2026年は「ルート66」創設100周年
ナットキング・コールの軽妙なジャズナンバーでも有名な、アメリカ横断国道66号線、通称「ルート66」。
イリノイ州シカゴからカリフォルニア州・サンタモニカまでの2,448マイル (3,940 km)を8州にわたって走るルート66は、アメリカ人のみならず世界中の旅人憧れの目的地。2026年は創設100周年ということもあり、沿線州では様々なイベントが催され早くも盛り上がりを見せています。
実は私の「バケットリスト(死ぬまでにやりたいこと)」のNo.1が、この「ルート66をバイクで走る」ことでした。
バイクの理由は、ただ空気を感じたいから。この夢をいつか・・と思いつつ幾年月。いつかいつかはもう来ない、体力的にやるのなら今でしょ、と心を決めたきっかけは6月のシカゴ出張でした。
出席する商談会終了後のツアーのひとつに「イリノイのルート66をバイクで走るツアー」を見つけ、参加申し込みボタンをポチッと押したその瞬間、目の前に長い一本道が広がりました。
「やっちまったな」
出発日の6月19日に向けてのカウントダウンが始まりました。

「ルート66」のスタートポイントはシカゴダウンタウンのど真ん中にある
汗と涙の準備期間3か月
私は過去にイリノイ州の二輪免許を取得していましたが、あまり乗る機会もなくペーパードライバーのまま帰国、その後更新できずに免許は失効していました。
そこで日本で二輪免許を取り直すことにし、4月13日に自動車学校入校。通えない週もあったものの5月11日に卒検に合格し、晴れて中型二輪と国際免許を取得しました。
さてここまでは順調。問題は「公道での経験のない私がいきなり大丈夫か?」という点。無理をして人の迷惑になることだけは絶対に避けたい。とはいえ参加者はみな旅行業界の人たちであり、取材が目的。本気のライダーじゃないし、ゆっくり行けばなんとかなるさ。何といってもこんな機会はもう二度とないのだから・・と腹をくくりました。

汗と涙の準備期間3か月
今回のツアーは、「ツィステッド・ロード(Twisted Road)」というバイクシェア・サービスの全面協力で行われました。一般のバイクオーナーが自分のバイクを時間貸しするサービスで、オーナーはちょっとした小遣い稼ぎができ、借り手は他社に比べて手軽に安く借りられるメリットがあります。
デメリットは、あくまで個人契約であるためコンディションの絶対保障がなく自己責任であること。利用者の“口コミ評価”のみが指標となるというしくみ。さすが、アメリカ。

「え、これ乗るの・・・」 (2005 Honda 750 Shadow Aerro)
日本では中型二輪免許で許されるのは400ccまでですが、国際免許では400kg(900ポンド)を超えない範囲ならOKということで、私にあてがわれたのは「2005 Honda 750 Shadow Aero」。他の選択肢は「ハーレー・ダビットソン」1100~1200ccのみ。
さすがにビビり、主催者に自分の経験を伝え「他の人の迷惑になるなら別のツアーに移るから」と相談したところ、「大丈夫だよ!」。レンタルバイクの責任者からも「君の免許でこのサイズのバイクに乗っても問題ないから」と。彼らが揃って背中を押すのだからきっとそんなに大変な旅程でもないのだろう。
詳しい旅程表が送られてきて血の気が引いたのは、出発1週間前のことでした・・・。

(その②につづく)
Text /長野 尚子

フリーライター、編集者。(株)リクルートの制作マネージャー&ディレクターを経て、早期退職。アメリカ(バークレー)へ単身“人生の武者修行”に出る。07年よりシカゴへ。シカゴのアート&音楽情報サイト「シカゴ侍(www.Chicagosamurai.com」編集長。四国徳島とシカゴの架け橋になるべく活動中。著書に『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。http://www.shokochicago.com/ 日本旅行作家協会会員。