リニューアルした新しい国立西洋美術館で開催されている「自然と人のダイアローグ」展をレポートします。約100点の風景や自然などをテーマにした絵画や写真を観て、ヨーロッパを、世界を旅した気分になりました。
国立西洋美術館は、実業家の松方幸次郎が20世紀初めにヨーロッパで収集した印象派などの絵画・彫刻を中心とする松方コレクションが基礎となって、1959年に設立されました。本展は開館100周年を迎えるドイツ・フォルク ヴァング美術館との共同企画、印象派のモネ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ドイツ・ロマン主義のフリードリヒ、現代美術家のゲルハルト・リヒターまで、両館が誇る100点以上の名作をたっぷり堪能できます。
印象的だったのは、ゴッホの「刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)」。夏の炎天下、麦の刈り入れをする人が描かれています。1890年7月に麦畑で自らの腹をピストルで撃つ前年、1889年の作品です。<種まき>は生のはじまり、<刈り取り>は生の終わりと、とても黄色くてとても明るい麦畑を描きながら、時がくれば一生を終えるほかない人の死のイメージを重ねたようです。「ひまわり」などゴッホの作品は好きでたくさん観ていますが、初めて観たこの作品、私のイチオシになりました。純金の光を太陽と麦畑が放っています。
そして鉄板はモネ。多くの作品が展示されています。「セーヌ河の朝」「ルーアン大聖堂のファサード(朝霧)」など、絶えず変化する光や気象をさまざまな色を使い描いています。そして最後の展示室には、「睡蓮」が2作品。1つは、第二次世界大戦中に行方がわからなくなり、2019年に約60年ぶりにルーヴル美術館内で、発見され、修復された「睡蓮、柳の反映」。作品の上半分が欠損していて、欠損部分は補われることなくそのままになっています。とても珍しく注目です。そしてもう1つは、松方コレクションの象徴的存在である「睡蓮」。いずれも1921年に松方がモネのアトリエを訪れて購入したそう、国立西洋美術館の代表作品です。
約100点の作品を通じて、西洋美術の巨匠たちも、それぞれの感性で自然と向き合い、対話しながら作品を生み出していったことがわかります。ドイツ・ロマン主義、印象派、ポスト印象派の作家たちが描き出す、光と風景を、存分に楽しめます。
また国立西洋美術館では、1年半の休館中、設計者であるル・コルビュジエの設計をもとに、1959年に創建した当時の姿に近づける工事(デザイン上も大きな意味を持つ前庭の目地、西門の位置や囲障などを中心)が行われました。国立西洋美術館は、ル・コルビュジエの建築作品として、世界文化遺産にも登録されています。
展示会名:国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで
会期:2022年6月4日(土)~9月11日(日)
休館日:月曜日、7月19日(火) (ただし、7月18日(月・祝)、8月15日(月)は開館)
開館時間:9:30〜17:30(毎週金・土曜日:9:30〜20:00)
※入館は閉館の30分前まで
会場:国立西洋美術館(東京・上野)
入場料(税込)
平日:一般2,000円、大学生1,200円、高校生800円
※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料
※日時指定制制
Text / 糸藤友子
リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/ 【ストレスマネージャー】https://www.neu-active-brain.com/stress-manager/