今、注目の展覧会へ「藤本壮介の建築:原初・未来・ 森」

7月2日、森美術館(東京・六本木)で建築家・藤本壮介氏の初の大規模個展『藤本壮介の建築 原初 未来 森』が開幕しました。一足お先に内覧に行きましたのでご報告します。

「建築家・藤本壮介」と聞いても、ピンと来る人は少ないかもしれません。「大阪・関西万博の大屋根リングを設計した人だよ」と聞くと、「ああ、大屋根リングはわかる!」とイメージがすぐに思い浮かぶはず。

藤本氏は、東大工学部建築学科を卒業した後、そのまま「建築家」として独立。建築家は大学院に進学したり、著名な建築家の事務所で働いたりする中で徐々に世に出て・・・という経歴を辿る方が多いのですが、藤本氏はある意味「一匹狼」で建築をしてきた方。2000年青森県立美術館のコンペティションで2位になり、一気に注目が集まりました。現在では、東京・パリ・深圳にオフィスを持ち、個人住宅から大学・ホテル・複合施設などを国内外で様々なプロジェクト展開しています。top画像:2025年大阪・関西万博《大屋根リング》1:5模型(2025)

《思考の森》(2025)

藤本壮介の建築展

展覧会の会場内には100を超える藤本氏のこれまでのプロジェクトの試作モデルが展示され ています。大小様々な模型の間を縫うように進んで行き、足を止め、作品を見るのは、ま るで「建築の森」の中で遊んでいるかのような感覚になります。藤本氏が建築を考える上 で掲げる3つのコンセプトがあります。それは「ひらかれ かこわれ」「未分化」「たくさ んのたくさん」。色違いのピンが1つか2つ、場合によっては3つ、展覧会場の模型の作 品ラベルについています。この3色のピンは、3つのコンセプトのそれぞれを表してお り、その作品にはどれを取り入れているかを表現しています。

この3つのコンセプトの原点は、北海道のご出身である藤本氏が毎日のように遊んだ森は だそう。森は、木々が鬱蒼と生えていて、外の人々が住むエリアからすると閉じた空間に 見えますが、人やいきものは行き来ができます。“かこわれている”ようで“ひらかれて”い ます。そして、森では「こんな遊びもできる」「こんなふうに時間を過ごせる」と用途が 決まっていない「未分化」でもあります。そして、木の葉や木の幹などが無数に集まって いる「たくさんのたくさん」。そんな自然がいっぱいの生活が原点となっている藤本氏 は、東京大学入学時に住んだ杉並区ででも、くねくねとした道やごちゃごちゃとした木造 住宅など、北海道の森との共通点を見つけたといいます。

《思考の森》(2025、部分)/藤本壮介《ハンガリー音楽の家》(2021) ブダペストの模型
上下とも 藤本壮介《ハンガリー音楽の家》2021年 ブダペスト 撮影:イワン・バーン

私は、昨年の春、藤本氏の代表的な作品の一つであるコンサートホール「音楽家の家」(ハンガリー・ブタペスト)を旅の途中に訪ねました。ブタペストの中心部にあり、私が訪れた日はちょうど土曜日で、子供向けの音楽会が開催されていました。多くの家族連れで賑わっており、地元の人たちに馴染んだ建築となっていることを見て、とても嬉しい気持ちになりました。穴が開いたチーズのように外屋根に穴が開いており、もともと生えていた木々がその穴を突き抜けて伸びています。コンサートホールの建物の壁はガラスでできている部分が多く、外からも、そしてホールの内側からもそこにいる人や木々の様子が見えます。コンサートホールという建物ですから“閉じた空間”であるはずなのですが、外の自然や空間と一体化して存在する不思議さ、これこそ「ひらかれ かこわれ」だったのだと、今回の展覧会を見て、改めて納得しました。

2025年大阪・関西万博《大屋根リング》1:5模型(2025、部分)

藤本壮介の建築展

建築の展覧会は馴染みがない方も多いかと思います。大阪・関西万博の「大屋根リング」 の5分の1の模型が展示室にあり、その中に入ることもできます。

上からいずれも《思考の森》(2025、部分)/藤本壮介:上 《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》
中《白井 屋ホテル》下 《太宰府天満宮仮殿》 すべて模型

藤本壮介の建築展

《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》(神奈川県横浜市)、《直島パヴィリオン》(香川 県直島町)、《白井屋ホテル》(群馬県前橋市)、《太宰府天満宮仮殿》(福岡県太宰府 市)など、日本各地のランドマークになっている建物が藤本氏の設計だったと知る新しい 発見もあります。ぜひ会場に足を運んでいただきたいです。

《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》(2024年提案版)1:15模型(2025)

藤本壮介の建築:原初・未来・ 森
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/

会場: 森美術館 (六本木ヒルズ森タワー53階)
会期: 2025年7月2日(水)~ 2025年11月9日(日)


Text /トラベルアクティビスト真里

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世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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