軽井沢から未来の芸術を育む ― 脇田美術館「今をつくる手たち」展へ

脇田美術館の秋の企画展

軽井沢の白樺林に抱かれる脇田美術館は、自然と芸術が響き合う場として知られています。設立者の画家・脇田和(わきた・かず)さんは、人と自然のつながりを描き続けたと同時に、「若い芸術家たちが交流し、自由に表現できる場を残したい」という願いを抱いていました。その思いを受け継ぎ、美術館は次世代の創造を支える活動を続けています。

入口を入ると、白い壁に創作的な作品が並んでいます

この秋の企画展は、その精神を体現するものです。タイトルは「今をつくる手たち 世代、国、自然と人・・・『境界』を超えて出会う場所」。9月7日に美術館の中庭で開催されたオープニングレセプションに出席しました。

美しい広々とした中庭でカンパイ!11名の作家の方が参加しました

軽井沢町長のご挨拶に続き、出品作家15名のうち11名が登壇し、それぞれが自らの作品に込めた思いを語りました。初秋のやわらかな風が吹き抜けるなか、作家たちの言葉と自然のざわめきが重なり合い、境界を超えて響き合うような時間となりました。

吉野貴将さん(金沢美術工芸大学准教授)は、漆芸という伝統工芸を継承し、現代的な新たな見せ方を模索しているそう
永岡郁美さんの主なモチーフは 動物や鳥など「命あるもの」。伝統的な日本画の技法・素材を使っています
末永敏明さんの作品は、自然、鉱物、生物・植物などのモチーフに色彩の豊かさが印象的

会場には、抽象から具象まで、多彩な表現が並びます。静かな力を持つ作品から力強いエネルギーを放つ作品まで、それぞれが「いまを生きる感覚」を映し出しています。脇田和さんが生涯問い続けた「人と自然の対話」というテーマも、新しい世代のアーティストによって新鮮なかたちで継承されていると感じられました。

さらに今回試みとして、展示作品の販売にも取り組んでいます。作品を購入することは、若手作家を直接応援することにつながり、美術館を通じた新しい創作支援の形を拓いていきます。お気に入りの作品と出会った方は、ぜひ美術館へ問い合わせていただければと思います。購入は、その作品が未来へつながる力になります。

2階に展示されている脇田和さんの作品も鑑賞することができます

脇田美術館は、芸術家の挑戦を支え、訪れる人とともに育っていく場を目指しています。この秋、軽井沢の自然の中で「今をつくる手たち」に出会い、境界を超えるアートの力を感じてみませんか。

アート散策スポットがいっぱいの軽井

軽井沢は、東京駅から北陸新幹線で最短約1時間。日帰りでも十分に芸術を満喫できる立地です。脇田美術館を訪れる際には、ぜひ周辺の美術館もあわせて巡ってみてください。

軽井沢千住博美術館
日本画家・千住博の代表作《ウォーターフォール》をはじめ、自然光を活かした展示空間で大作を鑑賞できます。光と空間の美を体感できる美術館です。
軽井沢安東美術館
藤田嗣治(レオナール・フジタ)の作品に特化した美術館。初期から晩年にいたる多様な作品を一堂に楽しむことができます。
黒柳徹子ミュージアム
2025年7月に軽井沢で開館。黒柳徹子さんの舞台衣装やコレクションが展示され、個性的で華やかな世界観に触れられる新スポットです。

自然とアートが心地よく溶け合う軽井沢だからこそ、短い滞在でも充実した文化の旅が叶います。

「今をつくる手たち 世代、国、自然と人・・・『境界』を超えてである場所」 概要
会期:2025年9月7日(日)~11月4日(火)
休館日:会期中なし
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
会場:脇田美術館(長野県北佐久郡軽井沢町)
入館料(税込):一般 1,000円 / 高校・大学生 700円 /中学生以下 無料
詳しくは:https://www.wakita-museum.com/event/event/autumn_2025/index.html

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、現在は脳科学ベンチャーで、脳の可能性を最大化するためのサービス開発(【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/)などを担当。認知症の知識や予防の技術を学び「認知症予防専門士」と、発酵の原理・歴史・効果などを学び「発酵マイスター」の資格を取得。脳腸相関に基づき、脳活と腸活による健康寿命の延伸をミッションとして活動中。

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