1日1組4名までの至福のテーブル 能登のオーベルジュを訪ねて

暖かくなり、過ごしやすい季節になりました。新型コロナの蔓延については全く気が抜けない状況ではありますが、密にならずに滞在できる宿を紹介していきたいと思います。

今回ご紹介するのは昨年(2020年)11月に能登にオープンしたイタリア料理のオーベルジュ【Villa della pace ヴィラ・デラ・パーチェ】です。オーナーシェフの平田明珠さんは、大学卒業後サラリーマンを経て、料理の世界に入った異色のバックグラウンドをお持ちです。能登の気候や食材に惹かれて東京から2016年に移住。七尾市中心部に近いところでレストランをされていましたが、理想を追い求め、昨年さらに街から離れた海水浴場跡地に宿泊施設を併設したオーベルジュとしてリニューアルオープンをされました。

私が訪問したのは、オープンして間もない12月の初め。雪が降るほど寒くなる前でしたが、蟹や白子など冬の食材が始まっているとのこと。美味しい食事を楽しみに、飛行機に乗り、能登空港に降り立ちました。空港でレンタカーをして、ドライブすること40分ほどでオーベルジュに到着しました。

穏やかな七尾湾を臨む場所に、レストラン棟とシェフのご自宅を兼ねたゲストの宿泊棟があります。宿泊は、なんと1日1組、4名まで!レストランのみの利用もできますが、輪島市からは車で小一時間、七尾市からも20分ほどかかりますので、ここまで来たら泊まりたいですよね。

目の前に広がる海は波もなく鏡のようで、湖かと思うほど。冬の日本海のイメージで荒い海を想像していましたが、七尾湾の入り口に防波堤のように能登島があるために、湾内は本当に穏やか。鴨が遊び、東に日の出、西に日没を眺めることができる雄大な場所にVilla della paceはあります。平田シェフが惚れ込んで、レストランをわざわざ移しただけのことがあります。


シェフから「早めに着いたら、海沿いを少し散歩するといいですよ。歩きやすい靴で来てくださいね」と言われていたので、海岸沿いの小道をしばし散策。しばらく歩くと、唐島神社(女神)という神社がありました。夏の終わりには対岸の日面神社(男神)と海上で逢瀬を楽しむという伝承のお祭りがあるそうです。ロマンチックですね。

寒鰤のカルパッチョ
香箱蟹の焼きリゾット

この日のお料理は、蕎麦がきからスタート。甘エビ・フグ・イカ・白子・寒鰤・香箱蟹・猪…能登の美味しい食材がモダンイタリアンのスタイルで供されました。例えば、寒鰤はどぶろくでマリネしたカルパッチョに、香箱蟹は焼きリゾットにしソテーした外子を載せて蟹からとったスープを注いでいただきます。トップ画像の地元・田鶴浜で獲れた仔猪は、炭火焼きに猪の出汁と山椒のソースと天然のクレソン添えて。美味しいものが少しずつ、見た目も美しく、お食事をしていて心も身体も満たされます。野菜も地元の農家のオーガニックのものを中心に。そしてワインは、イタリアの自然派のものが一番多いそう。能登は、暖流と寒流がぶつかるところにあたるため海の幸が豊富なことは知られていますが、山の幸も、りんごもみかんも採れたり、春の山菜も北日本のものと西日本のものと両方が取れたりと、本当に豊かな場所だとか。

器やカトラリーも能登地方の作家さんを中心に選び抜いたものばかり。私が年に一つ二つと買い揃えている輪島塗の赤木明登氏や桐本泰一氏のものもありました。食材が書かれているメニューの裏には、「食材提供」「器・カトラリー」「空間演出」と農家や作家さんのお名前が書かれていて、「次回の旅は、こちらに宿泊した後、作家さんを訪ねて廻る旅がしたいなあ…」と早くも次の旅行のプランが膨らみます。

宿泊のお部屋のリネンやお布団も、オーガニックコットンなど天然素材のものばかり。とても居心地がいいです。「オーベルジュを始めるにあたって、衣・住の全てを食と関連づけて見えるようになった」と平田シェフ。「食材はオーガニックを心がけているので、お部屋にあるものも自然とその延長線上になります」とのこと。実は、寝具があまりにも寝心地が良かったので、帰宅後、平田シェフに販売店を紹介していただいて、買ってしまいました!

翌日の朝食は、サラダや自家製アンチョビが乗った半熟茹で卵・30種類以上の野菜入ったミネストローネ。パンは、地元の【月とピエロ】というパン屋さんに焼いてもらっているそう。平田シェフが豆を挽いて入れてくれるコーヒーも美味しい。

チェックアウトする時は、素晴らしい景色と美味しいお料理のこの場所を離れがたく、後ろ髪を引かれる思いで、平田シェフご夫妻とお別れ。何しろ1日1組ですから、早めの予約をしなければ。季節を変えて、またお伺いします!

帰り道は、金沢までドライブ。途中「千里浜なぎさドライブウェイ」を走りました。ここは、日本で唯一、一般の車が走ることができる砂浜なのです。全長8キロ。途中で波打ち際に車を停めて景色を見たり、対向車が来る時はドキドキしたり。七尾湾の静かな水面とは違った、打ち寄せる荒い波をみて、能登半島の別の一面を堪能しました。

Villa della pace   http://villadellapace-nanao.com/

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