江戸時代の豪華な雛人形も!龍馬の刀も! 全方位見応えありの春の博物館を楽しもう

京都らしい公家文化を映した豪華な雛飾りから坂本龍馬の名刀まで充実した京都国立博物館の春の展示をご紹介します。

多彩な雛飾りで華やかな雰囲気の会場

京都国立博物館(東山区)では今、充実した春の展示が人々の目を楽しませてくれています。

そのひとつが、関西風の雛飾り展示ブースです。

この歴史ある雛人形は男雛の高さが50センチもある立派な享保雛です。その豪華さゆえに「大内」雛、つまり「御所」雛とも呼ばれた18世紀のお雛様です。

「あれ?男雛女雛の位置が逆では?」と思う方も多いと思いますが、日本では元々はこの飾り方でした。

京都では古式にのっとった飾り方をします

近代になり、宮中で西洋の儀式が導入され男女の立ち位置が左右逆に変わり、一説では昭和天皇の即位式の写真にならって東京の人形業界が男雛女雛だけを今の形(左右逆)に置き換えたことで関東式の並べ方が全国に広まったともいわれています。

ですが、元々日本は「天子南面」という古式ゆかしい有職故実に則った飾り方をしていました。それは天皇陛下が南を向いた時に太陽が昇る側、つまり陛下の左手側が上位とする考え方。関東式の飾り方をすると、男雛に差し込んだ太刀のさやがお隣の女雛に向いてちょっと無粋。だからやっぱり着物姿ならば元々の有職故実に則った飾り方が理にかなっているのです。

しかし、今や関東式の飾り方が広まってしまい、雛壇にお人形を飾る時、より位の高い「左大臣」や「左近の桜」は今でも向かって「右側」に飾るのに、なぜか男雛女雛だけは向かって右に女雛を飾るというチグハグでおかしな飾り方に変わってしまいました。

関西でも京都以外の飾り付けはそんな関東式の飾り方になりつつありますが、京都では今もこの飾り方を大切に受け継いでいます。(地図で向かって右なのに左京区なのもこのためで、この感覚は京都の人には自然なことなのかも知れません。)

地方でも享保雛など歴史あるお雛様はこの有職故実に則った飾り方をするところも多く見受けられますね。
そんな気付きのある展示をぜひ楽しんでほしいと思いました。

 このほか、関西風の御殿雛飾りも必見です。江戸の雛人形は武家の雛飾りですが、京都や大坂(上方)では「御殿飾り」、つまり内裏雛が住まう御殿を最上段に置いた段飾りが一般的でした。また江戸風ではまず見ることのない「おくどさん」(台所)や調理道具なども飾ります。

お雛様ひとつをとっても、江戸と京では憧れの対象も異なったのですね。

名刀再臨―時代を超える優品たちの特別ブース

京都国立博物館ではこの度、重要文化財の刀剣3口を含む貴重な文化財の寄贈と寄託を受けました。この3口の刀は日本刀の主要産地である山城、備前、備中を代表する名工の作品ですが、いずれも半世紀近く一般の目に触れることがなかった名品ばかりです。

国民の宝であるこれらの文化財を「名刀再臨」と題して展示替えをしながら特別公開中です。

太刀 銘備前国長船住義景は2月24日までの展示

「太刀 銘国安」は1月26日までの展示で既に終了。

また、写真の「太刀 銘備前国長船住義景」は2月24日までの展示です。

「太刀 銘備中以下切」は2月26日~3月23日までの展示となります。

特集展示として「新時代の山城鍛冶―三品派と堀川派」を3月23日まで同時に見ることができます。

慶長年間(1596~1615)以降に作られた「新刀」。山城(京)鍛冶の双璧をなす三品派と堀川派の名品が並んでいます。

龍馬の最期を見届けた刀 「銘 吉行(坂本龍馬所用)」

中でも、三品派の流れをくむ陸奥守吉行が手掛けた「坂本龍馬所用の刀」は2018年の特別展以来の展示でとても貴重な機会となっています。

この刀は土佐の坂本家で代々伝わる宝で、龍馬が「国難に立ち向かう時に先祖伝来の宝を分け与えてほしい」と兄の権平に頼み、のちに土佐を訪れた西郷隆盛に兄が託し、西郷から中岡慎太郎を経て龍馬へと手渡された刀といわれています。

喜んだ龍馬は「いつも腰に差しています、兄にもらったと自慢しています」と兄宛の手紙に感謝の意を伝えました。

そして、この刀はあの龍馬暗殺の近江屋事件の時も龍馬の傍らにありました・・・・・・が、刀は抜けず、さやで応戦した龍馬。この刀自身もどれほど忸怩たる思いをしたのだろうと目の前にしているとそんな想いも込み上げてきました。

この刀には後日譚がありました。

実はこの刀、「若干、陸奥守吉行の作風と異なるのではないか」といわれていたのですが、平成27(2015)年に新資料の発見があり、後に北海道へ渡り住んだ龍馬の子孫が釧路の大火に遭った際に変形し、後にその部分を研ぎ直したことが判明。当時の京都国立博物館学芸部上席研究員だった宮川禎一氏によって吉行の作風である刃文の跡も確認され、この刀がまさに龍馬暗殺の時に腰に差していた刀で、後に上記のような経緯で研ぎ直されたと断定されました。

さらに令和3(2021)年には研ぎ直す前の刀の押型も見つかるなど、まだまだ新発見、新研究が楽しみな龍馬の刀。

またとない機会ですので、ぜひ、この春、その目で見てほしいものです。

夕日に映える京都国立博物館(明治古都館)

 京都国立博物館ではこの春の展示の後、4月19日(土)からは「日本、美のるつぼー異文化交流の軌跡-」展が待ち構えています。大阪・関西万博開催記念の特別展でこちらも楽しみですね。またその際はこちらのサイトでお知らせします。お楽しみに。

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特別公開 名刀再臨―時代を超えた優品たち―

会期 2025年1月2日(木)~3月23日(日)

特集展示 雛まつりと人形

会期 2025年2月15日(土)~3月23日(日)

会場 京都国立博物館 平成知新館
住所 京都府京都市東山区茶屋町527
電話 075-525-2473
開館時間 09:30~17:00(金は~20:00) (入場は閉館の30分前まで)
休館日 2月25日(2月24日は開館)
観覧料 一般 700円 / 大学生 350円 / 高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方 無料
アクセス 京阪電車七条駅徒歩7分

URL http://www.kyohaku.go.jp

★期間中 展示替えあり 

Text /倉松知さと 

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関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。

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