多国籍国家のシンガポール。美と健康のアプローチを探求する栗尾モカさんが今魅かれるのは「インド」です。身近なカレーも実はこんなに奥深い健康食だというのを教えてくれました。
「カレーはハイカロリーで太る」そんなイメージがあるかもしれません。カレーにボリュームが加わるのは、市販のカレールーを使いお米を沢山食べる場合です。一方、インドカレーのお店で味わえるカレーはヘルシーなメニューが多く、さらに自宅でスパイスカレーを作る場合には減塩しながら低カロリーに調整することができます。
注目すべきは、抗酸化作用や抗ウィルス効果のある複数のスパイス。中でも、カレーのスパイスとして欠かせないターメリックには強力な抗酸化作用があり、唐辛子に含まれるカプサイシンは脳から快楽ホルモンを出す効果があることがわかっています。カレーを食べたあとに満たされた気分になるのは、この唐辛子のお陰です。
ちょこっとずつ、色んな味を楽しめる!南インドの「ミールス 」はまさに健康食
ミールスとは、主に南インドで供される定食で、野菜や豆などを使ったあっさりとした複数のカレーに副菜を伴ったもの。丸いステンレスの容器に色々なカレーやお惣菜が盛られ、パラパラとしたお米が添えられます。
このミールスはオイル分が少なく、主な材料である野菜やスパイス、ダールと呼ばれる豆類、ナッツ類には抗酸化成分がたっぷり含まれています。さらりとしたカレーは、まるでスパイスサラダを食べているような感覚。さらにお米を雑穀米にすれば、豊富な食物繊維が血糖値の急上昇を抑えたり、体内のコレステロールを減らすことにも役立ちます。カレー=太りそう、というイメージとは反対の、とても健康的な料理なのです。
一方、日本人に最も好まれるポピュラーなインドカレーといわれるのが、バターチキンやナン。こちらは、ギー(バターからタンパク質を抜いたもの。かなりハイカロリーです)をたっぷり使っている場合が多くダイエット中には不向きですが、こってりとして美味しいですよね。
カレーは薬膳料理。スパイス成分の恩恵を受けよう!
スパイスの香りにはヒーリング効果があります。シナモンやカルダモンなどを入れたチャイは香り高く、ほっと一息入れたいときにはぴったりです。また、スパイスそのものには香りづけだけではなく、ビタミンやポリフェノールに抗酸化作用があり、ストレスにより体内に発生した活性酸素の毒性を抑えることができます。
また、スパイスカレーに欠かせないとうがらしに含まれるカプサイシンにはエネルギーを燃焼させ脳内に快楽ホルモンを出す効果があるので、「心身ともにスッキリしたいな」と思う時にカレーを食べてみるのもアリかと思います。
では、スパイスカレーに用いられるスパイスの効能を見てみましょう。
ターメリック…強力な抗酸化作用。抗炎症作用、殺菌作用、抗菌作用、鎮痛作用が期待できる。有効成分であるクルクミンは、がん、糖尿病などの治療に役立つ可能性があるといわれている。
生姜…古くから中国ではインフルエンザなどの症状の緩和に、ヨーロッパではペストの予防薬に用いられてきた。整腸作用、抗酸化作用、抗炎症作用がある。関節炎やリウマチの治療効果も期待されている。
ブラックペッパー…抗酸化作用、殺菌作用、抗炎症作用がある。また、消化を助け、実の外殼に含まれる成分に脂肪細胞を減らす作用も。主成分のピペリンにはがん予防やアルツハイマー病の治療効果が期待されている。
レッドチリ(唐辛子)…消化液の分泌を促し、栄養素の吸収を助ける。血行を促して代謝を高めることから減量のサポートにも。また、血圧を正常値に保ち、コレステロール値や中性脂肪を抑える働きもある。
クミン…ハーブ療法では消化不良、皮膚発疹、免疫機能の改善などに使う。解毒作用などがある酵素の分泌を促したり、糖尿病の治療効果も期待される。
シナモン…アジアや地中海地方で古くからかぜなどの治療に使われ、血行や消化を助けると言われている。血糖値を下げることも示された。アルツハイマー病の発症を防ぐ効果も。
ガーリック…抗菌・抗ウィルス作用がある。血圧を正常にしたり、中性脂肪値やコレステロールを下げる作用も。
(参考 「ハーブ&スパイス大辞典」ナンシー・J・ハジェスキー著 日本メディカルハーブ協会監修)
