古代メキシコ3つの文明が並ぶ迫力の特別展

紀元前15世紀〜紀元後16世紀まで、現在のメキシコに当たる地域には様々な文明が花開きました。その中で、「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」という三つの古代文明にフォーカスした特別展「古代メキシコ ーマヤ、アステカ、テオティワカン」東京国立博物館で開幕しました。過去にも何かの展覧会でそれぞれの出土品を観ることはあったように思いますが、三つの文明の出土品をまとめてみられる展覧会は初めてではないでしょうか?

《オルメカ様式の石偶》(オルメカ文明 紀元前1000~前400年 メキシコ国立人類学博物館)

会場に入り最初の展示物は、《オルメカ様式の石偶》(オルメカ文明 紀元前1000~前400年 メキシコ国立人類学博物館)です。これは、マヤ・アステカ・テオティワカンに先立つ紀元前1500~紀元前400年に栄えたメソアメリカ(メキシコ・中央アメリカ北西部の古代文明が繁栄した地域)最古の文明「オルメカ文明」からの出土品です。可愛いような気もしますが不気味な感じもする不思議な容貌をしたこの幼児の像は、人とジャガーのそれぞれの特徴を合わせ持っています。人と動物が融合するということは、人智を超えた存在。「神」や「権力」の象徴だそう。

《死のディスク石彫》(テオティワカン文明 300~550年 メキシコ国立人類学博物館蔵)

「テオティワカン」は、紀元前100年〜紀元後550年に、海抜2300メートルのメキシコ中央高原に築かれた古代計画都市です。2000ものの住居用アパートが立ち並び、10万人が住んでいたと推察されています。その都市で最大のモニュメントは「太陽のピラミッド」。216m四方・高さ64mもあります。そこから出土した《死のディスク石彫》(テオティワカン文明 300~550年 メキシコ国立人類学博物館蔵)は、ドクロを模った円形の石板で、ドクロの周囲には太陽の光のような放射状の形が。太陽のピラミッドはその名の通り太陽を象徴しているのですが、当時の世界観では太陽が西に沈んだ後、地下世界=死の世界を彷徨い、夜明けと共に再生すると考えられていたとのこと。この《死のディスク石彫》は、「太陽とドクロ」、「生と死」のように相反するものが一つのアイテムになっており、テオティワカンの独特の世界観を表しています。

《鷲の戦士像》(アステカ文明 1479~86年 にテンプロ・マヨール博物館蔵)

14世紀から16世紀に栄えた「アステカ」からは、《鷲の戦士像》(アステカ文明 1479~86年 にテンプロ・マヨール博物館蔵)にご注目ください。イヌワシと思われる鷲のコスチュームを頭飾りから膝あたりまですっぽりと被った戦士です。高さが170cmもあり、少し斜めから見てみると、今まさに飛び立とうとしているように見えます。このような装束を纏い、戦いで名を上げた戦士が舞踏をしたり神に祈りを捧げたりしたのでしょうか、妄想が膨らみます。アステカ文明の首都テノチティトランは、軍事力と貢納制度により国力が増大し、16世紀初頭には20万人を超える人口を抱えるまでに発展しました。建築や絵画・彫像なども盛んで芸術も盛んだったとのこと。その様子を見てとれるのが、この《鷲の戦士像》です。

マヤ文明は、ユカタン半島を中心にメキシコ・ベリーズ・グアテマラ・ホンジュラスにまたがるエリアで、紀元前1200年から紀元後1697年にスペインに滅ぼされるまでの二千数百年に渡って栄えた文明です。表語文字と表音文字を組み合わせた「マヤ文字」や、高度な天文学を基にした「マヤ暦」などは耳にしたことがあるかもしれません。

《赤の女王》展示風景

マヤ文明からの見どころは、本邦初公開となる《赤の女王》の墓の出土品であるマスクや冠、首飾りなどです。真っ赤な辰砂(水銀朱)に覆われた出土した仮面や冠・首飾りは、マヤの代表的な都市国家バレンケの黄金時代を築いたパカル王(在位615~683年)の妃と言われています。展示室は墓室を模し、石棺の中に眠る“女王”は真っ赤なマネキン。その顔には孔雀石でできたマスクがはめられ、瞳には黒曜石が施されています。冠はヒスイ輝石岩、首飾りは玉髄でできています。腕の辺りでは緑色岩のビーズが大量に見つかり、腕飾りでした。まさに出土した時のまま・・というよりも、女王が棺に収められた時を再現した空間となっています。千数百年前の女王とじっくり対峙してみてください。

会場内各所で、現地の映像を大きなスクリーンで映し出してメキシコの遺跡にいるような雰囲気が演出されています。音声ガイドは、メキシコ在住経験がある上白石萌音さん。流暢なスペイン語もご披露されていますので、ぜひ音声ガイドも聞いてみてください!個人利用に限り(SNS投稿可)全作品、写真撮影OKというのも嬉しいです。

特別展「古代メキシコ ーマヤ、アステカ、テオティワカン」

会期:2023年6月16日(金)~9月3日(日)
※事前予約不要
会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)
開館時間:午前9時30分~午後5時
※土曜日は午後7時まで 
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、7月18日(火)
※7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館
巡回情報:福岡会場:2023年10月3日(火)~12月10日(日) 九州国立博物館
大阪会場:2024年2月6日(火)~5月6日(月・休) 国立国際美術館

問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

公式サイト https://mexico2023.exhibit.jp/

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。


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