日仏修好160周年記念:ヴェルサイユで開催の展覧会はあの日本を代表するアーティスト

2018年は日本とフランス修好160周年記念の年。フランスでも日本の芸術を紹介する数多くのイベントが行われています。その中から、日本を代表する写真家・芸術家である杉本博司氏の展覧会【SUGIMOTO VERSAILLES-Surface de Révolution】をご紹介します。会場は、パリ郊外ヴェルサイユ宮殿内のプチ・トリアノン。

プチ・トリアノンといえば 、ルイ16世がマリー・アントワネットに与えた館。マリー・アントワネットは、その周囲に畑を作り家畜を飼い、「田舎暮らしごっこ 」をして遊んだとか。そんなプチ・トリアノンでの杉本氏の写真展、被写体はなんと、「マダムタッソーの蝋人形館」にある蝋人形。しかも実際にヴェルサイユ宮殿を訪れたことがある記録がある歴史上の人物です。

ルイ14世、ナポレオン1世、ヴィクトリア女王、キューバのカストロ議長…昭和天皇も!この展覧会の題名にある「Surface」は「表面」という意味。たしかに蝋人形は本物そっくりではありますが、それはあくまでも表面的なもの。生身の人間ではありません。そして「Revolution 」は「革命・大変革」。フランス革命の舞台の一つとなったヴェルサイユ宮殿。断頭台の露と消えたマリー・アントワネットが愛したプチ・トリアノンでの展覧会にふさわしい表題です。

蝋人形を撮影したモノクローム写真は、生きている人間であるかのよう。何十年か、何百年かの時間を飛び越えて、歴史上の人物と対峙している錯覚に陥ります。この方々は実際に馬車や自動車等で ヴェルサイユを訪れ、しばしの時を過ごしたのでしょう。きっとこの写真のような眼差しでこの壮麗な宮殿を見詰めて、贅を尽くしたマリー・アントワネットの暮らしぶり、その後に起ったブルボン王朝の悲劇的な末路を思い返していたのかもしれません。そんな妄想がふっと湧いてしまう写真展でした。

 

プチ・トリアノン近くの人口池には、杉本氏のデザインによる全面ガラスでできたお茶室「聞鳥庵(もんどりあん)」が移築されています。イタリア・ヴェネチアで毎年開催されている現代美術の展覧会ヴェネチア・ビエンナーレで2014年に公開されたものです。「モンドリアン」といえば、19世紀末〜20世紀初めのオランダの画家、ピエト・モンドリアン。白地を様々な大きさの四角に分け、赤・青・黄の三色を配色した絵画で有名です。「モンドリアン・ルック」などファッションの世界も影響を与えています。四角で構成されているモンドリアンの絵画は、直線が多用されたお茶室の数奇屋建築を連想させるということで、このガラス製のお茶室を「聞鳥庵」と名付けたそう。

 

お茶室の私が訪れた日は、ちょうど杉本氏ご自身が来場し、聞鳥庵でお茶会をされるというパフォーマンスが行われていました。そもそもお茶室は主人とお客の二人だけが茶室に入り、対峙して、お茶を点てるという、閉ざされた空間なはず。一方この「聞鳥庵」はガラス製なので、周りにいる人からその様子が丸見え。非常にプライベートであるはずのお茶室の空間が、外に向かって何かを発信しているかのよう。写真の分野のみならず、あらゆる芸術の分野でその才能を発揮されている杉本氏の代表作の一つです。

 

この秋から来春まで日本関連のイベントが目白押しのパリ。他にも、「安藤忠男 挑戦」(ポンピドーセンター)、「京都の宝〜琳派300年の創造」展(パリ市立チェルヌスキ美術館)、「ジャポニスムの150年」展(装飾美術館)等々。パリのへいらっしゃる予定の方、これらの記念イベントに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

【SUGIMOTO VERSAILLES-Surface de Révolution】は、2019年2月17日まで
http://www.chateauversailles.fr/actualites/expositions/sugimoto-versailles

Text/トラベルアクティビスト 真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクディビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

 

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