以前は「グルジア」と呼ばれていた「ジョージア」。今でも世界遺産に登録されている世界最古の醸造法でワインを造っている国。果たしてその味は?どんな造り方?世界を股にかけて好奇心を追求するトラベルアクティビストの真里さんのレポートです。
【世界遺産登録もされた驚きのワイン醸造法】
はじめまして!トラベルアクティビストの真里です。ジョージアという国をご存知ですか?黒海とカスピ海の間、コーカサス地方にある旧ソ連構成国の一つです。北はコーカサス山脈を挟んでロシア、南から東はトルコ・アルメニア・アゼルバイジャンに囲まれています。
ここ数年、ジョージアは世界のワイン愛好家から「ワイン発祥の地」として注目を集めています。実際、2017年11月には、8000年前の遺跡からワインの成分が付着した土器が発見され、世界最古とされています。
ジョージアでは、世界無形文化遺産にも登録された、地中に埋めた土器で発酵を行うという古くからのワイン製法を現在も守っているのです。これはぜひ行って見てみたい!と、ジョージアの首都トビリシへ向かいました。トビリシまでは、日本から直行便はないのでヨーロッパなどを経由しますが、私はカタール航空のドーハ経由で。日本からドーハが約10時間半、ドーハからトビリシは約5時間半です。
まずは、トビリシの西20キロメートルにあるムツヘタという街にある「イアゴ・ワイナリー」へ。旧市街と近代的な建物が建つ新市街からなる首都らしい街並のトビリシを一歩離れると、平屋の家しか見かけず、広大な農地が広がっています。訪れた12月初旬のこの日は、すこし早めの初雪、しかもかなりの本降りになり、あたりは一面に真っ白の雪景色です。
ムツヘタは、紀元前4世紀から紀元後5世紀まで、イベリア王国の首都として栄えた町。世界文化遺産に登録されている設立5世紀前後のジョージア正教の教会が2つあります。イアゴ・ワイナリーはオーナーのイアゴ・ビタリシュヴィリさんの家族経営で、年間5000本の白ワインのみ生産しています。オーナーの奥さんに案内された醸造場所は、「マラニ」と呼ばれる堅牢な石造りの納屋。中に入ると、ワイン醸造所にはお馴染みの樽はなく、かわりに地面に等間隔に直径40センチほどの穴が!
「クヴェヴリ」と呼ばれる、大人がすっぽり入る大きさの卵型の素焼きの甕が地中に埋められていて、その口の部分が地表に出ているのです。10月頃に収穫したブドウを潰してこの甕に投入、毎日7−8回攪拌し、1カ月ほどかけて十分に発酵させます。その後に甕に蓋をして周りを土で密閉、4−5カ月熟成させると出来上がり。皮と種を取り除いて醸造する通常の白ワインと違って、赤ワインの製法のように、皮も種も一緒に潰して醸造するのも特徴です。
このクヴェヴリを使ったワインの製法こそ、ジョージアワインの最大の特徴なのです。樽やステンレスタンクを使って発酵や醸造をする近現代の製法とはかなり違っていますね。イアゴの白ワインはチヌリとよばれるジョージアの土着品種を100%使い、この地中でじっくり熟成させています。グラスを光にかざしてみると色は白ではなくオレンジに近い感じ。ジョージアの白ワインが「オレンジワイン」と呼ばれる理由です。一口、含むと…すっきりとした辛口ですが、タンニンの風味も強く、口の中に力強さを感じます。
世界最古という伝統製法のワインにすっかり魅了されましたが、ジョージアの料理がこれまたワインにぴったり。次回は、ちょっとアジアを感じる一品含めてジョージアの料理と市場を紹介します。
“醸造法は世界遺産!ワイン発祥の地ジョージア(前篇)” への1件のフィードバック