自治体のアンテナショップと聞くと、まず名産品の物販ショップを想像しがち。しかし、徳島県が2018年2月に渋谷にオープンした情報発信・交流拠点「ターンテーブル」は、徳島県を前面に押し出さずして“まけまけいっぱいの徳島”を味わえるともっぱらのウワサ。(“まけまけ”とは徳島弁で「あふれてしまうくらいの」という意味)
幼馴染のいる場所=故郷を、東京に作る
「ターンテーブルのキーワードは“セッション”。セッションしつつ繋がって常に新しいものを生み出していく徳島の文化を東京や世界中の人に伝えていきたいと思っているんです」と、運営会社の株式会社ターンテーブル、渡辺トオル社長。「徳島からは藍染めやLEDなど世界に誇れる技術が生まれているのに、それを独り占めしたり自慢したりしない。提供する側に回って「みなさん一緒に作りましょう」というのが徳島の文化、つまりセッションの文化なんです」
自身も数年前にある偶然の出会いがもとで徳島県の山あいの町、神山町にサテライトオフィスを構え、数か月に一度は徳島に“帰省”する半移住体験者。「友人のお宅のコタツに親しい人たちがワイワイと集まって鍋を囲み、ジビエや酒を楽しんで朝まで語り合った時間がターンテーブルの原点になっているんです」 知らない土地なのに幼なじみができてしまう故郷の感覚、それをターンテーブルで再現したかったのだそう。
「映画の食を体験する会」で徳島のソウルフードに舌鼓
「ターンテーブル」の人気の秘密は、集う人たちの熱いセッションを後押しするユニークなイベントにあります。たとえば3月29日に行われた「徳島の食イベント」は、4月公開の徳島を舞台とした映画「波乗りオフィスへようこそ」に登場する食を再現して楽しもうという企画。映画はもとより、サテライトオフィス、徳島、食、田舎暮らし、移住・・・など、いろんなキーワードで集まった人たちの、素敵なセッションの場になっていました。
奇しくもこの映画に込められたメッセージもまさに「人と人とのつながり」であり、その重要なアイテムが食。現地から届けられた海の幸、山の幸で、映画に登場する食の数々が再現されました。
渡辺社長の狙いどおり、私自身もこの夜、懐かしい友人との再会をも果たしたうえ初対面の方々ともいくつかのキーワードで話が弾んでセッションを楽しみました。
徳島県民からすると空間があまりにもおしゃれすぎて面はゆさもありますが、逆にとればここは「都会人たちの田舎ノスタルジー」の表現の場なのかもしれません。徳島を全面に出さずに食や文化のクオリティーで勝負して口コミ効果を狙うという戦略は、だからこそ正解のような気がします。
「地方の課題をターンテーブルの上において陳列している」(渡辺氏)、そんな新しいタイプの地方の情報発信基地、皆さんも是非一度のぞいてみてはいかがでしょう?
「Turn Table」(ターンテーブル)
1階は徳島の厳選された特産物を販売する「マルシェ」とBar「バル」、2階はレストラン、3~5階には様々なタイプの宿泊施設がある。アクセスは、京王井の頭線 神泉駅より徒歩3分、JR渋谷駅よりマークシティ経由で徒歩13分。
住所:〒150-0045 東京都渋谷区神泉町10-3
電話:レストラン: 03-3461-7722 ホステル: 03-3461-7733
https://www.facebook.com/TurnTable
今後の主なイベント予定
4/14 SUN-Chiターンテーブル映画祭プレサロン 14:00〜
4/21 徳島日曜マルシェ 10:00〜16:00
4/26 寳船 阿波踊りイベント(仮題) 19:00〜
5/3 SUN-Chi ターンテーブル映画祭 初日 15:00〜 蔦哲一朗 監督
5/4 SUN-Chi ターンテーブル映画祭 2日目 14:00〜 古波津陽 監督
5/5 SUN-Chi ターンテーブル映画祭 最終日 14:00〜 大杉漣主演 ライフ オン ザ ロングボード 映画の上映とトークショーと徳島食材の燻製パーティー
5/15 阿波酒の会 (予定)
5/19 徳島日曜マルシェ (予定)
徳島名物のコシの強い半田そうめんをメインに据えた最強のランチメニュー(850円)も人気。(白米無料、お替り自由)
映画『波乗りオフィスへようこそ』
徳島県の南にある港町「美波町」に東京から移転しサテライトオフィスを構えたIT企業社長の吉田基晴さん(サイファー・テック、あわえ代表)の体験実話をもとにした映画。彼の著書である「本社は田舎に限る」と明石監督が出会い、これを題材に撮られた。徳島では4/5から、東京では4/19から公開。
https://naminori-office.com
Text /長野 尚子
フリーライター、編集者。(株)リクルートの制作マネージャー&ディレクターを経て、早期退職。アメリカ(バークレー)へ単身“人生の武者修行”に出る。07年よりシカゴでの生活を経て、現在は日本から世界へ発信。著書に『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。facebookのコミュニティ「Chicago Samuraiシカゴ侍」管理人。「阿波踊りシカゴ」リーダー。http://www.shokochicago.com/