”美のるつぼ”京都に美が一挙集結! 海を越えて世界と出会った日本の美 

今、京都国立博物館では特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」を開催中。事前に行われたプレス向け内覧会の様子をお届けします。

  東山七条の京都国立博物館で大阪・関西万博開催記念 特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」が開催中です。

 これは大阪・関西万博の開催を記念して開かれるもので、世界各国の人々が関西に集まる今、ぜひ京都にも立ち寄って日本の美が辿ってきた道のりに触れてもらいたいと企画されました。時代もジャンルも様々な贅沢なこの企画は、13人もの京博の研究員さんたちがそれぞれテーマを深掘りして実現したそうです。

 先日行われたプレス向け内覧会では特別な許可を得て撮影することができました。

京都国立博物館 館長 松本伸之さん、学芸部 列品管理室長 永島明子さん、公式キャラクターのトラりんによるフォトセッション

 まず、展覧会のタイトルにある「るつぼ」とは何ぞや。

改めて調べてみると「坩堝(るつぼ)」とは、金属などを高熱で溶かすための耐熱容器のことで、そこから転じて「異なるものが融合すること」の比喩として使われています。

 島国ニッポンには海を越えて様々な往来があり、異なる文化が溶け合って新たな文化、美術が生み出されてきました。

 本展覧会は、こうした「日本と世界の交流」が生んだ、弥生、古墳時代から明治期までの国宝19件、重要文化財53件を含む200件の文化財を一堂に集めて日本美術における異文化交流の軌跡を辿るものです。

「世界に見られた日本美術」、「世界に見せたかった日本美術」そして「世界と出会った日本の美術」と大きく3つに分けて楽しむことができます。

 国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 (通期展示)

 やはり注目されるのはこの作品でしょう。いわゆる「琳派」の祖である俵屋宗達の代表作、国宝「風神雷神図屏風」です。4年ぶりの公開で今回の展覧会の顔にもなっています。今では教科書などに掲載され、誰もが知る作品ですが、よく知られるようになったのは、実は明治時代も後半になってからのことなのです。

この作品にも世界との交流が秘められています。

 明治日本が国際社会にデビューしたてのころ、海外で人気があったのは決して日本国内で評価の高い高尚な美術品ではなく、浮世絵や廃刀令、洋装のため無用となった刀装具や印籠など雑貨や日用品、消耗品のようなものばかりでした。

 そんな中、西欧で人気のあった尾形光琳に目を付けた明治政府は、「光琳が人気だったら、その元祖は俵屋宗達ですよ、そして光琳の後に続くには酒井抱一で、これらをひと連なりとして「琳派」と呼ぶのですよ」というふうに、世界に向けて「日本美術とは何か」をプレゼンテーションする中で「琳派」の定義が生まれたのでした。

 こうした「琳派」に関する歴史的な流れへの理解を深めるために、「世界に見せたかった日本美術」という位置づけでこの屏風は展示されています。

重要文化財 突線鈕五式銅鐸 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 弥生時代1~3世紀 東京国立博物館蔵 (通期展示)、重要美術品 埴輪 鍬を担ぐ男子 伝群馬県太田市脇屋町出土 古墳時代6世紀 京都国立博物館所蔵(通期展示)

 この他、日本が歴史のある文明国であることを示す作品として、埴輪や銅鐸なども明治33年(1900)のパリ万博の際、紹介されました。体系的な美術史の提示こそが近代国家としての国威を示すことになると考えたからでした。

確かに「日本らしさ」について日本の中にずっといるとあまり考えないものかも知れません。その点、世界と交流し、異文化に触れることで「日本とはなにか?日本らしさとは?」と考えるきっかけになったという話は個人レベルでもよくある話です。 

本展覧会では、様々な時代に色んな国と交流することで、憧れからその模倣をしたり、模倣したけれども全然違うものになったり、それがまた愛おしかったり・・・・・・日本が真似たものが遠く海外へ渡り高く評価され、時の要人が所有したり、そうした交流の足跡が感じられる美術品、文化財が散りばめられています。

東アジアとの交流、大航海時代キリスト教文化との交流などなど、こんなに多角的に日本と海外との交流をたどれる展覧会はなかなかありません。そしてなんといっても時代やジャンルの幅の広さ、国宝19件、重要文化財53件を含む200件の展示作品は担当者も「これだけの作品が集まることはなかなかありません」と太鼓判を押すほどです。

ぜひ、その目で見て、感じてほしいものです。

 期間中、一部展示替えがあります。

後期には雪舟の作品も登場します。(国宝「天橋立図」の展示は6月10日~15日)

また、北斎の浮世絵は、後期は異なるバージョンがお目見えするそうなので楽しみですね!

何が来るのか、お目当ての作品がいつ展示されるのか、展覧会の公式HPなどでご確認の上何度も足を運んでみてください。

  館内のミュージアムショップも充実しています。ポスターのメインビジュアルとなった俵屋宗達の「風神雷神図屏風」と葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を合わせたデザインはこの展覧会でしか手に入らない貴重なアイテムです。

 埴輪のぬいぐるみや豊臣秀吉が着ていた陣羽織を大胆にシャツやバッグにしたもの、一澤信三郎帆布による北斎のトートバッグもとても素敵でした。すみっコぐらしとコラボしたグッズもありましたよ。

 図録も堅い解説文だけでなく、青い文字で学芸員さんたちの心の声のような、しかし豊富な豆知識満載の愉快なつぶやきがとても面白く、購入してじっくりと読むとさらに展覧会への理解が深まること間違いなしと思いました。

                                             

大阪・関西万博開催記念 特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

展覧会公式サイト:https://rutsubo2025.jp/

会場:京都国立博物館 平成知新館(京都市東山区茶屋町527)
会期:2025年4月19日(土)~6月15日(日)
前期展示:4月19日(土)~5月18日(日)
後期展示:5月20日(火)~6月15日(日)
※会期中、一部の作品はそれ以外にも展示替あり

休館日:月曜日 ただし5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館
開館時間:9時から17時30分、金曜日は20時まで(入館は各閉館の30分前まで)

観覧料:一般2,000円 大学生1,200円 高校生700円 中学生以下無料(要証明)

問い合わせ:075-525-2473(テレホンサービス)

Text /倉松知さと 

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関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。

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