい。

社会からはみ出した人、どうしようもない人を悲劇のような喜劇でシュールに愛を持って描く辻野監督作品。

これからも皆さんもぜひご注目ください!

                       

映画『北浦兄弟』
公式サイト:https://g-film.net/kitaura/

予告編:https://youtu.be/TH06K-PfaSM?si=6lMB-fQBYmMjDrbu

監督:辻野正樹 主演:中野マサアキ、大塚ヒロタ

上映館(予定含む):
アップリンク京都(6月12日(木)まで) https://kyoto.uplink.co.jp/
シネ・ヌーヴォX (大阪市 6月20日(金)まで http://www.cinenouveau.com/
ジャック&ベティ(神奈川 横浜市 6月28日(土)~7月4日(金))https://www.jackandbetty.net/
宇都宮ヒカリ座(栃木)上映予定 https://www.ginsee.jp/hikariza/

映画『河童の女』
公式サイト:http://kappa-lady.net/

Text /倉松知さと 

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関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。

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