蘇ったパリ・ノートルダム大聖堂を時空を超えて体験する展覧会

11月6日に日本科学未来館(東京・お台場)で開幕した《パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅》をご紹介します。この展覧会は、2021年のドバイを皮切りにすでに世界11カ国・15都市で開催され、日本は12ヵ国目・16都市目となります。

2019年4月、世界遺産にも登録されているパリ・ノートルダム大聖堂で大規模な火災が起こり、木造で造られていた部分の3分の2が焼け落ちてしまったことは、世界に大きな衝撃を与えました。私も、火災前に何度も訪れていますが、外観や内部のステンドグラスの美しさには毎回感動しました。火災後は修復の進行状況が気になりパリに行くとノートルダムに足が向きましたが、その無惨な姿を見る度に心が沈みました。火災直後から世界中から多くの寄付が集まり、さまざまな分野の専門家の力が集結し、2024年11月末、再建工事が終了。12月から再び内部が一般公開されました。それを記念する式典をニュースなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか?

この展覧会の最大の特徴は「HistoPad(ヒストパッド)」というタブレット端末を来場者一人一人が持ち、ノートルダム大聖堂の過去と現在をタブレット上で自由に行き来をする体験ができるというもの。日本語、英語、フランス語、中国語など、全11ヶ国語に対応しており、日本語に関しては、通常版とやさしい日本語版がありますのでお子さんと一緒にこの展覧会を見に行くのもおすすめです。

HistoPadのカメラを起動して、「タイムポータル(時空の扉)」にかざし読み込むと、タイムトラベルの開始です。ノートルダム大聖堂の構想が始まった1160年頃のフランスに時空を移動してみましょう。今から約860年前、パリのシテ島。タブレット上の画面には、建立を指揮したモーリス・ド・シュリー司教をはじめ多くの聖職者や街の人々が大聖堂前の広場に集まっているのが見えます。人々は中世の服装を纏い、仕事道具などを持っており、当時のパリはこんな様子だったのかととても興味が沸きます。建築に携わった鍛治職人・石工職人・大工など名もなき職人たちがどのような道具を使って、どこから建築資材を集め、大聖堂を建てたのかなど、画面のさまざまな部分をタップすることにより詳細な説明で理解することができます。

宗教戦争やフランス革命など、ノートルダム大聖堂が歴史の舞台となった出来事へのタイムポータルもあります。ルーブル美術館に収蔵されている全長10メートルを超える「皇帝ナポレオン一世と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」は大変有名な絵画ですが、この戴冠式が行われたのは実はノートルダム大聖堂。この歴史的シーンの詳細な解説も、タイムポータルで時空を飛び越えて、見ることができます。

そして2019年の火災時の様子。その後の修復プランの決定、建築・美術などのどのような専門家がいたのかは中世の頃の職人の種類と比較するととても興味深いです。3Dグラフィックで、大聖堂の内部構造を分解したり角度を変えたりして観察できるのもタブレットのおかげ。有名な「西側のバラ窓」は大変美しいステンドグラスですが、現地で見ると距離があるので、細かいところを肉眼で見るのは少し難しいです。タブレットを使い手元で拡大して詳細に見ることができるのは嬉しいですね。

12世紀から現在まで時間を自由に行き来できること、大聖堂の内部や基礎構造を3Dグラフィックでさまざまな角度で詳細に見ることができる一方、鳥のように上空から俯瞰できるのは、1人1台タブレットを持っての展覧会だからこそ。「体験型の展覧会」という言葉がピッタリです。私はすっかり没入して鑑賞してしまい、あっという間に2時間以上が経ってしまいました。次回のパリ旅行の際にノートルダム大聖堂に立ち寄り、HistoPadで学んださまざまなことを確認してみようと思います。

パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅 https://notredame-ar.jp/

会期 2024年11月6日(水) ~ 2025年2月24日(月・休)

休館日 火曜日(ただし、2/11は開館)、年末年始(12/28~1/1)

会場 日本科学未来館 1階 企画展示ゾーンa


Text /トラベルアクティビスト真里

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世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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