食欲の秋、芸術の秋、それらが一度に叶う和菓子の世界。この秋も京都で素敵な和菓子の世界を楽しんできました。

先月、10月半ばに開催された6人の個性豊かな作り手による和菓子の展覧会『菓子展 EP.1(エピソード1)―想(sou)―』は、烏丸丸太町にほど近い日本茶専門店YUGENの貸しスペースにて開催されましたが、そのお知らせはインスタグラムで発信され、口コミで広がるというこれまでにない形でのアプローチでした。
また、参加する菓子職人さん(というべきか、アーティストというべきか)はベテランさんから若い方まで幅広く、組合や所属の垣根も越え自由に声を掛けて参加交渉し、さらに普段活動する地域も京都、大阪、兵庫と3府県にまたがるという、全く新しい感覚の和菓子展となりました。

上段左 『陰翳』 西田浩明(菓子庵絹屋)作、大納言小豆と備中白小豆の羊羹で陰翳を、柚で微かな光を表現。
上段右 『花摘み歌』 名主川千恵(菓子屋のな)作、焼き皮、梨餡、桂花陳酒で表現。
中段左 『白妙』 高家啓太(塩芳軒)作、絹のように柔らかな羽二重生地でバニラ風味の餡を包む。
中段右 『秋恵み』 元島真弥(千本玉壽軒)作、こなしに栗餡のきんとんをのせ、真空調理で素材の味をいかした栗と枝豆を添えて。
下段左 『ういごころ』 一方隅冴(くくむ)作、レモンの皮を練り込んだ餡に百合根餡をまぶしたきんとん、錦玉、金箔をのせて。
下段右『春愁ふ』 松下壮太郎(本まつばや)作、外郎(山椒)、備中白小豆粒餡、桜、大納言鹿の子、胡麻と檸檬は花言葉を添えて。
茶道のお菓子には使わないような材料も今回はチャレンジしてみたり、最新技術を取り入れてみたり。展示として見て楽しく、そして味わって美味しくそれぞれの世界観へ誘う個性豊かな和菓子たち。これらの主菓子は詰め合わせとして販売もされていて、家でも楽しむことが出来ました。
展覧会は無料で、インスタグラムを見て遠くは首都圏から駆けつけた方もいらっしゃいました。会場はシンプルで、それが実に素敵で、敢えてライトは点けず窓から入る自然光のみでの展示もユニークで、時間とともに光の差す方向も強さも変化する中、菓子の表現の幅が広がる面白さがありました。また、作り手と観客が近く、互いに直に触れあえるまたとない機会にもなりました。

畳の部屋では、もう一品展示がありました。
上段左 『to you』 松下壮太郎 作
上段右 『いにしえに「想い」を馳せて』 一方隅冴 作
中段左 『結』 高家啓太 作
中段右 『月を想う~竹取物語~』 元島真弥 作
下段左 『殯(もがり)』 名主川千恵 作
下段右 『Earth Born 5』 西田浩明 作
この展覧会はインスタグラムで発信中。ぜひそちらもご覧下さい。
次回『菓子展EP.2』を期待したいですね。


同じ日に、JR京都駅前にある東本願寺のお東さん広場でBBW(ベルギービールウィークエンド)というイベントが行われていて、その中で京都開催ならではの特別イベントとして、京菓子とのペアリングを楽しむコーナーがありました。
京菓子協同組合青年部の13店が出店し、個性豊かなベルギービールそれぞれにどんな和菓子が合うかをおすすめする表を参考に、皆さん、ビールを片手に京菓子を買い求めていらっしゃいました。
中には「フルーティーなビールに和菓子が結構合うことが分かった」という方も。ちょうど栗の季節でもあり、栗の主菓子と合わせる方もいらっしゃいました。塩っ気のある和菓子もビールに合うそうですよ!

迎春企画の京菓子 花びら餅の詰め合わせ
京菓子協同組合青年部では、ただいま迎春企画としてお正月の花びら餅の詰め合わせ予約を受付中です。
平安殿、かぎ甚、鎰良光、かま八老舗、亀屋重久、甘春堂、祇園鳴海屋、千本玉壽軒、船屋秋月の9店の花びら餅を食べ比べできるという京菓子ファンにはたまらない企画です。商品の発送は12月30日限定で賞味期限は2026年1月4日まで。
新春に京菓子店が手がける特別な花びら餅の食べ比べ、いかがですか?

上記の千本玉壽軒さんといえば、先日、仁和寺で行われた将棋のタイトル戦「第38期竜王戦七番勝負第3局」で、また藤井聡太竜王と挑戦者の佐々木勇気八段双方から休憩時間のおやつに選ばれていましたね。厳しい勝負の合間のひととき、京の秋を感じてもらえたことでしょう。
深まりゆく秋。そして来る初冬。
ぜひ京都で和菓子を五感で楽しみに来てください。
・『菓子展EP.1』 https://www.instagram.com/kashiten_ep1/
・BBW 京菓子×ベルギービール ペアリング体験 https://belgianbeerweekend.jp/kyoto/food/sweets
・京菓子協同組合青年部 迎春 京の花びら餅食べ比べ 詰め合わせ
Text /倉松知さと

関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。