仏教・神道美術100%!時代を超えた祈りの結晶~奈良博で「超 国宝」展はじまる

開館130年を記念して奈良国立博物館で仏教・神道美術の極みが集まるまたとない特別展が始まりました。プレス向け内覧会の様子をお届けします。

 明治28(1895)年の開館以来、お寺や神社の文化財の価値や魅力を守り伝えてきた奈良国立博物館、通称奈良博(ナラハク)は、今年4月29日に開館130年を迎えます。それを記念して初の本格的な国宝展を企画、その名も奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝―祈りのかがやきー」。

展覧会の名前についた「超」。これはまさに「超(super、飛び抜けた)」という意味もありながら、かつ、「時代を超えて遺されてきた国の宝や人々の祈り」という意味も込められているそうです。

 奈良博が長年培ってきた仏教・神道美術という強みを活かした展覧会で、日本文化の根幹を成す仏教・神道の国宝を集めたこの展覧会はまさに本道の国宝展。

先人達が仏や神の美術品に込めた祈りの結晶ともいえる「かがやき」を過去から未来へと継承していきたい、そんな想いもこめた展覧会タイトルということも心に留めながら館内を歩くことを心がけました。


№1 国宝「観音菩薩立像(百済観音)」飛鳥時代(7世紀)奈良 法隆寺(通期展示)

 会場に入った途端、漆黒の背景にまるでお燈明のようにたたずむ仏様が目に飛び込みます。細く立ちのぼるような長身、僅かに微笑んだお顔、頭の後ろの光背はまるで火焔のよう。

 思わず手を合わせてしまうほどの圧倒的な存在感を放つのは、法隆寺の国宝として名高い観音菩薩立像、いわゆる「百済観音」です。

№1 国宝「観音菩薩立像(百済観音)」飛鳥時代(7世紀)奈良 法隆寺(通期展示)

 飛鳥彫刻を代表する2メートルを超えるこの仏像は、江戸時代は虚空蔵菩薩と呼ばれており、「百済観音」の呼び名は実は明治以降だそうです。

 まさかこんな超有名な国宝の百済観音像をガラスケース無しで、しかも360度から拝むことが出来るとは。出だしからいきなり奈良博の意気込みを感じました。

№1 国宝「観音菩薩立像(百済観音)」飛鳥時代(7世紀)奈良 法隆寺(通期展示)

特にぶらりと垂れ下がる左腕、瓶をつまむ指先や竹を模した光背の支柱などが間近で見ることが出来て感激しました。滅多に見ることのできない角度は大変貴重です。せっかくなので全方向からじっくり鑑賞してみてください。

 平安時代の超有名仏師・運慶の若き日の作品も全方向から鑑賞することができました。

№80 国宝 大日如来座像 運慶作 平安時代 安元2年(1176) 奈良 円成寺(通期展示)

 この大日如来像は、銘文から運慶20代の作と判明しており、腕の角度や腕と胸の間にある絶妙な空間などが見どころです。この後、写実的な表現と力強さを強調した鎌倉新様式を完成させていく若き運慶の感性がほとばしる作品です。

№73-1,2 国宝 鉄宝塔および五瓶舎利容器 鎌倉時代 弘安七年(1284)奈良・西大寺 

 高い技術力、超絶技巧に魅せられたのは、奈良の西大寺が所蔵する鉄宝塔および五瓶舎利容器です。この緻密な宝塔はなんと鉄の鍛造、つまり鉄を叩いて伸ばす技法で作られているのです。叡尊上人によって弘安7年に造立されたもので、藤原宗安が制作を担いました。

また、鉄の材料は平安時代末期の武将・木曽義仲の武具を鋳つぶしたものとも伝わっています。この鉄塔の中に納められた舎利容器、全くキズのない純度の高い水晶玉はこの時代でも類を見ない最高クラスのものだそうです。

№100 国宝 七支刀 古墳時代(4世紀) 奈良 石上神宮(通期展示)

神々の至宝も見逃せません。

今回、注目度の高い七支刀は、左右から両面が展示されていました。書かれた文字もライトが当たり見付けやすい心遣いも。

 それにしても一本の刀から互い違いに左右にニョキニョキ枝刃が伸びる異形の剣である七支刀。剣に書かれた文字から「刀剣を造るのによい日とよい時刻を選んで造った」という祈りを受け取りました。銘文の解読は現在進行形。今後が楽しみです。

 前期展示最後の部屋に入った瞬間、祈りの部屋であるかのような神聖な空間に展覧会とは全く別の雰囲気を感じました。

天井も壁も真っ白な広々とした空間に一体の仏様。 京都 宝菩提院願徳寺の国宝 菩薩半跏像です。

№78 国宝 菩薩半跏像 平安時代(8世紀)京都 宝菩提院願徳寺(通期展示、後期は展示場所を移動)

 ここまで展示を美術品としてつい鑑賞していた私は、この部屋に入った瞬間、祈りの対象である仏様、神様を目の前にしていたのだと改めて感じるとともに、急に心が安らぎ、心が洗われたような気がしました。

 今、世界中、日本中で自然災害や紛争、物価高、食料問題など色んな問題が表出している中、この仏像を前にして心が落ち着いたことがとても有難く感じました。

 きっといにしえの人々も様々な困難に直面しながら、それでも神や仏に祈り、こうして乗り越えてきたのではないでしょうか。展覧会を通して祈りのかがやきを私も受け取り、そして次の時代へと受け継ぐ一人となれたらと思いました。

 この素敵な空間に、後期(5月20日(火)~6月15日(日))にはあの中宮寺の国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音)が登場するそうですよ。

特設ショップも充実しています

  1階の特設ショップもぜひ立ち寄ってみて下さい。特に「七支刀」グッズが充実しています。すみっコぐらしとのコラボ商品や撮影スポットもありますよ。(一部、早くも品切れもあるようです)

 展覧会後期(5月20日(火)~6月15日(日))は、藤原道長が納めた経筒(奈良 金峯神社)や最澄の唯一の直筆手紙、また、展覧会のメインビジュアルのひとつにもなっている奈良 中宮寺の菩薩半跏像(伝如意輪観音)も展示されます。こちらも楽しみですね!

 もし許すならば、何度も通ってこの超贅沢な国宝展を満喫して下さい。

(※ 記者内覧会に参加し、特別に許可をいただき撮影しています)

                         

奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」

展覧会公式サイト:https://oh-kokuho2025.jp

会場:奈良国立博物館 東・西新館(奈良市登大路町50番地)
会期:2025年4月19日(土)~6月15日(日)※前期・後期の途中で一部展示替えあり
▷前期 4月19日(土)~5月18日(日) 
▷後期 5月20日(火)~6月15日(日)

休館日:月曜日と5月7日(水) ※ただし4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館
開館時間:午前9時30分~午後5時 入館は閉館の30分前まで
観覧料:一般2200円/高大生1500円/中学生以下無料

Text /倉松知さと 

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関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。

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