大阪・関西万博で屈指の人気を博したイタリア館の名品が再び展示される特別展「天空のアトラス イタリア館の至宝」が10月25日(土)から大阪市立美術館(大阪市天王寺区)で始まりました。 開幕に先立って行われたプレス内覧会に参加してきました。

7、8時間待ちが常という状況でも、日本初公開の超一流の展示内容に「本物を見せてくれた」「本気のイタリア」と賞賛され、人々を魅了したイタリア館。AIやデジタル展示をする国が多い中「リアル」に注力した展示で、「人の手で作り上げてきたものに誇りを持とう」というイタリア館のメッセージは人々の心を鷲掴みにしました。
その国宝級の美術品が万博閉会後も引き続き見られるとあって、特別展の発表直後から大騒ぎになりました。

この特別展は、日本とイタリアの国交160周年を記念し大阪・関西万博のレガシーを継承する目的のほかにもうひとつ大切な意味がありました。
それは、2025大阪・関西万博 イタリア政府代表のマリオ・ヴァッターニさんのメッセージによると「我が国の至宝の数々を万博の枠を超え、より多くの日本の皆様に、おそらくは初めてご覧いただくというまたとない機会」として、また「万博会期中、イタリア館を温かく情熱的に迎えてくださった大阪の皆様をはじめ、日本の方々への感謝の意味」があるということです。
ヴァッターニさんをはじめイタリア館関係者の熱い想い、ご厚意あっての特別展なのですね。
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会場に足を踏み入れると、イタリア館で上映されていたのと同じ映像が!
そして、その先には万博同様『ファルネーゼのアトラス 』がガラスケースに入ることなく360度どこからでも鑑賞できるように展示されていました。
イタリア館のシンボル的存在だった『ファルネーゼのアトラス』とは貴族のファルネーゼ家がルネサンス期に収集したコレクションのひとつで、ギリシャ神話の最高神ゼウスらとの戦いに敗れ、永遠に天空を支える罰を科された巨神アトラスの大理石彫刻で重さは2トンもあるそうです。

新たに大阪市立科学館の専門家による解説パネルも設けられ理解を深める助けになりました。アトラスが背負うのは地球ではなく天球儀。地上から見上げた星空ではなく、宇宙を外から見た視点で描かれているそうです。描かれている星座の位置は実際の配置とほぼ一致していて古代の天文学知識にも驚かされます。
このほか、ルネサンス期の画家でラファエロの師匠であるペルジーノの代表作『正義の旗』(1496年)は万博の時よりも見やすく設置され、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチの素描と文書『アトランティコ手稿』(2点、1478年ごろと1480~82年ごろ)は、「水の都大阪」にちなんだものをと関係者が新たに選んで展示、さらに天正遣欧少年使節のひとり、伊東マンショの肖像画(複製)も会期中に追加で展示されることになったと内覧会で発表がありました。

このような展覧会がなぜ実現したのでしょうか?
大阪・関西万博イタリア館の文化教育担当のロッセッラ・メネガッツォさん(ミラノ大学 東アジア美術史 准教授)にお話をうかがうと、連日たくさんの方が長蛇の列を成して見に来て下さるのでなんとかもう少し日本で展示をできたらいいのにと、政府代表のマリオ・ヴァッターニさんと最初は本当に軽く半ば冗談で話していたのが段々本当に動き出し、本国の文化大臣に掛け合ったところ大臣も快くサポートをして下さりこうして実現につながったとか。「これは本当に奇跡ですね!」と仰っていました。その分、事務作業は山積みのようです。本当に決まったのは万博閉幕の約1ヶ月前の9月だったそうで、ギリギリまでイタリア政府の皆さんが頑張って下さっていたのですね。
一方、受け入れ側の大阪市立美術館の内藤栄館長にもうかがったところ、「確か、最初にオファーをいただいたのが7月下旬で、偶然特別室の半分が空いていたこともあり、やりましょう!ということになりました。」と大阪側の皆さんも急遽、短期間で柔軟な対応をされたことが分かりました。
美術展は普通、数年前から計画し、様々な許可を取ったり保険をかけたりと膨大な手続きが必要なので、今回の出来事は本当にあり得ないことが起きた、本当に奇跡だと思います。
でも、これはイタリア政府の皆さんや大阪市立美術館の皆さんはもちろんですが、やはりあの猛暑の中、7時間、8時間並んでイタリア館を見に行った人々の“熱意”がみんなの心を動かした部分も大きいのではないでしょうか?だからこんな奇跡が起きたのではないでしょうか?

こうしたストーリーを知ると、展覧会出口の謝意を表したパネルがとても印象的に残りました。

万博同様、イタリアの雑貨や本などの特設ショップも併設されています。中にはミャクミャクグッズも!万博イタリア館に行けた人も行けなかった人も、この展覧会を通して様々な追体験ができること間違いなしでしょう。

なんと、1階にアトラスの顔ハメパネルもありました!この設置場所はチケット不要のエリアなので色んな方が楽しめたらいいですね。
オンラインチケット(日時指定予約)は発売からわずか2日間で売り切れ現在は販売休止となっていますが、大阪市立美術館の内藤栄館長は「私どもとしては1人でも多くの人に来てもらいたいと思っています。ただし安全面を考えると人数を調整せざるを得ません。当日券の販売などについては主催者と協議の上、今後、ホームページなどで発信していく予定です。」とのことです。
チケット販売再開情報など観覧を希望する方は是非こまめに公式ホームページや公式X(旧Twitter)を確認してみて下さい。ひとりでも多くの方に観覧チャンスが訪れますように。
*本展は現在、オンラインチケット(日時指定予約)の全日程分が完売したため、チケット販売が休止中であり、当日券も販売されてません。(チケットを購入して日時指定ができなかった方や日時指定済みでチケット未購入の方は入場可能)。販売再開など今後の対応は、随時、下記の大阪市立美術館ホームページと展覧会公式Xでのお知らせとなります。
公式サイト https://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/expo/
展覧会公式X https://x.com/italia_expo_ten
特別展「天空のアトラス イタリア館の至宝」
会期:2025年10月25日(土)~2026年1月12日(月・祝)
会場:大阪市立美術館
住所:大阪市天王寺区茶臼山町1-82
開館時間:9:30~17:00 ※入館は16:30まで 休館日:月(祝日の場合は開館して翌平日)、12月29日~1月2日
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1500円 / 小・中学生 500円
取材協力/日欧商事 https://www.jetlc.co.jp/
Text /倉松知さと

関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。