駅近をぶらり歩けば古い町家や神社仏閣が広がる別世界。今冬もならまち・きたまちエリアで特別御朱印や拝観、名産のいちごフェアが始まっています!
先日、今年の冬の奈良まち歩きキャンペーン「路地ぶら ならまち・きたまち 2025」の内覧会があり参加させていただきました。雪がちらつく今シーズン一番の冷え込みでしたが、奈良市観光協会さんをはじめ、ご協力される神社やお寺、お店の方々の熱い想いが伝わる、とても楽しい時間でした。
「ならまち」とは、近鉄奈良駅の南側、JR奈良駅の東側に広がる元興寺(がんごうじ)の旧境内を中心とした古い町並みエリアです。その歴史は古く、元興寺や現在修復中の興福寺の門前町だった奈良時代に始まり、近世以降は商業地としても発展。一方、「きたまち」は近鉄奈良駅の北に広がる東大寺や正倉院、奈良女子大学などがあるエリアで、どちらも今も古い町家や神社仏閣が残り、駅から近く、ぶらりと歩くにはとても良いところです。
そして、昨年に引き続き、今年も冬の奈良を満喫する「路地ぶら ならまち・きたまち2025」が始まりました。(令和7年1月4日(土)~2月28日(金)まで)
今年は「特別御朱印」に美しい切り絵やカラフルな御朱印でも知られる「崇道天皇社(すどうてんのうしゃ)」が初参加されています。
崇道天皇社は人皇五十一代 平城(へいぜい)天皇により大同元年(806年)に創建され、 人皇五十代 桓武天皇の皇弟 早良(さわら)親王(追号 崇道天皇)を鎮め祀る神社です。
宮司の藤井秀紀さんのご案内で、今回の特別御朱印についてお話がありました。
「この灯籠、よく見るとてっぺんや周りにカタツムリがいるのが分かりますか?このカタツムリのモチーフが今回の特別御朱印に描かれています。」
灯籠は江戸時代文政年間の作。雨乞いの祈りを込めてのカタツムリではないかとのことでした。とても珍しいですよね!
こちらのご祭神である早良親王(崇道天皇)についても「桓武天皇の弟で、元々は東大寺に修行に入られ高僧にまでなった方。奈良から京への遷都反対派たちの政争に巻き込まれて無実の罪で憤死したため怨霊が・・・などといわゆる「御霊信仰」で怖いイメージを持つ方もいらっしゃいますが、これは疑いをかけた側が自分たちのしてきたことを悔いて御霊(みたま)を鎮めようとしただけ。決して早良親王(崇道天皇)が悪いことをなさったのではないことを知っていただきたいですね。」とのご説明がありました。
また、早良親王(崇道天皇)の甥に当たり、この社を創建した平城天皇が諸国の国分寺に「春秋に崇道天皇のために金剛般若経を唱えよ」とお命じになったのが今の「お彼岸」の起源という興味深いお話もしてくださいました。
また、普段は入ることのできないご本殿も見せていただきました。元和9(1623)年に春日若宮社を移建した、現存する「春日移し」では最古の建物で、黒い漆塗りと白い胡粉による剣と三つ巴のモチーフが特徴的。
檜皮葺きの屋根は令和3年の近隣火災による一部延焼の後、クラウドファンディングにより美しく修復され、防火設備も新たに設置されたそうです。
いにしえの人々から大切にされてきた文化財。次の世代へ大切に受け継ぎたいですね。
崇道天皇社を後にして、少し北へ行くと、かつて元興寺(がんごうじ)の奥之院であった浄土宗の「興善寺(こうぜんじ)」に着きました。
興善寺では、ご住職の森田康友さんと今回の「路地ぶら ならまち・きたまち2025」のポスター写真である興善寺のご本尊「阿弥陀如来立像」(重要文化財)などを撮影したフォトグラファーの佐々木香輔さんが出迎えて下さいました。
期間中の土日の午後には、こちらの興善寺を含むならまち・きたまちエリア内の全17ヶ寺(1月:阿弥陀寺(悲田院)、西光院、聖光寺、小塔院、法徳寺、西福寺、浄國院、浄福寺、2月:興善寺、高林寺、金躰寺、称念寺、誕生寺、徳融寺、空海寺、五劫院、念聲寺)で、なら・観光ボランティアの会「朱雀(すざく)」の案内による拝観や御朱印の授与が行われるそうです。予約不要でガイド付きの拝観は嬉しいですよね。
お寺によって開催日が異なりますのでキャンペーンHPをご確認ください。
興善寺ご住職の森田さんからは、昭和37(1962)年、快慶作ともいわれるご本尊の体内から源空(法然上人)の消息(文書)などが見つかったという何とも奇跡的な「昭和の大発見」のお話や、2月前半に公開予定の釈迦の入滅を描く『仏涅槃図』(寛永21(1644)年)は竹坊浄屋という奈良の絵師によるというお話などをうかがいました。
フォトグラファーの佐々木さんからは「今回、温かく、浄土から浮かび上がるようなご本尊の写真を撮れたと思います。」とポスターになったご本尊の撮影話をうかがうことが出来ました。
奈良の仏像を多数撮られる佐々木さんに奈良の仏像の魅力をうかがうと「京都は主に平安以降のものが中心ですが、奈良には飛鳥、白鳳時代の600年代からの仏像も多く見られます。幅広く色んな時代の仏像に会える、また乾漆や木彫りなど様々な技法を見ることが出来るのも奈良ならではの魅力だと思います。」とのことでした。
(フォトグラファー佐々木香輔さんの最新作は、今秋の東京国立博物館の特別展『運慶』(9月9~11月30日)のポスターなどで見られるそうです。)
最後は冬のグルメフェアとして開催中の「奈良いちごまみれ!」に参加中のならまちの大和茶カフェ「茶樂茶 SARASA(さらさ)」さんへ。
奈良産のいちご「あすかルビー」や「古都華」などを使った「奈良いちごまみれ!」には奈良市内の計11のお店が参加中です。
大和茶を楽しめるお店 茶樂茶 SARASAさんでは、奈良の旬のいちごと希少な抹茶「やまとみどり」で抹茶フォンデュを楽しめます。
また、色鮮やかなハーブティーは、かぶせ茶と厳選されたハーブのブレンドティー。五感を楽しませてくれる大和茶のおもてなしにホッと一息つくことが出来ました。
駆け足で巡った内覧会でしたが、ならまち・きたまちでの「5寺社での期間限定特別御朱印」「17ヶ寺のガイド付き拝観&御朱印授与」「奈良いちごまみれ!」がとても魅力的だということを実感しました!!
この他にも期間中、春日大社境内の飛火野にて、1月25,26を除く土日祝日の午前10時から奈良の冬の風物詩、ナチュラルホルンによる「冬の鹿寄せ」が行われるそうです。(雨天決行、荒天時中止)
盛りだくさんの「路地ぶら ならまち・きたまち2025」。
冬の奈良でぜひ、路地ぶら、まち歩きを楽しんでください。
■路地ぶら ならまち・きたまち 2025
期間:令和7(2025)年1月4(土)~2月28(金)
場所:奈良市ならまち、きたまちエリアほか
URL:https://narashikanko.or.jp/fuyunara/
崇道天皇社 https://sudoutennousha.jimdofree.com/
興善寺 https://www.facebook.com/Kouzenji.Nara/
フォトグラファー 佐々木香輔氏 https://www.kyosukesasaki.com/
大和茶カフェ 茶樂茶 SARASA https://sarasa.jp/
Text /倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。