このように、色々なスパイスを合わせて作るスパイスカレーは、まさに「薬膳料理」。スパイスの組み合わせによる相乗効果も期待できます。美味しくて快楽ホルモンが出る上に代謝を促し、抗酸化作用もありつつ免疫力アップの効果も。一石二鳥どころか、何拍子も揃った料理です。
インドのお惣菜がギッシリの宝箱、ミールス 。その食べ方とは
ステンレスカップにちょっとずつ盛られた「ミールス 」。色々とちょっとずつ楽しめる、なんとも魅力的な外観です。食べる順番や混ぜ方がきっとあるに違いないのですが、その方法はお店の人に直接聞いてみようと思いました。場所はシンガポールのリトル・インディアです。
まずは1店舗目。NYほか、世界中にいくつか出店している歴史ある南インド料理店「ANJAPPAR」です。
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そのままスプーンですくって食べ始めようとしたところ、「ちょっと違う」お店の女性が見るに見かねた様子で、私のテーブルの横についてくれました。そして「まずはカレーを外に出して。バナナの葉の上にスペースを作りましょう」と教えてくれました。
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なかなかの量ですが、カレーの味付けがやさしいせいか胃にもたれずスッキリ。気に入ったのは、最後にお茶漬け風にお米にスープをかける食べ方。日本人の友人と一緒にミールス を食べた時にはこの方法を知らなかったので「インド料理なのに、トムヤムクンに似た、酸っぱくてさらさらのスープがついているんだね」と、Resamを単独で飲んでいました。
他のお店のミールス も食べてみよう!と思い、訪ねたのが2軒目の「K.P.S. Restaurant」です。
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ここでもミールス 一択でオーダーを。お肉も食べたかったので、チキンカリーをプラスしました。ちょっと量が多いでしょうか…
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日本でカレーを作る時には、仕上げにヨーグルトを少し加えていましたが、ミールス を食べる時にもヨーグルトをちょっとずつ加えながら頂きます。これが美味しい。数種のカレーを分量を変えながらバナナの葉の上で混ぜると、色々な味の変化を楽しめて飽きることなく頂けます。ハマりそうです。
次は、3軒目の「MADRAS NEW WOODLAND」です。こちらはミールス のカレーの種類が多いと聞いたので、新しい発見があるかもしれないと思い足を運んでみました。
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他のお店と比べてカレーの種類が増え、ビリヤニやチャパティ、さらにパパド と呼ばれる豆から出来た薄焼きおせんべいもセットになっていました。
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と教えてくれたのでトライ。とろみとクリスピーな食感の相性が◎
「孤独のグルメ」状態で、女ひとりでミールス を求めて3店舗もまわってしまいました。「教えてやらなくては」と、食し方を教えてくれたお店の方々に感謝です。「まだ続くの?」と言われそうですが、次回はインド人の友人と本場の作法にトライします。
【免疫力を上げるスパイスカレーVol.2】に続く
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副編集長:栗尾モカ Moca Kurio / 美大でデザインを専攻した後、国際線CA、出版社勤務を経てライター・漫画家に転身。「STORY」などの女性誌を中心にライフスタイルや旅の取材執筆、朝日新聞などにイラスト/コミックエッセイの連載多数。シンガポール在住。現在アジアの食文化とアーユルヴェーダを研究中。日本ソムリエ協会ワインエキスパート。2021年は「Yoga Journal」でコミックエッセイをスタート予定