ここでしか会うことのできない幸福の画家ルノワール~生誕185年展覧会

山王美術館(大阪市中央区)で「生誕185年 ルノワール展」が開幕しました。柔らかで幸福に満ちた温かみのある色彩で世界中に多くのファンを持つフランス近代絵画の巨匠、ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841~1919)。その生誕185年を記念した展覧会で、山王美術館所蔵するルノワールの絵画51点中12点が初展示という大変贅沢な展覧会です。開幕に先駆けて行われたプレス内覧会の様子をお伝えします。

美術館外観からもアートがほとばしる

 会場は2022年9月に大阪市中央区のJR京橋駅近くに移転した、川の畔にある山王美術館。ホテルモントレ株式会社の創立者のコレクションが展示されています。

近代の西洋絵画、日本洋画、日本画、陶磁器、彫刻など多岐にわたるコレクションを誇る山王美術館ですが、コレクション当初からこんなにルノワール作品があったわけではなく、約50年以上の時間をかけ、少しずつ増やし、現在では52点もの作品を所蔵。本展ではその全てを見ることができます。しかも、その内12点が初公開というのです!(開幕時は11点、3月19日から12点目≪絵を描くクロード・ルノワール)(1906年)を公開される予定です)

 展覧会のみどころをご紹介していきましょう。

ピエール=オーギュスト・ルノワール  ≪噴水による浴女≫ 1914年(左)と≪座るルーマニアの若い女性≫1915年(右) 山王美術館蔵

 ルノワールと聞いて思い浮かぶのが裸婦像です。今回展覧会ポスターにも用いられた≪噴水による浴女≫(1914年)も初公開作品のひとつです。緑の庭に座る裸婦が豊かな髪を右手でおさえ、左手は流れる水を受け止める様子が描かれています。「自然のなかの裸婦」という伝統的テーマを探究し続けたルノワール。裸婦の肌は丹念に塗り重ねられた筆により透明感に満ちています。

この作品は、岐阜県美術館蔵の≪泉≫(1910年ころ)や岡山県の大原美術館蔵≪泉による女≫(1914年)と同じテーマですが、その2作品が膝から上の構図であるのに対して当館の≪噴水による浴女≫は全身が描かれていることが特徴ですと担当学芸員の亀井里香さんがみどころのひとつとして教えてくださいました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール  ≪果物をもった横たわる裸婦≫1888年頃(左)、≪水浴みの後≫1890年頃(右)

また、今回の展示が全5章にわたってルノワールの人生、創作の軌跡をたどる形になっていることもみどころです。

 印象派時代の女性像から、「印象主義の行き詰まり」を感じ古典へと回帰したアングル様式時代、色彩に白を混ぜ真珠色の輝きをもたせた文字通りの真珠色の時代、骨折を機に慢性関節リウマチを発症後、南仏に転地療養し「自然のなかの裸婦」という伝統的なテーマに取り組み始めた時代、そして晩年に開花する豊潤な色彩による作品群へと様々に変化するテーマや筆致を年代ごとに追うことができます。

これまで他館への貸し出しもなく、また初公開が12点もある今回の山王美術館の展覧会では、初めて見るルノワール作品もきっと多いのではないでしょうか。まさに「ここでしか会うことができない」芸術作品の数々です。

ルノワールの人生も一緒にたどりながら鑑賞できる展覧会は、ルノワール通にもルノワール初心者の方にもいろんな楽しみ方ができるのではないでしょうか。

ピエール=オーギュスト・ルノワール  <座るルーマニアの若い女性≫1915年(左)、 ≪裸婦と花の習作≫1915年頃(右)

 ここで、ちょっと珍しい展示をご紹介します。

 ルノワールの死後、アトリエには約720点もの絵画や素描が残されており、中には花や風景、裸婦像など複数の主題で構成されたカンヴァスも多くふくまれていたといいます。こうした作品はのちに遺族の了承のもとに切り分けられ、ルノワールの署名スタンプを添えた上で個々の作品として販売されたそうです。そのため、この展示のように一枚のカンヴァスに花や裸婦の習作が残る、ルノワールが描いたままの状態を見られることはとても貴重な機会になることでしょう。

1階にはミュージアムショップとルノワールの彫刻作品も  ピエール・オーギュスト=ルノワール ≪勝利の大ヴィーナス≫1915~1916

 

 「おそらくルノワールは悲しい絵を一度も描かなかった唯一の偉大な画家でしょう。」フランスの小説家オクターヴ・ミルボーが1913年に出版されたルノワールの画集に寄せた言葉です。

生きることは描くことであり、描くことは悦びであったルノワール。

自身の病など困難な日々もありながら、絵画は「愛すべきもの」「愉しく、美しいもの」でなければならないと、晩年に語っていたルノワール。

 ミュージアムショップでは寛ぎながら展覧会の絵はがきやチケットフォルダーなどが選べます。ルノワールの彫刻作品の展示もありますよ。

 光と色彩、生きる歓びにあふれたルノワールの世界を存分にお楽しみください。

                       

生誕185年 ルノワール展
https://www.hotelmonterey.co.jp/sannomuseum/exhibition/202603.html

会期:2026年3月1日(日)~7月31日(金) 

(注:初公開12点のうち≪絵を描くクロード・ルノワール≫(1906年)は3月19日からの展示となります)
会場:山王美術館(大阪市中央区城見 2丁目2番27号)
観覧料金:一般1,300円、大学・高校生800円、中学生以下500円(保護者同伴に限り2名まで無料)
休館日:火曜日、水曜日(4月29日、5月5日、5月6日は開館)

お問い合わせ:06-6942-1117

Text /倉松知さと 

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関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。

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