日本にいながらにして海外のステージに没入体験! ブロードウェイシネマ『パリのアメリカ人』

本場ブロードウェイの舞台を中心に、数々の傑作や話題作のステージ・プロダクションが映画館で観られる「松竹ブロードウェイシネマ」。アカデミー賞受賞映画『巴里のアメリカ人』のミュージカル舞台版、パリのアメリカ人』が現在上映中です。

舞台に芸術に旅に幅広く活躍する、コラムニストのマドモアゼル安原さんに執筆いただきました。

オリジナル映画『巴里のアメリカ人』(1951)は、タップダンスで有名なジーン・ケリーの主演作です。アカデミー賞8部門にノミネートされ、作品賞の他に最多で6部門を受賞している、映画史上に金字塔を打ち立てた名作映画です。

ミュージカル舞台版『パリのアメリカ人』は、2014年にパリで初演されました。歌も演技も秀逸で、世界的劇場の出身でトップ級のバレエダンサーらが出演して、名作を舞台化しました。舞台は大人気となり、翌年のニューヨーク・ブロードウェイ公演において、トニー賞12部門ノミネート中最多4部門の振付賞、編曲賞、装置デザイン賞、照明デザイン賞を獲得しました。日本では、劇団四季が2019年に舞台上演して好評を博しました。

松竹ブロードウェイシネマの本作品は、舞台初演の主演キャストも参加した、ブロードウェイ・プロダクションのロンドン・ウェストエンド公演(2018)を、ドミニオン劇場にて特別ライヴ収録した作品です。

女優エミー・ロッサムがクリスティーヌ役を演じて世界中の映画ファンや舞台ファンを魅了したミュージカル映画『オペラ座の怪人』(2004)の製作総指揮メンバーに名を連ねたオースティン・ショウがこの映画のプロデューサーを務めています。

第二次世界大戦直後のパリ。混乱の中で、人生を模索する人々の姿。

舞台は、1945年のパリ。第二次世界大戦終戦の直後で、戦争の痕跡が残りながらも新しい時代に踏み出そうとする若者たちが描かれます。

1940年代のパリ占領、ドイツ軍の降伏、そして解放といった激動の時代は舞台の題材にもなり、宝塚歌劇団ではファシズムの勢力が台頭したヨーロッパを舞台に第二次世界大戦レジスタンスシリーズと呼ばれる作品群が創作されています。『リラの壁の囚人たち』の作品では、ナチス占領下のパリの街の袋小路で、いつか来る春の訪れを待ち望み、明るい場所で自由に胸いっぱいの幸せを味わいたい、そんなささやかな夢を叶えられずに散った恋人たちの悲恋が描かれました。

そんな長い苦しみの時代から解放され、自由を得た戦後のパリの街は、徐々に輝くような活気を取り戻していきます。

ヒロインが働くパリの店。フランスの老舗メゾンであるゲランのロゴが見える。実際の名香にも似た香水瓶が並ぶショーケース。

華やかなパリの劇場。本物の劇場、シャトレ座を彷彿とさせる。

舞台に登場するのは、カフェのある広場、凱旋門、セーヌ川、レビューやバレエの劇場。そして、フランス・パリのシンボルであるエッフェル塔が一際輝いて作品ポスターにモチーフで使われています。

ディズニー・ミュージカル『アイーダ』『アラジン』などで知られるボブ・クローリーが、舞台セット・衣装デザインを担当。舞台の醍醐味であるスペクタクル感を随所に感じさせながら、実際のパリの街を思わせる臨場感あふれるセットです。

芸術の世界で活躍することを夢みる仲間たち。

主人公のジェリーは、アメリカ人の退役軍人で画家を目指しています。ピアノを弾きながら作曲家を志すアダムや、舞台に立つことを夢みる資産家の息子アンリと、友情で結ばれます。ジェリーは、バレリーナを目指すフランス人女性のリズと出会い、恋に落ちます。リズは、戦時中にユダヤ系である自分の素性を知りながら匿ってくれたアンリとの間で心が揺れ動きますが、新しく自由に生きることを選び、真実の愛に目覚めます。

ミュージカルの演出・振付を担当したのは、自身もバレエダンサーの経歴を持ち、英国ロイヤル・バレエ団『不思議の国のアリス』の斬新な振付で世界をあっと驚かせた鬼才、クリストファー・ウィールドン。

そして、作曲は「アメリカ音楽の父」とも呼ばれて『ラプソディー・イン・ブルー』で有名なジョージ・ガーシュウィンと、作詞は兄のアイラ・ガーシュウィン。「アイ・ガット・リズム」「スワンダフル」といった有名な劇中曲の数々は、誰しも一度は耳にしたことがあるかもしれません。

『パリのアメリカ人』は、ミュージカルにおいて、ダンスの難易度が最高峰と言われています。バレエとジャズ、ミュージカルの要素を融合させたダンス場面が次々とエネルギッシュに展開し、新時代の情熱、希望、恋人たちのロマンスを余すことなく表現して観客に伝えてくれます。

ヒロインのリズと恋人ジェリー。お互いの肌と心を感じながら、官能的でロマンティックなダンスを踊る。

主演コンビは、トップ級のバレエダンサーたち。ジェリー役のロバート・フェアチャイルドはニューヨーク・シティ・バレエ団のプリンシパルを務め、その後この作品のパリ初演に参加して続いてブロードウェイ・デビューし、ミュージカル界で活躍中です。先日、1年半ぶりのブロードウェイ再開をお祝いするムードのなか開催された、第74回トニー賞授賞式にパフォーマンスで出演しました。リズ役のリャーン・コープは英国ロイヤル・バレエ団出身で、同じく本作品の初演に出演、二人とも踊りで雄弁に役の心情やストーリーを語ってくれます。

日本映画史上初、松竹が本場ブロードウェイ・プロダクションの舞台を映画館で上映中! 客席の拍手喝采も入り、現地の高揚感そのままに自然といつしかスクリーンの舞台に没入。

芸術の秋に、海外の舞台を日本にいながらにして観劇体験してみてはいかがでしょう。

舞台写真・ポスタービジュアル 

ⒸAngela Sterling 

ブロードウェイシネマ『パリのアメリカ人』An American in Paris  

配給:松竹

上映詳細、最新情報は公式アカウントまで。

【松竹ブロードウェイシネマ 公式ホームページ】

 https://broadwaycinema.jp/

Text / マドモアゼル安原

エンタテインメント・ザファースト EntertainmentTheFirst 代表。新Webサイトが今後公開。CS放送舞台専門局、YSL BEAUTYのAD/PR/SPマーケティング、文化系雑誌マネージングエディターを経験。これまでのインタビュー人数は、舞台・音楽のジャンル、宝塚歌劇トップスター、海外アーティスト含む100人以上。ペンネームのマドモアゼル安原で「旅×エンタメ」コラム執筆中。

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