広島、建築家 坂 茂氏が手がける美術館・ヴィラ・レストランを訪れて

SIMOSE Art Garden Villa》は、今年4月に山口県大竹市に開業したばかりの複合施設。宮島や江田島を臨む高台の4.6haの広大な土地に美術館・ヴィラ・レストランがあります。プリツカー受賞の著名な建築家・坂 茂(ばんしげる)氏が施設やヴィラ含めて手がけたことで話題になっています。

チェックイン直後、まずいくつかのヴィラを見学させてもらいました。《森のヴィラ》に5棟、《水辺のヴィラ》5棟と計10のヴィラがありますが、ほとんどヴィラが、坂氏が以前に手がけた別荘のリメイクです。

まずは、《森のヴィラ》の《壁のない家》へ。ここは、15年以上前に吉永小百合さんが出演されていたAQUOSのCMに出ていた家のリメイクです。家の横にある土の斜面とそれに沿うカーブを描いた壁面一面だけで全ての構造を支えていいます。開放感のある室内に驚きます。家具も全て坂氏によるもの。

同じく《森のヴィラ》に佇む《十字壁の家》は、十字の形に壁が配置されており、仕切られた部分がそれぞれ赤・青・緑・黄色と塗り分けられています。これは、室内では、バスルームは黄色、階段は赤など、外観に使われている色が室内では機能ごとに分けられているのです。3階の檜のバスタブは、開放感があり、大きさも一人では広すぎるくらい。ぜひ一度入ってみたいです。

《紙の家》は、壁や柱にあたる構造部分が全て紙の筒で作られた家。坂氏といえば、災害時に利用する紙でできた「紙菅シェルター」を発案された方。紙管で十分な強度と建設コストを低く抑えることができることをよくご存知です。紙管と紙管が微妙な間隔で並んでいることで目隠しにもなり、一方その隙間が室内のいる人の気配を感じさせるところが奥ゆかしさを感じさせて良いです。

私が泊まったヴィラは《水辺のヴィラ》の《キールスティックの家》。キールスティックとは、オーストリアの木造素材Keilstegのことで、壁面や屋根に使かわれています。カーブを描いた三角形状の板が互い違いに組み合わされ、外からの柔らかい光を取り込むのと同時に、構造としての強度を生み出しています。《キールスティックの家》はAからEまで5つあるのですが、私が選んだのは和室風に畳が敷き詰められ、掘り炬燵のように床面に座れるヴィラ。お風呂は大きな檜風呂。窓を全て収納すると、素晴らしい開放感。視線を海にやると、宮島が見えます。

SIMOSEの全てのヴィラは、冷蔵庫にあるシャンパーニュやワイン・ソフトドリンクは宿泊料に含まれています。そしてレストラン棟では、15時以降〜ディナーまでは宿泊者に限り無料でシャンパーニュやワインを楽しむことができます。穏やかな瀬戸内海の夕焼けを眺めながら、アペリティフを楽しみたいですね。

レストランでのディナーは広島県・山口県の食材を多用したフレンチ。前菜・魚・お肉・デザートと選べますが、私はアオリイカのサラダ仕立ての前菜・ハタのポワレ・広島県産和牛フィレ肉のグリルを選びました。どれも美味しく、ワインも進みます。

夕食後、すっかり暗くなった敷地内をお散歩してヴィラまで帰りました。途中、散策路を辿り、美術館の屋上に造られた《望洋テラス》に登ってみました。宮島はすっかり闇の中に沈み、水盤に浮かぶポップな色の可動展示室がライトアップされています。遠くに見える化学プラントの夜景とのコントラストがかっこいい。

美味しい朝食をいただき、チェックアウト後に下瀬美術館を観覧しました。広島の建材製造販売メーカー社長・下瀬ゆみ子氏が館長であるこの美術館。ゆみ子社長ご自身と先代のご両親と二代にわたって集めたエミール・ガレのコレクションは膨大なもの。ガレはガラス作品のみならず、大型の家具など希少なものも。音声ガイドの内容も充実しています。あのポップな色の可動展示室の中には、東山魁夷の絵画やドーム兄弟のガラス作品など、ガレ以外の作品がたくさん展示されていました。下瀬ご一家の長年に渡る美術への敬愛の姿勢に感服いたしました。

美術館のから《エミール・ガレの庭》というお庭に出られます。水路沿って散歩道が通り、周りには様々な花や木が植えられています。可愛い小鳥や蝶を何度も見かけました。オープンしてまだ数ヶ月の施設なのに、周りの自然溶け込んでいることに驚きました。時が経つとさらに良くなっていくのでしょう。

坂茂氏設計のヴィラに宿泊でき、美術館でアートを鑑賞し、レストランで広島・山口中心とする瀬戸内海の美味しい食材を堪能する。とても満足度の高い《SIMOSE Art Garden Villa》。次回はどのヴィラに泊まろうと早くも悩み中です!

SIMOSE Art Garden Villa https://artsimose.jp/villa/

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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