2018年は、日本とフランスが修好通商条約を結んで160年。それを記念して、両国で様々なイベントが開催されています。その一つが、国立新美術館で5月30日から開催されている【ルーヴル美術館展 肖像芸術—人は人をどう表現してきたか】です。今までにもルーヴル美術館の収蔵品の展覧会は日本で何度も開催されてきていますが、今回は肖像画・肖像彫像に焦点を絞った展覧会です。
肖像画といえば、フランス・ルイ14世や皇帝ナポレオンの肖像画のように、時の権力者がその力と栄光を世の中に示す為に描かれたものを目にすることが多いでしょうか?今回展示中のイアサント・リゴーの工房《聖別式の正装のルイ14世》はその典型。豪華な衣服や剣を身にまとい、300年以上の時を経た現代の私たちに「太陽王」と呼ばれた往時の栄華を見せてくれます。
今回の肖像の展示は、絵画だけではありません。気品あふれる表情をみせる《フランス王妃 マリー=アントワネットの胸像》。また《ティベリウス帝とユリウス・クラウディウス朝の皇子(カリグラ)のカメオ》のように、持ち運ばれて領土内の人々にその威光を示す意味もあったカメオや硬貨。故人を忘れない為にその姿をかたどった墓碑。4000年前のメソポタミア文明から近代19世紀、西ヨーロッパからインド・ムガール帝国まで、「肖像」という切り口で、広大な時代と場所をカバーしているのがこの展覧会。「あっ、これも“肖像”の範囲なのね!」と驚きがあること、確実です。
数ある作品の中で私が一番気に入ったものは、バロック期のオランダの巨匠レンブラント作《ヴィーナスとキューピット》。半裸の輝くような美しさの女神ヴィーナスと羽の生えたキューピットのモチーフは、古代から現代まで多くの芸術家たちが取り組んできた主題の一つ。ところが、このレンブラントの作品、女性と羽が生えた幼児の組み合わせからこの絵画のテーマが「ヴィーナスとキューピット」なのだとわかるのですが、少し雰囲気が違います。女性の服装はこの絵が描かれた17世紀のものでしょうか。絶世の美女とは言い難い。キューピットの頬に触れる掌は大きく、浅黒く日焼けしているようで、労働者のそれのようです。愛と美の女神ヴィーナスのイメージとは少々乖離があります。実はこの絵のモデルは、レンブラントの内縁の妻で農民出身のヘンドリッキエと娘のコルネリアだと言われているそう。自分の愛する家族を、古代ローマ神話の登場人物になぞって描写するなんて、ロマンチックだと思いませんか?
音声ガイドはぜひ借りてくださいね!ナビゲーターは、今、大人気の俳優、高橋一生さん。ナビゲーター役を務めるにあたり、高橋さんはパリ・ルーヴル美術館を初めて訪問されたそう。その時の印象や、お気に入りの作品についても語っていらっしゃいます。イケメンヴォイスを耳元で聞きながら、ルーヴルの至宝をご堪能ください。
【ルーヴル美術館展 肖像芸術—人は人をどう表現してきたか】
会期 2018年5月30日(水)~2018年9月3日(月) 毎週火曜日休館
※ただし8/14(火)は開館
会場 国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
http://www.ntv.co.jp/louvre2018/
Text/トラベルアクティビスト真里