三重県といえば、私は伊勢・志摩や鳥羽など海沿いばかり旅行していました。少し山間部に入った温泉地に、2020年にオープンした素敵な宿「素粋居(そすいきょ)」をご紹介します。
名古屋から近鉄で四日市駅。近鉄湯の山線に乗り換えて終点・湯の山温泉駅で下車。徒歩4分。名古屋から1時間ほどです。
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土・石・漆喰・木・漆・和紙・硝子・鉄…素材のテーマが異なる12棟のヴィラが並びます。どのお部屋に泊まろうかとHPの写真を見比べながらかなり悩んでしまいました。どのお部屋も個性的。悩みに悩んだ末、地元の菰野石(こものいし)がテーマの《碉石(ちょうせき)》に滞在することに。菰野石(こものいし)が外壁はもちろんのこと、室内の壁にも使われています。内壁に石が多用されているお部屋に泊まるのは初めてかもしれません。ちょっとワイルドな、非日常感です。石に囲まれていると圧迫感があるかなという思いが一瞬頭をよぎったのですが、実際お部屋に入ってみると、むしろ石に守られている感覚でとても落ち着きます。各棟には、そのテーマに合わせた本が数冊置いてあります。私が泊まったヴィラは石がテーマですから、レオ・レオニーさんの「はまべに いしが いっぱい」が置いてありましたよ。
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他の棟も見学させてもらいました。ネーミングに趣があり、一言でそのヴィラの雰囲気が感じ取れます。ガラスがテーマの《硝白(しょうはく)》、丸いガラスが重なり合ったシャンデリアと白で統一された室内が印象的です。
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薄い茶色で統一された土の《土逢(どおう)》は、茶人・千宗屋氏監修の茶座敷「抱土」が設えてある落ち着いた雰囲気。日本の伝統的な建築素材である漆喰がテーマの《白露(しらつゆ)》は、室内の調湿性に優れています。室内のペンダントライトシェードやインテリアが、生地を細かくつまんだような布でできており、とても心を惹かれます。ほとんどのヴィラが90平米以上。それぞれの棟にあった露天風呂がついており、温泉をゆったりと堪能することができます。
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夕食は施設内にある【HINOMORI】で頂きました。「火」という漢字を三つ、「森」のように組みわせたロゴが入り口にあります。広々とした店内には、お肉を吊るして熟成させている熟成庫、そして盛んに燃えている薪火も見えます。そう、こちらのレストランは、薪火で焼いた熟成肉がシグネチャーのメインディッシュ。最初にお肉を見せてくださって、「6歳の黒毛和牛を3か月熟成させました。前菜等を食べていただいている間に、1時間かけてじっくり焼き上げます」と、シェフからのご挨拶。
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最初にサーブされたのは、桑名の蛤。ああ、そういえば、蛤といえば三重県の名物です。今まで三重で蛤を食べたことがなかったので、嬉しいサプライズです。いいお出汁が出ています。北海道のホタテはタルト生地に載せて。ホタテの旨みと甘味に、まだ二品目だというのに、すごい満足感。
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カリフラワーの揚げ焼きは丸ごとフライパンで調理して、こんがり美味しそう。金目鯛のポアレは九条ネギを添えて。そしてメインの熟成肉は、栃木と鹿児島と産地が違うもの食べ比べ。
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〆は鶏の皮とカブを入れて炊いたご飯。料理長のご出身の地元でよく食べられている「沢煮汁」という具沢山のお味噌汁と一緒に。三重県産に限らず、その時の旬の美味しいものをベストな調理法でたくさんいただきました。大満足のディナーでした。
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翌朝は、お夕食をお腹いっぱいいただいたにも関わらず、もたれることもなくスッキリ。美味しく朝食をいただきました。地元の卵を使った卵焼き、具沢山のお味噌汁、自家製のお漬物。優しくお味にほっこり。
ベッドの寝心地、用意されているパジャマの着心地、そして露天風呂のお湯…全て満足です。スタッフの方々もきちんとしていて丁寧な物腰。気持ちいいサービスです。
季節を変えてまた訪問したい素粋居。次はどのお部屋に泊まろうかしら…。
素粋居
Text /トラベルアクティビスト真里
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世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。