遥かなる「南極への旅」その4
贅沢な航海と自然の非日常と

猛暑に涼感のある記事を!
トラベルアクティビスト真里さんの「遥かなる 南極への旅 」の「その4」は、南極までの船旅と帰路について。乗船された「ル コマンダン シャルコー号」についても詳しく紹介されています。
これまでの旅はそれぞれ次のリンクから:「南極への旅その1」「南極への旅その2」「南極への旅その3

シャルコー号での航海の中で語らなければいけない重要なことの一つは、お食事。


2つのレストランがあり、9階のレストランはビュッフェスタイル。ハムやサラダのような定番メニューからパスタやハンバーガー、日替わりのエスニック風のメニューまで幅広いバリエーションで飽きがこないメニューを朝・昼・晩と提供しています。

そして、5階のメインレストランではコース料理が。
朝食にゆで卵をお願いすると、キャビアが載ってくるという豪華さ。もちろん、ワインはシャンパンなどアルコール類を含むドリンクもオールインクルーシブとなっています。

どちらのレストランもフランス料理界の巨匠アラン・デュカス監修とあって、毎食が楽しみでした。通常のお食事以外にも、夕食前のひと時にキャビアをたくさん振るまわれるイベント、エビやカニ・牡蠣などシーフードづくしのランチなど、ゲストが長い航海で飽きないような工夫がたくさん。「GUCCI」「イブ・サン・ローラン」など数多くのラグジュアリーブランドを有するアルテミスグループに所属するクルーズ会社ポナン所有のシャルコー号ならではのことです。

航海で一番心に残ったのは、「南極圏」に降り立ったこと。

航海9日目、南極半島に沿って南下を続けてきたシャルコー号が南極圏(南緯66度33分以内)に到達。私が降り立ったのは、南緯66度34分、西経60度15度。南極圏に入れるクルーズ船は他にはありません。砕氷船のシャルコー号だからこそです。南極圏突入を祝ってシャンパンの用意が。

数百メートル先にビルのようにそびえる棚氷の突端まで歩いて良いとのこと。1000年も2000年も、否、もっと長い間かけて成長してきて棚氷。このエリアの棚氷に足を踏み入れる人類は、私たちが初めてでしょう。各国の南極観測隊が来ているかもしれませんが、広大な南極大陸のこと、来ている可能性は高くありません。そんな貴重な経験をしていることを心して、一歩一歩を踏み締めて氷の上を歩きました。

南極半島を離れて、南米大陸へ戻る途中、北上。アイチョー諸島バリエントス島という島に上陸しました。

ここには、ジェンツーペンギン・アゴヒゲペンギンが今まで訪れた南極半島や周辺の諸島のどこよりもたくさんのペンギンがいます。ちょうど南極エリアに春が来て、恋の季節。オスは石ころを集めてこんもりした巣を作り、メスに見せて誘います。メスの目の前でお辞儀をして、メスもお辞儀してくれたらカップル成立です。まだ相手を探している個体がいる一方、すでに卵を温めているカップルもいます。巣作りの石を他の巣からちゃっかり盗んでくるものもいれば、斜面をせっせと往復して地道に巣作りに励むものもいます。ペンギンも人間みたいに人格ならぬ“鳥格”があるのだな、なんてことを考えてながらコロニーを眺めていると……。

突如、コロニーの上にミナミオオトウゾクカモメ1羽が現れました。翼を広げると3メートルにもなる大型のカモメです。卵を温めているペンギンたちの上に襲いかかりました。ペンギンたちはなんとしても卵を取られまいと威嚇します。威嚇のために上を向き、お腹の下の卵があらわになった瞬間・・・もう1羽のミナミオオトウゾクカモメが現れて、卵をさっと口に加えて、飛び去りました。残されたペンギンたちは呆然。2羽のミナミオオトオゾクカモメは少し離れたところで卵を食べ始めました。1羽目は囮で巣を攻撃し、隙をついてもう1羽が卵を取るという連携プレー。自然の厳しさを目の当たりにした瞬間でした。

ひたすらドレイク海峡を北上し、どんどん南極から離れていきます。もう氷山も見えません。なんだか悲しくて。寒いところはどちらかというと嫌いな私だったのに、毎朝、部屋のカーテンを開けると氷の世界が広がっているという“非日常”が“日常”になっていたこの2週間。その“日常”が終わり、素敵な夢から覚めたような気持ちです。名残惜しいです。

そして、帰りこそは「荒れ狂うドレイク海峡」を期待していたのに、晴れています!青空が見えています。波もなくて、外洋とは思えません。3回に南極に来ているいうゲストが「こんなこと奇跡だよ」と言っていましたが、荒れ狂う海も見たかったような、やはり経験したくないような。南米大陸最南端・ケープ岬へ。海からそそり立つ400m超の断崖絶壁。灯台守の家族が住んでい流のだそう。マゼラン海峡を進み、アルゼンチン最南端の街ウシュアイアに到着。16日間の南極への旅が終わりを迎えました。

日本に戻り、会う人会う人に「南極、どうだった?」「また行きたいと思う?」とたくさんの質問を受けます。一生に一度でいいから南極に行きたいと思っていた願いが叶いましたが、今回の旅が南極に行く最初で最後になってしまうのかしらと考えると寂しい気持ちがします。コウテイペンギンの灰色の可愛らしい赤ちゃんも見てみたいしなあと贅沢なことも考えてしまします。

ル コマンダン シャルコー号は、2024〜2025年のシーズンは、南極ではなく、北極を航海する予定になっているそう。「北極の方が、南極よりもっと多くの生き物が見られますよ」というクルーの言葉に好奇心がムクムクと湧いてきます。私の冒険はまだまだ続きます!

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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