「六本木クロッシング」は、森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として、2004年以来、共同キュレーション形式で開催してきたシリーズ展となります。第8回目となる今回は、森美術館のキュレーターに加えて国際的に活躍するアジアのゲストキュレーター2名を迎え、「時間」をテーマに、国籍を問わず日本で活動する、もしくは日本にルーツがあり海外で活動するアーティスト全21組のアート展です。
本展の副題である「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」は、時間の貴さと儚さをテーマにしており、作品には、さまざまな時間の交差をとおして、日本のアートを多角的に見ることができます。この副題の言葉は、インドネシアを代表する現代詩人の詩の一節に着想を得たものです。

展示風景:「六本木クロッシング 2025 展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」森美術館(東京)2025-2026 年
この作品のアーティストは、裁縫が得意だった祖母や母が遺した古布と道具や、骨董市などで出会った衣類を用いた刺繍作品を制作しています。床には、全国から募った7千個に及ぶ糸巻きが敷き詰められています。私の実家にも、洋裁が得意だった母の糸巻きがたくさん残っており、もう私の母は手仕事ができなくなってしまいましたので、縫糸を見ながら、母がまだ元気だった頃のことも思い出し、今回のテーマである「時間」の移ろいを自分の中で色々と感じました。

桑田卓郎の圧倒的な造形美を放つ色彩鮮やかな大型の陶芸作品
古来受け継がれてきた日本の陶芸の技術を大胆に引用しながら新たな表現の可能性を模索しています。写真の作品のゴールドとプラチナの部分は、陶器の素地に含まれる小石が焼成の際に高温で弾けて表面に現れる現象である「石はぜ」を意識的に表現していると言います。古代から続く陶芸が、現代においてどんな新しい表現になり得るのかを探求し続けている作家です。

和田礼治郎のガラス板に閉じ込められたブランデーが窓から見える地平線とリンクしている作品
私が訪れた日は、曇って地平線がぼやけていましたが、快晴な日は、ブランデーと地平線が繋がって見えるように設置されていると言います。また夜は、夜景とのコントラストも素敵だそうで、昼と夜とで作品の違いも味わってもらいたいと担当キュレーターの方からのお話がありました。風景とのコラボですので、時間によって作品の見え方が変わって見えるというのも面白いと感じました。

暗闇の中に入ると、オブジェクトの先端から白いふんわりとしたシャボン玉が生み出され、水が張った水面を滑るように移動していきます。シャボン玉が弾けると中に閉じ込められていた霧が煙のようにふんわりと余韻を残してゆっくりと消えていきます。A Iが記述したオペレーティングシステムによって機能している大型のインスタレーション「水中の月」は、静寂の中、ゆっくりとした時間が流れていくのを感じます。
アートに触れながら「時間」について考えてもらいたいというテーマですので、ゆっくりとした時間を年末年始の時期に、森美術館で過ごしてみてはいかがでしょうか。
六本木クロッシング 概要
会期:2025年12月3日(水)~2026年3月29日(日)※会期中無休
開館時間 10:00~22:00 ※火曜日のみ17:00まで
※ただし、12月8日(月)は17:00まで、12月30日(火)は22:00まで *最終入館は閉館時間の30分前まで
会場 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
料金
[平日]
一般:2,000円(1,800円)
学生(高校・大学生):1,400円(1,300円)
中学生以下:無料
シニア(65歳以上):1,700円(1,500円)
[土・日・休日]
一般:2,200円(2,000円)
学生(高校・大学生):1,500円(1,400円)
中学生以下:無料
シニア(65歳以上):1,900円(1,700円)
※( )内はオンラインチケットの料金
公式HP https://www.mori.art.museum/jp/
Text /酒・食・旅・文筆業 磯部らん

コミュニケーションやマナーに関するビジネス本を多数出版。とくに発展途上国が好きで、アマゾン川でピラニア釣り、南インドにドーサを食べになど、好きなことをしに海外をひとり旅する。日本酒利き酒師。http://isoberan.com