1972年にフランスで発刊されたパリ生まれのレストランガイドブック『ゴ・エ・ミヨ』。単にレストランの料理を評価するだけでなく、「テロワール」という言葉で表現される「土地」や「地域性」にも着目しています。現在、世界17ヶ国で展開されていています。

2025年の日本版が3月18日に発刊となりました。今年は、昨年より30余店掲載店が増え、47都道府県 から563軒のレストラン・料理店が紹介されています。発刊を記念して掲載店のシェフ・ソムリエ・スタッフそして生産者等が一堂に会するガラ・パーティーが東京・丸の内のパレスホテルで行われました。各地から集まった750名以上の方々で会場は華やかな雰囲気。調理師学校で一緒だったシェフ、修行先が一緒だったシェフなど、料理の道に入ったばかりの頃からのシェフ仲間と久しぶりの再会を喜ぶ姿はまるで同窓会のようですね。

注目の《今年のシェフ賞》は東京・銀座の鮨店「青空(はるたか)」店主・高橋青空さん。ご出身の北海道で鮨の道に入られたのち、上京されて、名店「すきやばし次郎」で12年修行されました。33歳で「青空」として独立され、今日に至ります。「店のスタッフ・市場の方・生産者の方を代表していただいた賞だと思っています」と受賞の喜びのご挨拶をされていました。「青空」はかなりの人気店で、予約が難しく、私もまだ伺ったことがありません。高橋さん曰く「鮪に一番のこだわりがある」とのこと。ぜひ一度「青空」でこだわりの鮪を食べてみたいです。

ゴ・エ・ミヨは、また、シェフを支えるスタッフや生産者・職人にもの光を当てていることも他のレストランガイドブックと一線を画す特徴です。《ベストソムリエ賞》を受賞した伊藤寿彦さんは、一つのレストランに所属しているのではなく、“ワインディレクター”としていくつもの有名レストランのワインの品揃えの相談に乗っていらっしゃいます。その中には、私が定期的に通う富山県・東岩瀬にある日本料理「ふじ居」もあり、「ふじ居でいただくお料理に寄り添うワインペアリングは伊藤さんのアドバイスだったのね」と嬉しくなりました。「賞を預かったことで、さらに責任と自覚を持って進んでいく」との受賞のスピーチをされていました。

また岩手県花巻でホロホロ鳥を育てる石黒農場・石黒幸一郎さんは、“土地の風土や食材、育まれてきた文化を尊重しつつ、食材または料理を通じて独自の挑戦を試みている生産者や料理人”に贈られる《テロワール賞》を受賞されました。餌の配合を工夫し、環境に負担をかけない循環型の農場を目指しているとのこと。この数年は、鳥インフルエンザで困難が続いたこともあったそう。「多くのシェフが応援してくれました。幸せな生産者です」と語っておられました。

ことさら私が嬉しく感じたのは、輪島塗の塗師・赤木明登さんが、“土地が育んできた伝統文化を守り、挑戦を試み、次世代へつなぐ知識と技を磨き続ける職人または料理人”に贈られる《トラディション賞》を受賞されたこと。赤木さんは能登の「茶寮 杣径(そまみち)」のオーナーでもあり、北崎裕シェフが作る滋味深いお料理と赤木さんの美意識に溢れる素敵な宿に宿泊することを私はいつも楽しみにしていました。W LIFEでこの素敵なオーベルジュをご紹介した直後、能登半島地震が発生。建物は使用ができないほどダメージを受け、今は、同じ輪島市内で場所を移転して「海辺の杣径」という料理店として営業しています。復興はまだ途上という状況です。そんな中での受賞。「36年間、漆の仕事をしてきたけれど、賞をもらったのは初めて。再建に励みたい。心強いです。」と赤木さんは嬉しそうに語ってくださいました。
《明日のグランシェフ賞》を受賞した石川県「レスピラシオン」、《期待の若手シェフ賞》を受賞した「プリモ パッソ」、《イノベーション賞》を受賞した「MAZ」など、以前から注目していたたくさんのお店が受賞されました。旅に出るにはベストシーズン到来ですので、「ゴ・エ・ミヨ」掲載店を訪ねて、日本各地に出かけたいですね。
Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。