日本中、世界中旅をしてきた私が、唯一まだ訪問していなかった都道府県、それは福井。コロナ禍で海外は行けない中、緊急事態宣言が解除になったタイミングで「全都道府県をコンプリートするぞ!」と行ってきました。
小松空港からレンタカーで、小浜市を目指します。そして旅の準備にとても便利だったのが、小浜市が観光用のために作っている「EXPERIENCE OBAMA」というスマホアプリ。メニューから「海の体験」「山の体験」「神社仏閣」「グルメ体験」など、自分の興味がある分野ごとに下調べができ、カフェなどで利用できるクーポンもついている大変便利なもの。
小浜でまず体験してみたかったことは、小浜湾〜若狭湾を遊覧船で巡る【蘇洞門(そとも)めぐり】。“日本の最も美しい場所36選”に選出された絶景スポットだそう。若狭フィシャーマンズワーフから乗船して、60分間のクリージングに出発!内外海(うちとみ)半島沿岸は複雑な海岸線で、険しい断崖絶壁が続きます。陸の方から外海に降りる道はなさそうです。二匹の亀のように見える奇岩や網がかかったような細かい亀裂が入った岩,かなりの高さから海に流れ落ちる滝と自然が作り出した不思議な景色に次々と心が奪われます。
中でも一番の見どころは、「大門・小門」。屏風のようにそびえ立つ岩に門のような四角い穴が大小二つ開いています。普段は外海に停泊した船から眺めるだけなのですが、私が乗船した日は風も波もない日本海にしては珍しく穏やかな日。「今日は特別に、大門・小門の内側に入り、上陸します」とアナウンスがありました。通年を通して上陸できる確率は10%以下とのこと。なんとラッキーなことでしょう。大門・小門の内側は、コバルトブルーの美しい海の色。本州でこんな海の色を見たのは初めてです。
遊覧船を降りて、街歩き。古い街並みがよく残っているなあと感心しながら歩いていたら、「創業1710年」とのれんに書いてある「とば屋」というお酢屋さんの前を通りがかりました。お酢以外にもポン酢・ドレッシングなどラインナップが豊富で、試飲をさせてもらいました。中でも一番気に入ったのは「壺之酢」という純米酢。壺の中に、お酢の材料を入れ、出来上がると三分の一を残し、また材料を継ぎ足し、それを300年以上繰り返しているお酢だそう。ツーンとした感じが全くなく、まろやかで美味しいお酢で、即購入しました。
奈良・京都から大陸に一番近い港が小浜。その昔、大陸からの人々・品々・文化が小浜を通って古の都に届けられたそう。小さな街なのに寺社が130以上もあるとか。創建が奈良時代の寺社が多く、廻りたいところが多すぎます。時間が足りず、716年創建の多賀寺のご本尊・十一面観音だけをお参りして,本日の宿に到着です。
小浜市中心部から内外海(うちとみ)半島を超え、車で15分。小さな漁村・志積にある【海のオーベルジュ志積】。オーナーは、長年タコ漁師をされる傍ら、民宿を経営されていたそう。その民宿や近隣の空き家を改装、素敵なオーベルジュとして新たな出発をされました。
私が泊まったのは、一棟を縦半分に仕切ったSoraというお部屋。1階部分はバスルームが中心。解放感あふれる湯船からは志積の浜辺が見えます。2階はリビングとベッド。やや手狭ではありますが、居心地がよくその狭さはさほど気になりません。
お食事は、【RESTAURANT UCHITOMI】で。太い梁に支えられた天井の高い平屋建て、夕日に染まる浜辺と海を背景にディナーの始まりです。
最初は“未来に向かう舟盛り”(トップ画像)。今日漁れたさまざまな魚介類やお野菜が豆皿に載り、さらにそれが舟盛りの器に載って出てきます。カボチャのブルスケッタなどもあり、イタリアンテイストとのミックスです。2品目は福井サーモンの炙りや、さらにオーナーが採った”タコのやわらか煮“など地元食材続きます。
一番気に入ったのが、“ヘシコを練り込んだパスタのカルボナーラ”。ヘシコ独特の臭みや苦味はあまり感じず、旨味が際立ちます。パスタ生地はモチモチした食感。「家でも食べたいから譲ってください!」と思わず言ってしまったのですが、常温はもちろん冷蔵等でも鮮度が持たないとのこと、こちらのレストランで食べるしかないようです。
メインディッシュは、小浜で水揚げされた”レンコダイに旬の野菜を合わせたアクアパッツア”。なんと隠し味はクラフトビールを使っているそう。〆の一品は“土鍋で炊いた蛸飯“。季節のお野菜を一緒に炊き込んで、本当に美味しい。イタリアンと和がバランス良くフュージョンした素敵なディナーでした。
ぐっすり眠った翌朝の朝食はシンプルに。土鍋で炊いた白米・香の物・卵焼きなどと共に、目の前に炭が入った火鉢が!そこには地魚の干物やイカなどが少しずつ。自分で火を通していただきます。軽めの漁村の朝ごはん、最高です。
宿泊予約時〜滞在終了時までスタッフの対応も良く、美味しいお料理と快適なお部屋で大満足でした。オープンしてまだ1年ほどですが、すでに「ミシュランガイド北陸編」レストラン部門とホテル・旅館部門にそれぞれ掲載されており、これからの進化がさらに楽しみです。小浜市の中心から少し離れた漁村での滞在は、親戚の家に滞在しているような感覚で、どこか懐かしい気持ちで満たされる滞在でした。
海のオーベルジュ志積
とば屋
蘇洞門巡り遊覧船 https://www.wakasa-fishermans.com/en/sotomo
Text /トラベルアクティビスト真里
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。