【Stayhome】伝統芸能を楽しく学ぼう。「阿波人形浄瑠璃」を体験できる『おうちで人形浄瑠璃』動画サービス

新型コロナウィルス感染拡大を受けてさまざまな文化イベントが中止に追い込まれるなか、四国徳島が誇る国の重要無形文化財「阿波人形浄瑠璃」の本拠地、「阿波十郎兵衛(じゅうろべえ)屋敷」で楽しいプロジェクトがたちあがり人気を呼んでいます。その名も「おうちで人形浄瑠璃」。人形浄瑠璃にまつわるさまざまな動画が、公式ホームページ(http://joruri.info/jurobe/)の「#おうちで人形浄瑠璃」から配信されています。

これまで、「阿波人形浄瑠璃の歴史解説」や「アニメーションと浄瑠璃のコラボ」などのコンテンツをアップ、今後は定期公演の録画や、子供向けに人形のラジオ体操なども製作していくそう。

「今私たちができることを考え発信していくつもりです。外出を控え、自宅で過ごすみなさまに少しでも豊かな時間をすごしていただければ」と語るのは、人形浄瑠璃をこよなく愛する佐藤憲治館長。

【動画:吉野川、阿波藍から紡ぐ阿波人形浄瑠璃】https://youtu.be/oCcrh9ZYnFk

そもそも人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)」って何?

人形(人形遣い)と、物語の語り部(義太夫)、演奏者(三味線)が紡ぎだす“古典・人形ミュージカル”が人形浄瑠璃。江戸時代初期に「浄瑠璃」(三味線の伴奏による義太夫語り)と「人形芝居」が結びついて生まれ、全国各地で興業されるようになりました。演目は、近松作品に代表される「世話物」、「時代物」、「舞踊曲」などで、歌舞伎にも同じものが多数あります。大阪では「文楽」として人気を博しましたが、淡路(旧阿波藩・徳島の領地)、さらに徳島へと拡がって独自の発展を遂げて生まれたのが「阿波人形浄瑠璃」とよばれるものです。

「温暖な気候の徳島は、水にも肥沃な土にも恵まれていました。そのおかげで藍染めの染料「阿波藍」栽培で大きな富を得、その経済力を背景に人形浄瑠璃や阿波踊りなどの芸事が栄えた“芸所”なのです。今も全国で最も多く人形座(人形遣いのグループ)が活躍し、人形浄瑠璃を通じて人々の豊かな暮らしを支えています」(佐藤館長)

「阿波十郎兵衛屋敷」で毎日2回行われている定期公演の様子 ©徳島県立阿波十郎兵衛屋敷
2020年2月にリニューアルされた屋敷の資料展示室には、徳島の人形師、「天狗久(てんぐひさ)」ら名工の手による木偶頭(でこがしら)がずらり。一瞬にして鬼の形相に代わる「ガブ」など面白い仕掛けも。©徳島県立阿波十郎兵衛屋敷

“熱き素人たち”が支える、阿波人形浄瑠璃

大阪の「文楽」がプロによる洗練された芸能であるのに対して、徳島の人形浄瑠璃は“アマチュア団員による素朴な土着芸能”。そもそも県南部の農村地帯に伝わった人形浄瑠璃は、神社の境内に設けられた農村舞台で神様に奉納するために地元の人々によって演じられ、五穀豊穣・大漁祈願といった神事として受け継がれてきた歴史的背景があります。現在徳島には現在17の人形座と5つの太夫部屋(三味線と義太夫)が在りますが、数人の三味線奏者と義太夫以外は全てアマチュア。年齢も職業も違う座員たちが仕事の合間に共に練習を重ね、国内外で公演を行いながら伝統を守っています。

祭で村を練り歩く人形座のメンバー。阿波人形浄瑠璃は常に人々の生活に寄り添ってきた。©徳島県立阿波十郎兵衛屋敷
徳島県内には国内で最も多い130以上の現存する農村舞台がある。娯楽の少ない農村では、人形浄瑠璃の公演が秋の収穫期の楽しみだった。 ©徳島県立阿波十郎兵衛屋敷

