先日、日本認知症予防学会で、認知症の進行を止めたり、改善したりする薬の開発が失敗続き(70連敗とか?)の理由を、講師の教授が説明してくれました。認知症になるまでには、20年以上かけて、少しずつ脳に変化が起きている。つまり認知症が発症したタイミングはすでに手遅れ、癌でいうと末期、かなり厳しい状態なので、薬も効かないのではないかと。
みなさんもご存知のように癌は早期発見が何より大切、認知症も同じ、早期発見、早期予防がとても重要です。認知症の早期予防は1次予防と呼ばれ、40代~50代からの生活習慣がポイントになっています。
40代~50代の生活が、認知症の発症を左右する
スウェーデンで行われた38~54歳の女性800人の44年間の追跡調査による研究で、40代~50代の「認知活動(読書や音楽、手仕事など)」が、認知症、アルツハイマー型認知症のリスク低下と関連し、「身体活動(ランニングや水泳、サイクリングなど)」が、混合型認知症、血管性認知症のリスク低下と関連したという結果が報告されています。
40代~50代の頃に、知的好奇心を持っていろいろなことに参加したり、行動したり、日常的に運動することが、将来の認知症のリスクを低下させることがわかったのです。
運動習慣、知的好奇心はとても重要ということ。さらに日々の生活についても確認してみましょう。
あなたの生活で当てはまるものをチェック!
□テレビを1日3時間以上、見ている。
□朝ごはんはパンとコーヒー、簡単に済ませている。
□移動は基本的に車、歩くのは億劫だ。
□階段は避ける、エレベーターやエスカレーターにすぐ乗ってしまう。
□睡眠時間は6時間未満、いつも寝不足な感じだ。
□知らない人と話をするのは苦手。できればしたくない。
□掃除はお掃除ロボットにおまかせしている。
□お惣菜やコンビニなどで、食事を済ませることがある。
□博物館や美術館にはめったに行かない。
□パズルやクイズは、先に答えを見てしまう。
□通勤や買い物の行き返りは、いつも同じ道を歩いている。
□外食はいつも同じものや似たものを頼んでしまう。
これらはすべて、脳を使わない、脳が働かない、脳によくない生活です。本来、脳はとてもエネルギーを使う臓器なので、できるだけ省エネモードを好みます。私たちが脳を使い続ける努力をしなければ、自ら積極的に働こうとはしません。
この他にも、「お財布に小銭がたまっている」あなた。小銭を数えたり、お釣りを計算するのが面倒で、ついお札を出すから小銭がたまるということになっていませんか?。これもMCI(軽度認知障害)の初期症状と言われています。また、流行の炭水化物ダイエットも要注意。なぜなら脳を働かせるエネルギーは唯一ブドウ糖だけ。そして、ブドウ糖は、お米やパン、じゃがいもなどの炭水化物からしか作れません。だから炭水化物を摂らないと、脳が働かなくなり、衰えにつながっていくのです。
脳が喜ぶ4つのアクションを心がけて
川島隆太博士は「Use it, or lose it.」という言葉を使います。it(それ)は脳と置き換えます。「脳(機能)を使うのか、それとも、脳(機能)を失うのか、そのどちらかである」という意味です。脳が機能し続けるには、脳を使い続ける必要があります。脳を使うことを止めてしまえば、その機能が止まります。
脳を使い続ける、脳が働く、脳によい、脳が喜ぶアクションを4つお伝えします。
- できるだけ新しいこと、いつもと違うことをする。ルーチンを避ける。
- できるだけ手間をかける、面倒や億劫なことをする。楽ちん、を求めない。
- できるだけ頭を使う、考えたり、覚えたり、思い出したり。Google先生に頼らない。
- できるだけ体を動かす、体の代謝や血流をよくする。じっとしていない。
ぜひ40代~50代の今から、脳が喜ぶことをしてください。それが認知症の1次予防につながります。
次回は、「【不老脳 (4) 】有酸素運動で認知症を遠ざけるには?」です。認知症の予防にもっともエビデンスがある、運動のお話をさせていただきます。
Text / 糸藤友子
リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。
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