創業210年超、京都の老舗和菓子店に新しい風が吹いています。
京都・歴史ライターの倉松知さとがお伝えします。
歴史ある和菓子店「亀屋良長」さんは、京都の中心地四条烏丸からほど近くにあります。京都の名水の一つ・醒ヶ井(さめがい)の水を使い、1803年の創業からの代表銘菓「烏羽玉(うばだま)」をはじめとする銘菓を作り続けてきました。
しかし、ここ数年、この老舗に新しい動きが出て来ています。それは、8代目夫人・吉村由依子さんが起こした大革命。
たとえば、銘菓「烏羽玉」。波照間島産の黒糖に寒天とケシの実をかけたものでしたが、そこに新商品が登場しました!
伝統の烏羽玉のデザインはそのままに、低GI値(GI=グリセリック・インデックスの略。この値が低いほど血糖値の急上昇が抑えられるとされる)のココナッツの花の蜜とココナッツミルクを使用した新しい商品をプロデュースしたのです!
「美甘玉(みかもだま)」は表面の寒天がぷるるんとコーティングされていて、コクや甘みがありキャラメルのような風味が広がる新感覚のお菓子で、これならお茶だけでなく紅茶やコーヒーにも合いそうです。糖尿病の方や精製したお砂糖が苦手な方にも嬉しいですね。
こうした「身体への負担の少ない素材で京菓子を作りたい」という想いは、以前、ご主人が体調を崩されたことをきっかけに始まったといいます。
ご主人の病気を通して、また子育てを通して多くの方が安心して食べられるものを欲していることに改めて気付かされた由依子さん。元々大学では食物栄養学科を専攻され、フランスのコルドンブルーでフランス料理も学んだ方。
そんな由依子さんの想いは老舗・亀屋良長の中に新たなブランド「吉村和菓子店」を立ち上げるという大きな変化を起こしたのでした。
こちらも「吉村和菓子店」の人気商品で、見た目にも愛らしい「焼き鳳瑞(ほうずい) 種まき」 というお菓子です。元々あった干菓子のひとつ「鳳瑞(ほうずい)」を工夫して出来たもの。卵白を泡立て寒天で固め、さらに乾燥させたもので、低GI値のココナッツシュガーが使われています。
自然の恵みを受けた玄米や韃靼そば、かぼちゃの種、黒ごまなどが彩りを添え、まるで種まきをしたばかりの畑のようです。
口どけはとても軽く、まるでマカロンのよう。見た目にも可愛らしくて、どれにしようか迷ってしまう楽しいお菓子です。
子を持つママさんでもある由依子さんは、ご家庭でも和菓子に親しんでもらえればと、全て“計量済み”の「手作りあんこセット」も考案。これなら、ママはただお鍋に入れて混ぜるだけ!
子供に季節感あふれる食の楽しみを伝えたい。できれば手作りしてあげたい。だけど、日々忙しくてなかなか手作りお菓子は難しい…。
でもこれなら子供のために手作りしているママの姿は見せられる!
ママの気持ちもよくよく分かってくれている、そんな由依子さんが手がける愛情あふれる和菓子の世界に今後も注目したいですね!!
暦(12ヶ月で異なるデザイン)は、京都の人気テキスタイルブランドSOU・SOUとのコラボ商品で女性に人気!
吉村和菓子店 http://yoshimura-wagashiten.com/
Text /倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを経て、京都・歴史ライターへ転向。京都歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。個人ブログ『京都に来るなら…』https://ameblo.jp/ciaokyoto/