【大人の嵐山紀行1】重陽の節句にちなんで京都の雅を味わう「星のや京都」

嵐山は、平安時代には貴族が別荘を構え、小倉山の麓では藤原定家が百人一首を編んだという雅やかな地。目の前には桂川(大堰川)が流れ、奥には嵐峡が広がる美しさに渡月橋はじめ休日は賑わいます。秋、「星のや京都」の重陽の節句にちなんだ「奥嵐山の重陽体験」は、そんな嵐山の奥深くで別格の静かな時間が過せます。お招きいただいた大人の嵐山紀行、そんな重陽体験をレポートします。

渡月橋の船着場で来客を待つ星のや京都の専用船。
水辺に見えきた星のや京都、お迎えのスタッフ。

星のや京都の旅は、渡月橋の南の端にある「星のや京都 舟待合」から始まります。専用の船に乗って15分、奥嵐山への水上の旅です。船が出るまではほのかに白檀の香る待合で喉を潤す飲み物を。伺った時はまだ暑く、冷やした甘酒が出ました。

静かに進む船に乗り込んで、渡月橋を離れてだんだんと緑深い奥嵐山へ。古くは、京都の豪商だった角倉了以が別邸を構えた水辺に「星のや京都」が見えてきます。

今年は14年目を迎える星のや京都。深い緑と静けさに包まれた大人の宿。

荷物をお迎えの人に渡して、階段をのぼって敷地の中へ。滝から水が注ぐフロント前の水の庭では歓迎の音楽を奏でてくれます。船の旅から始まるこんな一連のお迎えは、星のや京都ならでは。全室、川に沿って窓が開けて、美しい眺めに時を忘れて心静かな時間が過ごせます、

お茶などが自由に楽しめるライブラリーラウンジの前の水の庭。
窓からは大堰川の眺め。船着場を見下ろす客室には、菊も生けられて。


秋は菊の花咲く、重陽の節句。実りの秋に、菊の花を飾り、菊の花びらを浮かべてたお酒や菊をあしらったお料理をいただき、長寿や無病息災を祈ります。星のや京都の「奥嵐山の重陽体験」では、京都の老舗香木店・山田松香木店から来られた職員の方に指導をいただいて、菊の花を入れた匂袋を作ります。夜眠る時に専用の香枕に忍ばせて、菊枕にして香りを楽しみながら就寝することもできます。

原香料を足していくとどんどん変化していくのが楽しい。
自分だけの香り、重陽の匂袋ができあがりました。

白檀、丁子、桂皮など8種類の細かく刻まれた香原料を使って、まずベースになる香りを作ります。それぞれの香りの特徴や原産、効能などを聞きながら、さじで加えていきます。これがすごく不思議で、単体で嗅いでいた時の香りと付け加えた時では、ニュアンスが変わるのです。たとえば「ちょっと発酵したような香りで癖がある」と思える甘松は、他の香料と混ぜるとぐっと深みの増す香りになったり。

さらに重陽体験では、菊花も足します。どことなくふんわりした優しい感じ。自分の好きな香りを少し加えて仕上げ、紙の袋に入れた後、雅やかな金襴の匂袋に入れて出来上がり。私は、爽やかな龍脳が強めの清廉な香りが好きなので匂袋も白に可憐な花の刺繍のものにしました。

空中茶室で。じょじょに日が暮れていくなか、お食事が運ばれてきます。
最初の一献。麗しい器に菊の花。黒麹で造ったお酒をいただきました。

夕食は、菊をさまざまににあしらった「嵐峡の滋味」を、大堰川を見下ろす空中茶室にしつらえた特別席で。最初の一献は、黒と金の漆の杯に菊の花びらを散らしたお酒。はっとするほどきれいです。京丹後のBLACK SWANという秋の薄暮にふさわしい深みのある味わいでした。

季節の味が盛られた八寸と糀漬けの牛肉を使った合肴。
 味わい深い煮物の菊蕪には菊菜や菊餡が使われてます。
ご飯は、秋を味わう見た目も美しい一品。


向付のお造りには菊醤油、八寸には菊菜のお浸しや菊饅頭、菊甘酢なども。日も落ちて、雅やかな薄明かりの中、一つ一つ季節の味を楽しめるお料理をいただきました。ご飯の秋味、新いくら酢橘釜には菊花、菊葉が散らされ、錦糸卵で作られた大輪の菊が見事です。

滋味いっぱいの朝鍋朝食。朝から体が喜ぶ感じ。

匂袋のほのかな香り漂う中、ぐっすり眠った翌日はお部屋で朝食。秋のきのこをたっぷり使った朝鍋朝食。ほんとうにお出汁がおいしくて、朝から幸せな気分になります。

なんとも優雅な源氏物語絵を楽しめる貝覆い。

しばし平安貴族の気分で「奥嵐山の源氏絵貝覆い」を楽しみました。伏せて置かれた蛤の模様を見て、対になるものを探し出し、ぴたりと合えば裏返し。内側に描かれた源氏物語絵とその物語をお話してもらえます。久しぶりに聞く、光源氏の話と女人のストーリーがなんとも楽しい時間でした。2,420円/1名様・和菓子とポストカード付き (税・サービス料10%込、通年開催)

すっかり時間を忘れた奥嵐山の滞在。
この季節ならではの菊枕作り体験と夕食「嵐峡の滋味」を含む「奥嵐山の重陽体験」次回は、10月23日に開催。1組1−2名様で7日前までの予約が必要です。34,200 円(税・サービス料10%込)/1名様、宿泊費別。

星のや京都 https://hoshinoya.com/kyoto/

Text / W LIFE編集長 小野アムスデン道子



世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。インバウンド・コンサルタント。日本旅行作家協会会員。


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