徳島→アメリカ。阿波人形浄瑠璃の魅力を発信せよ! ①砂漠の町、ニューメキシコ州サンタフェ編

W LIFE で「私のセカンドライフ〜義太夫修行日記」を連載された長野尚子さんが「阿波人形浄瑠璃アメリカ公演」に義太夫として参加!レポートを寄稿いただきました。

徳島県の伝統芸能「阿波人形浄瑠璃」の魅力を世界に発信する派遣プロジェクト 「阿波人形浄瑠璃アメリカ公演」が、今年6月、アメリカ2都市にて行われました。派遣メンバーは、義太夫(私こと長野紫寿)、三味線(竹本友和嘉師匠)、人形座(鳴門座)、さらに人形師の吉田尚行氏など総勢12名。

最初に訪れたのは中南部、ニューメキシコ州サンタフェにある「国際民族芸術博物館(Museum of International Folk Art)」。この博物館は世界各国の民芸品や人形を収集・展示していることで知られており、2019年に徳島の人形師、甘利洋一郎氏が同館からの依頼を受けて人形を制作したことから今回の公演が実現しました。

同博物館展示図録より、甘利洋一郎氏制作の「清姫」。 (写真提供/徳島県立阿波十郎兵衛屋敷)

ところで、ニューメキシコ州はといえばアメリカの州のなかでも最も歴史の古い州のひとつ。民族比率はヒスパニック(ラテン系)が約46%を占めアジア系は1%にも満たず、街を歩いていてもアジア系はほとんど見かけませんでした。ある意味、日本とは最も遠い州かもしれません。そのような街で、果たして「人形浄瑠璃」というコアな芸能を見に来てくれる人はいるのだろうか?一同、期待と不安が入り混じった気持ちでいざ、現地へ向かいました。

同博物館は、「ミュージアム・ヒル」と呼ばれる美術館・博物館が密集するエリアにあります。
日本の妖怪や関連作品を紹介する特別展「Yokai: Ghosts & Demons of Japan」(日本の妖怪展)が同時開催中。

人形浄瑠璃公演は6月24・25日の二日間行われ、小さなお子さんからご年配の方まで幅広い年齢層のお客様で両日とも立見がでるほどの大盛況。特別展とも合わせて現地の方々の日本文化への関心の高さを感じました。

公演前には人形浄瑠璃のレクチャーや「三人遣い」の体験コーナーもありました。

そしていよいよ開演。演目は、徳島では定番の『傾城(けいせい)阿波の鳴門』。
英語字幕はあえてお見せせず、浄瑠璃の語りと音色、人形の動きだけで母子の“情愛”を伝えようと三業が心をひとつにして演じました。

母子の名乗りもせず娘を返す母の胸の内が切ない、見どころのシーン。

割れんばかりの拍手とともに幕が閉じ、舞台上では感極まった出演者が涙していたのが印象的でした。観客の皆さんからも「言葉はわからなかったけれど、胸にぐっときて素晴らしかった」(60代男性)、「初めて見ましたがすごく楽しめました」、「アメイジング!」(20代男性)などうれしいお言葉をいただきほっとしました。

この女性は、太夫・三味線の衣装について質問をしてくださいました。
撮影会は大人気。女の子は初めて見る日本のお人形に興味津々の様子。
博物館に展示されている「清姫」に出演者全員で“ご挨拶”。
人形師の吉田尚行氏(人形尚)による人形の組み立てワークショップも開かれ、こちらも盛況でした。


★サンタフェ街歩き


日干しのレンガで作られた“アドビ”と呼ばれる赤茶色の建物が街全体のかわいらしさを演出。

次回は、

 大谷翔平選手を応援せよ!ロサンゼルス&アナハイム編

「国際民族芸術博物館」

https://www.internationalfolkart.org/

阿波人形浄瑠璃はどこで見られるの? 

徳島県立阿波十郎兵衛屋敷(あわじゅうろべえやしき)

https://joruri.info/jurobe/

毎日2回、阿波人形浄瑠璃を上演しています。展示室では人形浄瑠璃に関する資料や「木偶(でこ)人形」、太夫の小道具や太棹(ふとざお)三味線などを見ることができます。

Text /長野 尚子  

フリーライター、編集者。(株)リクルートの制作マネージャー&ディレクターを経て、早期退職。アメリカ(バークレー)へ単身“人生の武者修行”に出る。07年よりシカゴへ。シカゴのアート&音楽情報サイト「シカゴ侍(www.Chicagosamurai.com」編集長。四国徳島とシカゴの架け橋になるべく活動中。著書に『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。http://www.shokochicago.com/ 日本旅行作家協会会員。

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