小野アムスデン道子のポートランド日記:車を改造した屋台(フードカート)は、ポートランドの名物。ヨーロッパ、アジア、中東ほか世界中の料理がカジュアルに楽しめます。移民の人が本格的な味を披露していることも多く、お値段も手頃で、地元の人にも観光客にも人気。
空いた駐車場の有効利用として始まったフードカートですが、固定型のカートが集まったフードカート・ポッド(さや)と呼ばれる屋台村があちこちにでき、今やその数は500を超えるといいます。
サウスイースト地区にある「Portland Mercado」は、Hacienda CDCというラテンアメリカ系移民のサポートをする非営利団体が運営をしていて、Mercado (スペイン語で市場)と名づけれているように、屋内で食材を売るスーパーマーケットや肉屋、チーズ屋、カフェなどの入った建物とフードカート・ポッドからなります。スモールビジネスのサポートをこうした団体がやっているところが、ポートランドらしい。
フードカートは、メキシコ(ブリトー専門店、オアハカ料理など)、コロンビアそしてハイチ!キューバとジャマイカと海を隔てた西、そしてドミニカ共和国に接するカリブ海の国。どんな料理かと興味しんしん。にこやかなカート「Mathilde’s Kitchen」のオーナーシェフ、マチルダさんが「寒い冬には人気なのはベジタリアン・コンゴ・ピーのスープね!」とおすすめを教えてくれました。
コンボ・ピーという名前にもひかれて注文。見た目はドロっとしたカレースープのようですが、人参、カボチャ、コンゴ・ピー(ピジョン・ピーとも呼ばれる豆)、セロリ、玉ネギ、ガーリックをコリアンダーやタイムなどのハーブでココナッツミルクで煮込んであって、優しい野菜の味とハーブが相まってすごくおいしい。
ハイチは、スペイン領だった後にフランス人が多く入植したので、ルイジアナなど南部州でもみられるフランスと西アフリカの影響がミックスされたクレオール料理。主食は、米やコーンミール。「Mathilde’s Kitchen」は、ハイチ料理で多い煮込みとスープ料理を出しています。
この「ベジタリアン・コンゴ・ピー」も野菜をかなり煮込んだスープ。複雑な味の秘密は、ハーブをミックスして作ったオリジナルのシーズニング。バラバラにハーブを足していくのではなく、最初にシーズニングを作っておくのだとか。そこにココナッツミルクがコクとマイルドさを添えていい味出してます。
付け合わせのバスマティ・ライス(長米)と小豆もココナッツミルクで炊いてあるそうですが、これまたほのかな甘みがスパイシーなスープとぴったり。おまけにあったかいハーブティー(レモングラスも使っているとか)のドリンクもついてきます。これがショウガと砂糖が効いていて懐かしい生姜湯の味!そして、たった6ドル。
カートならではのお値段で珍しいハイチのおふくろの味を楽しめて大満足。フードカート・ポッドを巡れば世界の料理巡りができるポートランドなのでした。
Portland Mercado 住所:7238 SE Foster Rd, Portland, OR 97206
http://www.portlandmercado.org
取材協力/Travel Portland https://www.travelportland.com
Text/小野アムスデン道子
「人生のガイドブック W LIFE」編集長。世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。