1月14日に東京国立博物館で開幕した【特別展 ポンペイ】。開幕に先立って内覧会に行ってきましたのでレポートします。
西暦79年のある朝、ヴェスヴィオ山の噴火が突然始まりました。11時間にわたって灰や軽石が降り注ぎ、翌朝には火砕サージと火砕流が発生。ヴェスヴィオ山からわずか10キロしか離れていないポンペイの街に押し寄せ、街を飲み込んだことは皆さんご存知でしょう。
この展覧会では、ナポリ国立考古学博物館収蔵の全面協力のもと、日本初公開の品を含む150点が展示されています。まだローマ帝国に組み込まれる前の時代から残る遺物から噴火直前までの遺物が数多く展示されており、ポンペイの人々が長年にわたっていかに華やかで豊かな生活を送っていたかを鑑賞することができます。
会場に入りまず最初に目に入るのは、フレスコで描かれた《バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山》。この絵の中では、ヴェスヴィオ山は富士山のような形状をしていますが、現在のヴェスヴィオ山は頂きが二つになってしまっています。噴火で山頂部が吹っ飛んでしまったそうで、山の形がすっかり変わってしまうほどの大爆発だったことに改めて驚きます。また、フレスコ画のヴェスヴィオ山には頂上までぶどう棚が描かれていて、ワインの神さまであるバックスが一緒に描かれていることを考えると、ブドウがたわわに実り美味しいワインが作られる豊穣な土地だったことが見て取れます。
そして同じ展示室には、噴火時の犠牲者の石膏像も。うつ伏せになった女性が顔周りで腕を組んでいるのは、噴石物等で息苦しかったからでしょうか。噴火が始まってすぐ街から逃げ出した人もいたようですが、家の中に留まり犠牲になった人が多かったそう。地震国・火山国の日本に住んでいる身としては他人事とは思えません。
台所で使っていた日用品などには、ポンペイが活気に満ちていた様子を感じることができます。ワインを入れたアンフォラ(テラコッタの壺)の外面には中身のワインの種類と生産地が示されています。現代のワインボトルのラベルと同じですね。取手に顔が描かれているフライパンやアヒルの形のケーキ型など、日用品が実用的であるだけでなく遊び心が加わっているところが、ポンペイの人々の生活の豊かさを感じます。
今回の展覧会の注目作品のひとつは、家の玄関に敷かれた床モザイク《猛犬注意》。本来、訪問者に「番犬がいますよ」と注意喚起するために床に描かれたモザイクだそうです。迫力があると言えばあるのですが、なぜか可愛らしい感じもします。
《パン屋の店先》というフレスコ画の近くには、フレスコ画に描かれているパンと全く同じ形の《炭化したパン》も展示されています。噴火前の生活がしのばれると共に、日常生活が噴火により奪われたという哀しさも感じられました。
他にも、上流階級の豪奢な暮らしが垣間見ることができるガラス製の《青い水差し》、カメオが施されている《ぶどう摘みを表した小アンフォラ(通称「青の壺」)》、女性の活躍の証左である裕福な女性の彫像《エウマキア像》、ローマ帝国時代の奴隷制度と奴隷解放などが理解できる《ヘルマ柱型肖像(通称「ルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスのヘルマ柱」)》など、ポンペイの歴史と社会制度を知ることができる展示物がいっぱいです。また、従来の見解を覆すような展示品も。「竪琴奏者の家」と呼ばれる邸宅から出土した《円形火鉢》です。従来、ヴェスビオ山が噴火したのは8月と思われていたのですが、暖房器具であるこの火鉢が邸宅室内から見つかったことなどから、噴火はやや寒くなった秋の時期ではという説が有力になっているとのことです。
私にとって、イタリアはコロナ禍前には年に何度も行っていた場所。現地の美術館や博物館でローマ時代の遺物を見ることができなくなって早2年。久しぶりに“リアルなイタリア”に触れて、とても嬉しかったです。
いつも楽しみな展覧会グッズですが、今回はサンリオキャラクターの「ポムポムプリン」とのコラボ商品を発見。語頭の「POM」が一緒、そしてこの展覧会のシンボルとも言える展示品《猛犬注意》との“犬”という共通点でコラボしたのでしょうか!? 可愛いさに心を奪われ、クリアファイルとマスキングテープを買ってしまいました。
フラッシュなしでの撮影が全作品可能なのも嬉しいです。
会 期 2022年1月14日(金)~4月3日(日)
会 場 東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間 9時30分~17時00分
休館日 月曜日、3月22日(火)※ただし、3月21日(月・祝)、3月28日(月)は開館
観覧料金
一般 2,100円
大学生 1,300円
高校生 900円
*日時指定券の事前購入・予約を推奨。
展覧会公式サイト
Text /トラベルアクティビスト真里
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。