北野天満宮の師走の行事といえば献茶祭。その協賛席である絵馬堂での菓匠会の展示はこの時期のお楽しみ。12月1日に開催された献茶祭にうかがいました。今冬の展示をご覧下さい。
京菓子の伝統を守るために結成された菓匠会。その始まりは江戸時代の上菓子仲間という由緒ある集まりです。今年のテーマは「暮れる」。さて、どんな京菓子が登場するのでしょうか。

こちらは亀屋良長さん。夕暮れ時から闇夜の時間、そして夜が明けるという時の流れを美しく表現されました。
色んな角度から見るとさらに面白く、また、お皿の表面の気泡がいい感じで底面の夕焼けのキラキラ感を表して「技あり!」でした。竹炭を使ったという夜の闇も一色ではなくグラデーションが表現されていて黒の表現だけでもうっとりしてしまいました。

同じく夕暮れ時の色合いを表現されたのが二條若狭屋さんでした。
こちらは、上から覗くとあら不思議!夕暮れ時独特のあのマジックアワーのようなブルーからレッドへの美しい色彩の変化が現れるではありませんか!
3つの丸、それぞれ美しいグラデーションがあり、また見る角度によって変化もありました。同じ夕暮れ時でも色んな表現がありますね。




「暮れる」というテーマで連想するのは夕暮れ時、黄昏時など一日が無事終わり、ホッとする瞬間だけではありません。薄暗くなった街には明かりが点り人々が楽しい宵の時間を過ごし始める、やがて無事夜を迎え、そして新しい朝を迎える・・・そんな表現をする方や、一年が無事に終わる年の暮れ、まさに今の季節を諺や京都の年末の風物詩で表現されたり、またそうして迎えた新しい年に思いを馳せる方もいて・・・。
本当に色んな見立てや表現があって面白いなと今回もとても楽しませていただきました。

京菓子を堪能した後、ご本殿にお参りに向かう際、三光門をくぐりました。三つの光とは日、月、星のことだそうですが、星だけが見つかりません。
それは、かつての御所から北野の方向を見ると、この門の真上に北極星が輝いたと伝えられていて、天空の星をいただくことで完成するのだそうです。北野さんではこの門を「星欠けの三光門」と呼び、七不思議のひとつとされているそうです。
三光門をくぐり、振り返ると向かい合う2羽のウサギが見えます。その真ん中には三日月が。
そういえば、三日月が顔を出すのは夕方暮れ時、日没直後の西の低い空。
「ちょうど、今日の京菓子のテーマ「暮れる」時間帯だなぁ。」などと思いを馳せながら、お参りをして帰りました。

帰りに上七軒へ向かう西門を通ると、名だたる京菓子のお店の名前が書かれた提灯が並んでいました。半萬燈祭ならではの今だけの景色。
皆さんも提灯に書かれた色んなお名前を探しにいらしてみませんか?
Text /倉松知さと

関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、京都新聞などでも執筆中。
主に京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。最新活動は京菓子・山水會25周年記念展覧会トークイベント司会。