オアフ島ホノルルで飛行機を乗り換えマウイ島上空に来ると、海の色が違っていることに気付きます。濃く、青く澄み渡った海は、生命の神秘を感じさせる色。「美しき“渓谷の島”マウイ島へ」後編では、海の魅力を知るおすすめのアクティビティとグルメ情報も併せて、よくばりにご紹介します。top 画像 撮影/宮澤拓 ©Taku Miyazawa
ホエールウォッチングは冬から春まで限定のお楽しみ
19世紀初頭、ハワイ王国の首都が置かれていたラハイナは捕鯨基地として栄えた街。マウイ島沖はホエールウォッチングのスポットとして世界的に知られ、12月から4月にかけてアラスカからザトウクジラが集まってきます。クジラたちの目的は出産と子育て。旅の途中でパートナーを見つけ、温かいハワイの海で出産、子育てをし、成長した子供を伴ってまたアラスカに戻っていくのです。
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2023年8月、ラハイナで起こった山火事の影響が心配されていましたが、その年の冬も変わらずクジラたちは姿を見せたそう。現在はラハイナ近隣のハーバーから、ホエールウォッチングのクルーズ船が出航しています。トップシーズンには海岸線を走るドライブウェイや、オーシャンフロントのホテルからその姿が見えることもあり、マウイの冬の海からは目が離せません。
ハワイの海の自然体系をそのまま再現した水族館
ハワイの海の不思議と魅力を詳しく知ることができるのが、カフルイ空港から車で約20分、ひょうたん型の島のくびれたあたりにある「Maui Ocean Center(マウイ・オーシャン・センター)」。海に直結したロケーションにあり、目の前の海から海水が引かれた水槽でウミガメ、マンタやサメ、色鮮やかな熱帯魚など1,000種類以上の海洋生物を飼育しています。ザトウクジラやアオウミガメの生態を学んだり、ウミガメの赤ちゃんが泳ぐプール、ウニ、ヒトデなどに触ることができるタッチプールも。
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圧巻は、海中のクジラの生態を3Dで紹介するシアターアトラクション。目の前に迫るクジラの姿と、ヒレで海面を叩きつけたり、豪快な潮吹きの音が全身を包み込み、思わずのけぞってしまうほどの迫力です。また、海のギャングとして恐れられているサメも生態系に必要な生物であることを学んでもらうため、同じ水槽に潜るプログラムがあります。ほかにも、海洋生物学者と出かけるシュノーケリングツアー、水槽の前で行うヨガ体験などをご用意。ハワイの海の神秘を知ると、その希少性にますます興味が湧くに違いありません。入園料は、大人(13歳以上)44.95ドル。
◎Maui Ocean Center(マウイ・オーシャン・センター)
https://mauioceancenter.com/
海を一望するツリーハウスでチョコレートの食べ比べ
ハワイは全米で唯一のカカオ生産地。「KUIA(クイア)」はハワイ産のカカオ豆から作るビーン・トゥ・バーの高級チョコレート。そのカカオファーム「Maui Kuia Estate(マウイ・クイア・エステート)」は島の西側の丘陵地にあり、カフルイ空港から車で約40分。20エーカーの広さに約4,000本のカカオツリーを有機栽培で育て、チョコレートに加工しています。ここでは農園の見学とともに、マウイの海を一望できるツリーハウスで、作り立てのチョコレートを味わえるファームツアーを実施しています。
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農園でカカオの花や収穫前のカカオを見学した後は、お待ちかねの試食タイム。農園で採れたカカオ豆から作られたチョコレートはカカオ含有量を変えて、ほかにもウガンダ産、アマゾン産から作られたもの、グアバ、マンゴーのフルーツ風味など、全部で9種類を食べ比べ。カカオポリフェノールには美肌、整腸、肝機能改善などのアンチエイジング効果があることが知られ、チョコレート好きでなくてもぜひとも体験してみたいツアーです。大人(13歳以上)85ドル。
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◎Maui Kuia Estate(マウイ・クイア・エステート)
https://mauichocolate.com/pages/farm-tour-and-tasting
ディナータイムはハワイのトップシェフが腕を振るうレストラン
多彩な自然が育む食も、島の魅力の一つ。ファインダイニングに事欠かないマウイ島で、ぜひとも出かけてみたいレストランが、西マウイきっての高級リゾート、カパルアのカパルア・リゾート内にある「Merriman’s Kapalua(メリマンズ・カパルア)」。オーナーシェフのピーター・メリマン氏は、ハワイでその名を知られたトップシェフの一人。オアフ、ハワイ、カウアイの各島にお店がありますが、ご本人は最近、マウイ島の環境と食材がお気に入りで、ここにいることが多いのだとか。つまり、シェフ直々に腕を振るう料理を食べられる確率が高いというわけです。
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料理が素晴らしいのはもちろん、サービスを担当するスタッフの食材や調理法、ワインに関する知識も群を抜いています。ファインダイニングでありながらフレンドリーなサービスが心地良く、旅の思い出に残るディナータイムになります。
◎Merriman’s Kapalua(メリマンズ・カパルア)
https://www.merrimanshawaii.com/kapalua/
来年こそ旅したいマウイ島は今、どうなっているの?
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マウイ島といえば、2023年8月にラハイナを襲った山火事を覚えている人も少なくないでしょう。災害から1年数カ月が過ぎた被災地はすでに災害ゴミの撤去と整地が終わっていて、復興のまっ最中。新たな歴史を刻む街に生まれ変わろうとする、勢いのようなものが感じられました。
マウイ観光局PRマーケティングディレクターのリアン・プレッチャーさんは、
「主要な観光地の一つが失われたことはとても残念ですが、ラハイナはマウイ島のほんの一部。“渓谷の島”のニックネームを持つこの島に広がる多彩な自然は、1日や2日では遊び尽くせません。西マウイのビーチリゾートで2日間くらい、ハレアカラがあるアップカントリーで2~3日過ごすのが私のおすすめです」と話してくれました。
最近は、ハワイの生態系を体験したり、植樹やビーチクリーンなど、SDG’sをテーマにしたツアーも人気なのだそう。次のハワイ旅はマウイ島へ。この島にしかない景色と体験で、まだ見ぬハワイの魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。
Text/永田さち子
協力/ハワイ州観光局
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ライター・編集者。医学雑誌、スキー雑誌の編集を経てフリーランスに。旅行書、雑誌を中心に旅、グルメ、料理、健康コラムなどを執筆。ハワイに関する著書に、『ハワイのいいものほしいもの』『おひとりハワイの遊び方』『ハワイを歩いて楽しむ本』(実業之日本社)、『50歳からのHawaiiひとり時間』(産業編集センター)ほかがある。旅行情報サイト『Risvel(リスヴェル)』にコラムを連載中。http://www.risvel.com/column_list.php?cnid=6