初めての福井の旅の続きです。【海のオーベルジュ 志積】をチェックアウトして,三方(みかた)五湖を目指します。有料道路「レインボーライン」を通って、一帯を一望できる山頂公園へ。
山頂公園の展望台に立つと、360度視界が開けていて、絶景です。海岸線に沿って屏風のように山があり、外側は日本海、内陸側に三方湖・水月湖・菅湖・久々子湖・日向湖と五つの湖が並んでいます。海岸線も山並みも複雑に入り組み、湖によって色が異なり、神秘的な景色です。海と繋がっていない淡水湖あり、海と繋がっている汽水湖あり,そして水深が浅い部分は淡水・深い部分は汽水となっている二重底湖など地学的にもとても興味深い風景が広がっています。福井にこんな素晴らしい景勝地があったとは知りませんでした。足を延ばして行く価値ありです!
三方五湖から少し内陸に入ったところに、熊川宿という江戸時代から宿場町の姿を残す小さな集落があります。江戸時代までは小浜から京都へ魚介類を運ぶための、いわゆる「鯖街道」随一の宿場町として栄えたそうです。近代化の中で徐々に廃れていった街ですが、近年はその文化的な価値が再評価され、重要伝統的構造物群保存地区として選定されています。この日の宿泊はこの宿場町で。
熊川宿にある【八百熊川】はいくつかの家屋をリノベーションしてそれぞれを一棟貸しで宿泊を提供する宿です。私が泊まったのは「ほたる」という建物。1階はキッチンとダイニング、腰掛けてくつろぐスペースもあります。土間を挟んで反対側にバスルーム。2階はベッドが2台入った部屋と1台の部屋の計二部屋。
レストラン棟がないこの宿泊施設、夕食はどこでいただくのでしょうか?予約時に「夕食つき」でお願いしておくと・・・お約束の夜7時になると、「こんばんは」と玄関に声が。地元のお料理上手なお母さんがお料理を作って運んできてくれるのです!お母さんはダイニングテーブルの上に手際よく小皿に載った料理を並べていきます。什器には「おもてなしの会」と書いてあり、聞くと、宿泊客がいると町内会から依頼が来てお料理を作ることになっているそう。高価な食材ではないかもしれません。でも、地元の美味しいものが並びます。
ヘシコ・こんにゃくの唐揚げ・ハタハタの醤油干し・焼き野菜に加え、熊川宿の名物の葛を使った葛豆腐もあります。加熱したじゃがいもを潰して作った“じゃが床”で漬けたお漬物「じゃが床漬け」は初めて知りました。具だくさんのお味噌汁は体が温まり、ほっこりした気持ちに。そして、この夕食のシステムは、地域をあげて歓迎してもらっているようで、幸せな気持ちになります。
朝ごはんは、冷蔵庫に準備されている食材を使って自分で作ります。そのまま食べられるもの、温めめるだけのものなど、難しい料理はありませんのでご安心を。主食はお粥ですが、「日本の名水百選」にも選ばれている地元の名水「瓜割の水」を使い土鍋で炊きます。土鍋でご飯を炊いた経験がほとんどない私でしたが、火加減の調整等の手順がわかりやすく書いてあったので、とても上手に炊けました。名産の葛を使った餡をお粥にかけていただきます。香の物・梅干し・塩昆布などシンプルなおかずがお粥とよく合います。とてもステキな朝ごはんです。
フルサービスのホテルや旅館は快適ですが、このようなユニークな特別な体験ができる宿での滞在は旅行した甲斐があるというもの。宿場町の住人の一人になったような気持ちになり、忘れられない経験となりました。宿への到着時間が遅く、宿場町の中を堪能出来なかったことが心残り。地元の日本酒を取り揃える酒屋さんやカフェ・雑貨屋さんなどがあり、江戸時代の街並みの散策と併せて楽しめる場所とのことです。
私にとって最後に残った未踏の都道府県・福井。「永平寺」「東尋坊」「恐竜」がよく出てくる福井県のキーワードですが、それ以外にも興味深く・美味しく・美しい場所がいっぱいでした。季節を変えて再訪したいです。
三方五湖
八百熊川
Text /トラベルアクティビスト真里
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。