海外からも高い関心を寄せられる人形浄瑠璃

実はこれまでにもパリなど多くの海外公演を果たし、大きな成果をおさめてきた人形浄瑠璃。特に “パペット(操り人形)文化”が歴史的に民衆に根付いている欧州では、日本古来の美しい衣装をまとって感情豊かに動く三人遣いの人形は大変珍しく、高い芸術的評価を受けています。

ここ5年間で、アメリカやヨーロッパから徳島の阿波十郎兵衛屋敷を訪れた外国人観光客も急増。昨年には、アメリカ人の舞台女優が演技の勉強のため人形座に“短期留学”したり、人形浄瑠璃に魅せられたアメリカ人大学教授、マーティン・ホフマンさんが徳島に定年移住して独自の人形座を立ち上げるなど、人形浄瑠璃にはますます海外からの熱い目線が注がれています。


アメリカ、サンタフェにある「.MUSEUM OF INTERNATIONAL FOLK ART(世界民俗アート博物館)」で開催された【Yokai: Ghosts & Demons of Japan(妖怪:日本の幽霊&お化け展)】(-January 10, 2021)の展覧会図録に、徳島から納品した阿波人形浄瑠璃の木偶(でこ)人形、清姫が掲載された。

「今は、新型コロナウィルスの感染防止に向けて世界中の人々が外出自粛などのルールを守り、協力することが最も大切です。ウイルスの終息後は、これまで以上にお互いが信頼関係で結ばれ協力しあう世界になってほしいと思います」と、佐藤館長。

人形浄瑠璃を知っている人はもちろん、知らなかった人にも、世界に誇れるこの伝統文化を見直すきっかけになってほしい。人形浄瑠璃を通じて多くの人たちとつながっていたい。何より人形浄瑠璃を支えている演者、スタッフの熱き想いを届けたい ―「おうちで人形浄瑠璃」にはこんな気持ちが込められています。

この機会に是非「おうちで人形浄瑠璃」のチャンネル登録をして、浄瑠璃通になってみては?そして、終息したそのときこそ、ぜひ徳島で生の舞台を見て「待ってました!」とお声をかけてみてください。

●「おうちで人形浄瑠璃」

様々な視点から人形浄瑠璃を楽しめるコンテンツを配信中。

http://awajurobeyashiki.blogspot.com/2020/04/blog-post_10.html

●徳島じょうるりクルーズ

過去の記事:「徳島の魅力を一挙に体験できる!阿波人形浄瑠璃と藍染を巡る「徳島じょうるりクルーズ」 https://wlifejapan.com/2019/09/10/tokushima-jyoururi-cruise/

吉野川~阿波人形浄瑠璃~藍染め体験がセットになった期間限定(4月~10月)の「徳島じょうるりクルーズ」。(※4/23現在休止中。5月以降の再開についてはお問い合わせください)

http://awajurobeyashiki.blogspot.com/2020/01/410.html

2020年5月以降の実施日

5月/10日(日)、31日(日)

6月/14日(日)、28日(日)

7月/12日(日)

8月/ 9日(日)、23日(日)

9月/ 6日(日)、20日(日)

10月/ 4日(日)、11日(日)、18日(日)

詳細お問い合わせ:徳島県立阿波十郎兵衛屋敷

●徳島県立阿波十郎兵衛屋敷 http://joruri.info/jurobe/

住所:771-0114 徳島県徳島市川内町宮島本浦184

TEL 088-665-2202  FAX 088-665-3683

開館時間: 9:30〜17:00(ただし、7月1日~8月1日は18:00まで)

休館日: 12月31~1月3日

入場料: 一般 410円/高・大学生 310円/小・中学生 200円

Facebook:https://www.facebook.com/awajyurobe/

Instagram:https://www.instagram.com/awajurobeyashiki/

Text /長野尚子

フリーライター、編集者。(株)リクルートの制作マネージャー&ディレクターを経て、早期退職。アメリカ(バークレー)へ単身“人生の武者修行”に出る。07年よりシカゴへ。シカゴのアート&音楽情報サイト「シカゴ侍](http://www.Chicagosamurai.com)編集長。四国徳島とシカゴの架け橋になるべく活動中。著書に『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。http://www.shokochicago.com/  日本旅行作家協会会員。

 

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