7月9日から東京国立博物館で【特別展 三国志】が始まりました。前日に開催された開会式・特別内覧会に参加したトラベルアクティビスト真里さんがその見どころをレポートしてくれました。
「三国志」は、約1800年前の中国を舞台にした歴史書。400年間続いた前漢・後漢の後、魏(ぎ)・蜀(しょく)・呉(ご)の三国が台頭。戦乱の世、三国時代(220~280年)が始まります。三つ巴の戦いの様子は、正史「三国志」・小説「三国志演義」に著され、中国だけでなく、日本にも多くのファンがいます。
その一番の理由は、登場人物の英雄たちがそれぞれ個性的であり、またその描写が生き生きとしていること。中国古代史という枠を超え、小説・人形劇・漫画・映画・ゲームなど様々な媒体で「三国志」が展開されています。そして、ハリウッドでも映画化された「Red Cliff」は、三国志演義の前半のクライマックス「赤壁の戦い」を描いたもの。大ヒットを記録しましたね。
今回の展覧会は日中文化交流協定締結40周年を記念したもの。18地域・約50の博物館・研究機関から出展された220点以上の貴重な品を鑑賞することができます。もちろん、大半が日本で初公開です。しかも会場内、すべて写真撮影OK。
展示室に入って、まず目に飛び込んでくるのは、15~16世紀に造られたという「関羽(かんう)像」。関羽は蜀の創始者・劉備(りゅうび)に仕え、その優れた武勇や人格は敵将からも称えられ、死後には神格化された武将です。赤い壁を背景に据えられた青銅製のこの像、左足を斜め前に投げ出し、両手は腿の上に置きどっしりと構えています。長い顎髭と鋭い眼光。重厚な鎧に包まれた体躯は、歴史書によるとほぼ実物大のようです。「関羽ってやっぱりこんな強そうな人だったのね」と一気に「三国志」の世界の中に引き込まれました。
見所の一つが、魏の王であった曹操(そうそう)の墓「曹操高陵」を実物大に再現した展示室。この高陵が発見されたのは2009年と、つい最近のこと。この墓が曹操のものであるいう決め手になった石牌(せきはい)や罐(かん)という磁器など高陵からの出土品も同時に展示されていますので、現地にいる雰囲気を感じることができます。
罐は、いわゆる白磁の容器。中国での白磁の出現は6世紀以降と言われており、3世紀初めの曹操の時代にはまだ白磁の器は作られていなかったはず。どのような経緯でこの器が作られ、曹操のお墓に入れられていたのでしょう。歴史のミステリーですね。
「“三国志”ってあまり知らないなあ」と思う方も大丈夫です。横山光輝による漫画「三国志」の原画、NHK「人形劇 三国志」の使用された人形などが展示されていていますので、「あ、見たことある!」と楽しめます。
「赤壁の戦い」のイメージを再現した部屋もあり、映画「Red Cliff」を観たことがある方なら、軍師・諸葛亮(しょかつりょう)が10万本の矢を手に入れるために藁人形を積んだ船をこぎ出させ、敵軍の矢が空を切り、人形に突き刺さる場面が蘇るはず。すぐ横には、当時の矢を放つための青銅製の道具も展示されていますので、三国志の世界をよりリアルに感じられます。
音声ガイドは、吉川晃司さん。中国史に詳しいそうで、なんと曹操高陵を訪問されたとのこと。吉川英治著の小説「三国志」の場面との対比の部分もあり、とてもエキサイティング。吉川晃司さんの渋く迫力あるお声で、三国志の世界に浸ってください。そして、ゲームから三国志にご興味を持った方のために、ゲーム「真・三國無双」の声優が登場する音声ガイドも別途あります。私は展覧会を再訪して、次回はこちらの音声ガイドを聞いてみようと思っています!
【特別展 三国志】
東京国立博物館では2019年9月16日(月・祝)まで。
九州国立博物館では 2019年10月1日(火)〜2020年1月5日(日)。
https://sangokushi2019.exhibit.jp/
Text/トラベルアクティビスト真里
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクディビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。