京ごよみ:どっちが本当?東西ひな人形の飾り方

関西在住の京都・歴史ライター 倉松知さとが、関西発の視点で様々な話題をお届けします。

年が明け、いつの間にか日も長くなって来ました。立春が近づくと、そろそろ飾りたくなるのが雛(ひな)人形です。

毎年、飾る時に「あれ?男雛は向かってどっち?」と迷う方は多いのではないでしょうか?
実は、この男雛と女雛の飾り方が現在では大きく分けて関東型、関西型2つあるのをご存じでしょうか?

多くのご家庭では向かって左側が男雛、右側が女雛だと思いますが、関西、中でも京都では正反対の飾り方をしています。

京都では向かって右が男雛、左が女雛なのです。
京人形の老舗、天保4(1833)年創業の京都島津さん店内でもこの通り。

なぜ、全国広しと言えど、京都だけがこの飾り方を守っているかと言うと、「それが本来の飾り方だから」と言えるでしょう。

お雛様は宮中の婚礼をモチーフにしたもの。そのため、平安時代からの有職故実(ゆうそくこじつ=朝廷での決まり事)に則っています。
それによると「天子南面」(てんしなんめん=天皇陛下は南を向いて座す)という決まりがあり、南面した天皇陛下から見て太陽が昇る方角が上位とされました。そのため古来より日本では向かって右側が上座ということで男びなの位置が決まっていたのです。(今でも舞台の上手・かみても向かって右ですよね!)

しかし、近代になり、西洋の儀礼では日本とは左右逆の並び方をしていたため、日本の皇室もそれに倣ったところ、人形業界もそれに倣い、庶民たちも次第に男雛女雛を西洋式に並べるようになったようです

今では大阪までもが関東式の並べ方になり、残るは京都と、享保雛など由緒ある雛人形を飾る方のみが受け継ぐこの飾り方。

でも、歴史や有職故実を知った上で関東式の飾り方をよく見てみると、
年上で、右大臣より上位の白いお髭の左大臣はちゃんと向かって右に飾っているのに、また、左近の桜、右近の橘はちゃんと天皇陛下から見た左右に飾っているのに……。男雛と女雛の位置だけが西洋風に入れ替わっているという違和感……。

関東式の飾り方は西洋に追いつけ追い越せの時代にできた、まだ歴史の浅い習慣。
もし、できれば、今年から雛飾りは日本古来の伝統的な飾り方に戻しませんか?

ちなみに雛人形は女の子だけでなく、我々大人の女性も飾って良いもの。
本来女性ひとりひとりの形代(かたしろ)なので、母と娘それぞれあって良いのです。

こんな風に、お雛様の飾り方ひとつを取っても、長い長い歴史ある日本に生まれた我々だからこそ、自国の歴史を知り、その知恵や知識を次世代に伝えて行ければ良いなぁと思う今日この頃です……。

協力/ 京都島津   http://www.kyoto-shimazu.com/hina/index.html

Text / 倉松知さと

関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを経て、京都・歴史ライターへ転向。
歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。
京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です