伊豆半島の温泉などに行くときに、列車からも見える伊豆大島。伊豆諸島の中で、東京から最も近く、また周囲60kmと最も大きい島でもあります。「すごくいいところだよ」と友人から勧められ、8月初旬、初めて伊豆大島へ行ってきました。
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竹芝桟橋から8時出発のジェットホイールに乗り、1時間45分。うとうとしていると、あっという間に伊豆大島・岡田港に到着しました。大島にはジェットホイールやフェリーが発着する港が岡田港・元町港とふたつあり、風向きや波の状況によってその日の早朝に到着港が決定します。宿泊する宿の送迎やレンタカーの手配をしていた場合、島民の方々はどちらの港に船が着くか毎日チェックしていて対応してくれますので、問題はありません。東京からのアクセスの方法は空路もあり、調布飛行場からわずか25分で来ることができます。
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レンタカーをして、まずは伊豆大島のシンボルである三原山へ。山頂口の駐車場に車を停めて、そこから内輪山に向かって45分のトレッキング。道路は舗装されているので歩きやすいです。溶岩が流れた跡を見たり、噴石を手にとってみたり、楽しく歩きました。私が行った8月初旬は気温も高く、直射日光を遮る背の高い樹木などもないため、時々息が上がってしまうことも。内輪山の淵に辿り着いて、見下ろす火口は迫力満点。登ってきた甲斐がありました。
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三原山を後にして宿へ向かいます。島をぐるっと一周する大島一周道路に沿って車を走らせていると、年輪のような地層が剥き出しになっている景色が目の前に現れました。高さ24メートル、長さ630m、“バームクーヘン”と呼ばれている「地層切断面」です。太古の昔から現在まで活火山である伊豆大島。過去1万8000年の間に繰り返し起こった噴火の度に噴き上げられた火山灰などの噴出物が積もり、噴火のない静かな期間には風化し、また飛ばされてきた土ぼこりが溜まり、再び噴火が起こり・・・と繰り返された結果、このような美しく不思議な景色が作り出されたのです。地層の反対側は海岸で、利島・新島・式根島・神津島が臨めます。ぜひ車を停めて、雄大な景色を堪能してください。
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大島での滞在は、島の南東部に位置する波浮(はぶ)港からほど近い高台にあるゲストハウス「露伴」。昭和に建てられた一般家屋を大正ロマン溢れるテイストにフルリノベーションされています。共有スペースであるライブラリーには様々なジャンルの本が壁一面に3000冊も集蔵されています。滞在中のひととき、ゆったりとした時間を過ごせます。宿の名前の由来は、文豪・幸田露伴と大人気マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品「岸辺露伴は動かない」と両方に掛けたそう。
「露伴」がある波浮港には、明治から昭和にかけて与謝野鉄幹・晶子夫妻、林芙美子、幸田露伴など多くの文人が訪れて滞在したそう。もちろん彼らの作品の中にこの波浮港の様子が描かれていることも多く、川端康成「伊豆の踊り子」の舞台になった「港屋旅館」は、現在は資料館として公開されています。30の文学碑を辿る「文学の散歩道」もありますので、散策にピッタリですね。
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波浮港の街には、鯛焼き屋さん「島都梵天」、クラフトビールなどの品揃えが充実している酒屋「高林商店」、コーヒーとパフェが美味しいレトロな雰囲気の「カフェ モンマルトル」。おいしい地魚のお鮨が食べたければ、「港鮨」へ。予約必須の人気店です。
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以前からあるお店もあれば、最近移住してきた人が始めた店もあります。ぜひ立ち寄って欲しいのは、「Hav Cafe」。テレビ東京のドラマ《東京放置食堂》の舞台になったお店です。素敵なマダムが切り盛りされていて、美味しいピザトーストをランチに頂きました。
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夜はゲストハウスの庭先でBBQ。買い物に立ち寄ったスーパーの鮮魚コーナーの店員さんに「大島に来たら、絶対これ食べて」と強くお勧めされたのが、「タカベ」という地魚。脂がのっていて、サンマに近い味でしょうか。絶品です。怖いもの食べたさで、匂いが強烈なことで知られる「クサヤ」にも挑戦。思ったほどはひどい匂いはしなかったように思いましたが、東京の自宅で焼いて食べる勇気はありません。陽が沈むと、気温がグッと下がり、涼しい風が吹いてきます。空を見上げると満天の星空。
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翌日、今回の旅で一番行ってみたかった場所、「裏砂漠」へ。ここは、国土地理院が発行する地図に「砂漠」と表記されている日本で唯一の場所なのです。前日に行った三原山火口展望台からちょうど反対側に当たります。火山からの噴出物しかない真っ黒な斜面を展望台まで登ります。強い風が吹き抜ける場所で、噴火から長い年月が経っても植物が生えないそう。荒涼としていて、SF映画に出てくるどこかよその惑星のようです。三原山は雲がかかって、そこからの霧がひっきりなしに流れてきます。海の方に目をやると、空は晴れていて、青い海が見えます。霧に包まれた三原山と真っ黒な裏砂漠と青い海と空のコントラストがなんとも不思議な景色です。
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東京・竹芝桟橋からわずか1時間45分。伊豆大島には雄大な自然の中に、ゆったりとした島時間が流れていました。東京からのアクセスが良いので、週末の1泊2日でも十分に楽しめます。私も気軽に再訪するつもりです。
東海汽船 https://www.tokaikisen.co.jp/
新中央航空 https://www.central-air.co.jp/index.html
ゲストハウス「露伴」https://rohan.tokyo/index.html
Hav Cafe https://www.instagram.com/havcafe/?hl=ja
Text /トラベルアクティビスト真里
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世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。