残すところあと3回(9/16、10/6、10/20)催行。「徳島じょうるりクルーズ」とは?徳島発の長野尚子さんのレポートです。
「徳島県の観光名物は?」と聞かれるとまずは阿波踊りですが、その次に必ずあげられるのは国指定重要無形文化財の「阿波人形浄瑠璃」と、“ジャパン・ブルー”で注目される「藍染め」。そしてこれらの観光資源をつなぐのが、市内を流れる一級河川「吉野川」。今回は、徳島のコアな魅力が凝縮された「徳島じょうるりクルーズ」をご紹介します。
吉野川クルーズ~阿波十郎兵衛屋敷~徳島の食材お弁当~藍染め体験が半日で体験できる「徳島じょうるりクルーズ」は、4月から10月まで月2回の開催。県外からの観光客はもちろん、地元でも徳島を見直す機会として人気を集めています。
午前10時。徳島の中心部、新町川リバーウォークの船着き場を出航。市内を抜けて吉野川にボートが進むと、南に眉山~剣山峡、北には四国山脈がそびえ、東は海(紀伊水道)に抜ける360°パノラマの息をのむような絶景が広がります。
十郎兵衛屋敷は、阿波人形浄瑠璃を育んだ徳島の風土や歴史を伝え知ってもらうことを目的に毎日2回の人形浄瑠璃の定期公演を行っています。現在徳島には11の人形座(人形を操る団体)と5つの太夫部屋(物語を語る義太夫と三味線の団体)があり、十郎兵衛屋敷ではこれらの団体が交替で出演しています。(※平日の音響は録音) またこのほかにも、義太夫教室、生花やお茶、藍染、和紙、水石などの講座や展覧会などのイベントも開催されています。
もともと徳島の人形浄瑠璃は、収穫期を迎えた農家の人々が作業の合間に一息つく娯楽として「農村舞台」で発展してきた歴史があります。そのため、遠くからでもよく見えるようにと大阪の文楽人形に比べて一回りも二回りも大きく作られているのが特徴。
展示室では木偶(でこ)人形の説明展示やキャラクター説明、実際に人形の操作などができるコーナーもあります。
公演鑑賞後は、屋敷奥の母屋のお座敷で美しい中庭を見ながら地元の味覚たっぷりのお弁当に舌鼓。県内から参加したご夫婦(60代)は、「幼い頃、祖母が枕もとで『ととさんの名は十郎兵衛、かかさんはお弓と申します』(という『傾城阿波の鳴門』の有名なくだり)を聞かせてくれて、悲しくて毎晩泣きながら寝ていたの。それが最近ようやくこの浄瑠璃と結びついたんですよ」と、笑って話してくれました。そういえばうちの祖母もよくこの節を語ってくれていたなぁ、と懐かしく思い出しながら 。
ランチのあとはローカルバスで次の目的地である藍染め体験館「ルアフ」に移動し、オリジナルの藍染めハンカチ作りにチャレンジ。2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」のエンブレムに採用された「ジャパン・ブルー」は古来製法による阿波藍の色であることから、昨今阿波藍はちょっとしたブームで、農家でも生産が追い付かないのだとか。
もともと徳島で藍づくりが盛んになった理由は、“暴れ川”と称される吉野川が氾濫を繰り返しては上流から肥沃な土を運んできたことにありました。温暖な気候とともに阿波藍づくりにはこの上ない条件となったのです。藍の生産で阿波藩は隆盛を極め、その豊かさを背景に人形浄瑠璃や阿波踊りなどの芸事が栄えた― そんな徳島の歴史を感じることができた4時間の小旅行でした。
吉野川と、藍と、人形浄瑠璃の歴史を体感する旅。今年は残すところあと3回。是非おすすめです。
●徳島じょうるりクルーズ
詳細: http://awajurobeyashiki.blogspot.com/2019/03/410.html
●徳島県立阿波十郎兵衛屋敷 http://joruri.info/jurobe/
住所:771-0114 徳島県徳島市川内町宮島本浦184
TEL 088-665-2202 FAX 088-665-3683
開館時間: 9:30〜17:00(ただし、7月1日~8月1日は18:00まで)
休館日: 12月31~1月3日
入場料: 一般 410円/高・大学生 300円/小・中学生 200円
●藍染め工房「ルアフ」http://www.indigo-dyeing.sakura.ne.jp/
徳島市吉野本町6-42(コレクティブハウスなじみ1F)
TEL 088-626-0536
営業時間: 予約営業 定休日: 予約営業
Text /長野 尚子
フリーライター、編集者。(株)リクルートの制作マネージャー&ディレクターを経て、早期退職。アメリカ(バークレー)へ単身“人生の武者修行”に出る。07年よりシカゴへ。シカゴのアート&音楽情報サイト「シカゴ侍(www.Chicagosamurai.com」編集長。四国徳島とシカゴの架け橋になるべく活動中。著書に『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。http://www.shokochicago.com/ 日本旅行作家協会会員。