ワイン業界で最も権威のある資格を持つ専門家「マスター・オブ・ワイン」による、今こそ飲みたいドイツワイン」のイベントに参加してきました。
ヨーロッパ中央部に位置する13のドイツワインの産地。そのほとんどは、ドイツの南西部にあります。そこで造られる個性豊かなワインについてご紹介します。ワインのエチケットは、上の写真をご覧ください。文章中では、左からご紹介しています。

ドイツで最も重要な白ブドウ品種といえば、リースリング。ドイツワインのシグニチャーです。ブドウ畑約10万3,000haの約69%に白ブドウ品種が植えられています。
リースリングは、どんな土壌でもよく育ちます。貴腐菌は、夜に湿度が高く、日中は風が強いときに付くと言います。果皮は薄いけれども頑丈で、甘みが凝縮され、酸が高く、何十年も熟成させることができます。リースリングは土壌の種類に敏感で、スパークリングから、極辛口、甘口までと幅広いのですが、高い酸味と豊かなアロマ、独特の香りなど品種固有の特性を持ち合わせています。
生産地がファルツのブントザントシュタイン・リースリング・トロッケン 2023は、ダイレクトな果実味、滑らかな口当たり。エレガントで生き生きとした酸、魅力的でしっかりとしたボディを持つワインです。
モーゼルのヘレンベルク リースリング カビネット ファインヘルプ 2022は、ヴィヌム5つ星の醸造所です。酸、果実味、ミネラル感が一体となったジューシーな味わいで、樹齢80年の自根のぶどうの深みと余韻が素晴らしいです。

ドイツのスパークリングワイン「ゼクト」は、アペリティフはもちろん、クリーミーなリゾットと合わせても口の中をフレッシュしてくれ相性が良いです。2023年、スパークリングワインは実に2億6700万リットルがドイツで販売されました。
ブラン・ド・ブラン ゼクト ブリュット ナトゥーア 2017は、風味豊かで芳醇、旨みたっぷりのスパークリングワイン。
エストリッヒャー レンヒェン アルテ マイスター リースリング ゼクト エクストラ ブリュット 2021は、きめ細かな泡立ち、非常にエレガントで繊細な口当たりで、きりっとした酸が心地良く感じられます。

さて、赤ワインです。ヨーロッパでは2014年がピークで、その後は白ワインに移行している傾向がありますが、「赤は熟成させましょう」と紹介されることが多く「特別なグラスで、ウィンターシーズンに」などのイメージがついてしまっていると言います。またポイントが高いものはヘビーなものが多く、人はもっと軽めなものを求める傾向があり、白ワインへとトレンドが変化してきているそうです。
また赤ワインはサーブするときに、温度が高すぎるというオーストリアの大学の研究結果もあり、「20−20」ルールというのを取り入れて欲しいと紹介されました。冷蔵庫で冷やしてある白ワインは、冷やし過ぎなので、飲む20分前に冷蔵庫から出して。赤ワインは、サーブする前に20分だけ冷蔵庫に入れてください、というご家庭でのおすすめの飲み方のルールです。

クロイツベルク シュペートブルグンダー トロッケン 2022は、ドイツ産赤ワイン北限、アール地域。サクランボや赤い果実の溌剌とした味わいのワインです。
フュルスト トラディションシュペートブルグンダー トロッケン2022は、フュルストらしい、赤い果実、サワーチェリーのような香り、色調も明るく、酸もしっかりとしています。
またドイツではPIWI(カビ菌耐性品種)を推奨しています。化学殺虫剤の使用を2030年までに50%減らすことを目標にしているからです。育種目標としては、もはやカビ菌耐性だけではなく、害虫耐性、晩熟と遅い発芽、乾燥への耐性など、気候変動への対応も急務です。
アウフタクト ソーヴィニャーグリトロッケン2023は、Piwi品種(カビ菌耐性品種)。セイベル・ブラン×ツァーリンガーの交配。花のような香りにスパイス感を感じる、爽やかな辛口ワインです。
ゲヴュルツトラミーナー トロッケン350N.N. 2022は、ファルツのバイオダイナミック農法の第一人者の一人アンドレアス・シューマンが栽培・醸造しています。

PIWI品種、有機認証、バイオダイナミック認証など、ドイツのブドウ栽培のグリーンな未来に期待が高まります。テラスで気持ちが良い時期、ぜひドイツワインで乾杯してみたいですね。
Text / 酒・食・旅・文筆業 磯部らん

コミュニケーションやマナーに関するビジネス本を多数出版。とくに発展途上国 が好きで、アマゾン川でピラニア釣り、南インドにドーサを食べになど、好きなこ とをしに海外をひとり旅する。日本酒利き酒師。http://isoberan.com