「琵琶湖の水を京都に引く」。そんな壮大な夢を明治の人はやってのけました。それが約130年前に完成した「琵琶湖疏水(そすい)」です。一度は使われなくなった水路を約70年ぶりに復活させ、この秋の運行が始まっています!貴重な船旅をリポートします!
【琵琶湖疏水とは?】
琵琶湖疏水とは、滋賀県大津市の琵琶湖の水を京都市伏見区まで引く約20キロの水路です。そのうち最初に出来た約8キロの「第一疏水」(大津市~京都市蹴上間)は5年の歳月をかけ明治23(1890)年に完成しました。
この第一疏水は、幕末、事実上の東京遷都によって急激に衰退した京都を復活させる切り札としての一大プロジェクトでした。
当初は疏水の豊かな水での舟による運搬と水車による動力で工場を動かすなどを期待してのプロジェクトでしたが、途中、アメリカ・コロラド州の水力発電所を視察した若き技師・田邊朔郎(たなべさくろう)は、百年先を見据え、計画の変更を提言。当時の北垣知事もそれに応え、完成した琵琶湖第一疏水は京都に日本初の電気鉄道を走らせるなど京都市民の生活を向上させるのに役立ちました。疏水の水は今でも京都市民の喉を潤しています。
【70年ぶりの復活!】
かつては舟運によって米や炭、木材、石材、北陸の海産物などの運搬、観光などにも使われた疏水も次第に陸運に圧され、昭和26(1951)年以降、運搬目的では使われなくなってしまいました。
しかし大津、山科、南禅寺のある蹴上(けあげ)辺りへと続く疏水べりは春は桜、秋は紅葉と風光明媚なスポットとして地元でも人気でした。
新たな観光資源をと京都、大津両市が立ち上がり、約70年ぶりに疏水に舟が行き交うことになったのが今年平成30(2018)年から始まった「琵琶湖疏水船」です。
約8キロの道のりを大津から京都へ(下り便)は約1時間かけ、逆に京都から大津へ(上り便)は約30分で楽しむことができます。
この秋の運行が10月から始まったので早速乗ってきました!
私は滋賀県側からの乗船で、まずは京阪電鉄三井寺駅近くの乗船場に集合。その前に琵琶湖の景色を眺めたり、琵琶湖側の疏水の施設を眺めることも出来ました。
この豊かな水が京都へと流れて行くのか…と実感!!
約20分前に乗船場にて乗船名簿チェックが行われ、琵琶湖疏水の説明VTRを見たり、運行中の注意などを受け、いざ出発!
約130年前に明治の日本人だけの手によって成された疏水事業を体感します!
舟旅の続きは、その②でお伝えします。
◎琵琶湖疏水船 公式HP https://biwakososui.jp/biwakososui/
Text /倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを経て、京都・歴史ライターへ転向。京都歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。個人ブログ『京都に来るなら…』https://ameblo.jp/ciaokyoto