新元号「令和」の由来する万葉集が編まれたのは8世紀後半といわれていますが、その頃に築かれた平安京の東に創建された東寺。唐に渡った空海が持ち帰り、今も受け継ぐ国宝たちが東京にやって来ています。トラベルアクティビスト真里さんのレポートです。
2019年3月26日から上野公園にある東京国立博物館で開幕した特別展「国宝 東寺〜空海と仏像曼荼羅」。前日に行われた関係者・招待客向けのオープニングレセプションと内覧会に行ってきました 。
東寺は、京都駅からも近いので、一度は行ったことがある人が多いと思います。794年平安京遷都の際、羅生門の東に「東寺」、西に「西寺」が置かれました。現代まで残っているのは東寺だけ。そして東寺は創建当初の同じ場所・同じ伽藍の配置のままなのです。
東寺の基礎を築いたのは空海(弘法大師)。31歳で遣唐使として唐に渡り、たった2年弱で全てを学び、帰国しました。 825年、東寺は唐へ留学を終えたばかりの空海に委ねられ、真言密教の中心・根本道場になっていきます。「真言密教」と聞くと、仏教をあまり知らないと現代人は何やら秘密めいたイメージを持ってしまいますが、単に“秘密にする”という意味ではないそうです。“経典などの文言だけではあまりにも難しい仏の教えなので、文言は秘密にします。そのかわり絵や像でわかりやすく表します”ということだそう。つまり、現代でいうと“ビジュアル化”ですね。
今回の展示されている110点のうち、90点が国宝もしくは重要文化財です。その多くは、空海が唐から持ち帰ってきたもの。必見なのが、空海自身が使っていた念珠「水精念珠(すいしょうねんじゅ)」。水晶でしょうか、透明な大粒の珠に糸が通してあり、私たちが仏事の時に手にするものと比べるとかなり大きいものです。千年以上前に空海が日々手に掛けて祈りを込めていた念珠が目の前にある・・・東寺が受け継いできた長い歴史に想いを寄せるのと同時に、空海が急に身近に感じられました。
今回の目玉は、東寺講堂の「立体曼荼羅」21体のうち15体が東博で公開されているということ。曼荼羅とは、真言密教の経典に説かれている仏様たちが集まっている様子を描いたもの。通常は紙に描かれていたり、布地として織られて曼荼羅図が表現されていることが多いですね。「立体曼荼羅」とは、一体一体彫られた仏像が、曼荼羅図の配置の通りに講堂に安置されているというもの。お優しいお顔の仏様や、憤怒の形相の仏様、乗られている生き物も馬・象・孔雀・獅子など様々で、個性豊かな仏像を間近で拝見できます。その中でも“イケメン”との呼び声も高い「帝釈天騎象像」は写真撮影OK。きれいに照明が当てられていて、いろいろな角度から思う存分撮影ができますので、どうぞゆっくりとご拝顔ください。
立体曼荼羅の中で、私が特に気に入ったのは「国宝 持国天立像」。右手を振りかざし、足を一歩前に出し、両足で二匹の邪鬼を踏み潰しています。その勢いで衣の裾は後方にたなびき、今まさに動いているかのようなお姿です。カッと見開かれた目は邪鬼を諌め、大きく開かれた口からは「ヤァッ!」と大音声が聞こえてきそう。なんとこれは一本の大木から彫られたとのこと。平安時代の素晴らしい仏教美術です。15体の立体曼荼羅から、自分の心に響く仏様が見つかるといいですね。
音声ガイドは、東寺境内にある洛南高校出身の俳優・佐々木蔵之介さんによるナレーション。ぜひ音声ガイドも借りてみてください。
特別展「国宝 東寺〜空海と仏像曼荼羅 https://toji2019.jp
2019年6月2日(日)まで。
Text/トラベルアクティビスト真里
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクディビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。