京都・哲学の道を少し上がったギャラリーで「雪月風花」と題した京菓子と器の展覧会が開かれています。京都ライター 倉松知さとがお届けします。
香港出身のブランドコンサルタント、デザイナー兼アーティスト、アラン・チャン(陳幼堅・Alan Chan)氏といえば、日本では三井住友銀行のロゴなどで知られていますが、彼のカンパニーが2016年に京都は鹿ヶ谷に設立したギャラリー「KYOTO27」のプロデュースによる京菓子の老舗「亀屋良長」の展覧会が5月27日(日)まで開かれています。
ギャラリー側が「器」と「テーマ」を提供し、京菓子司が想像を膨らませ、器とテーマにぴったりな、いや、時には想像を超える作品が生まれる・・・。思いがけない化学反応がとっても楽しい展覧会です。
器といっても、普通のお皿ではありません。
朽ちた木や鉄の瓦、虫食いの跡のある木の建具のサンプルなどなど・・・。
そこに「こんなイメージで」と時には無理難題とも思えるようなテーマが課される。
しかし、そこを無限の想像力でしなやかに応えるのが、京都という地で目の肥えたお客さんからの様々な要望を引き受け、形にして来た京菓子司 亀屋良長さん(8代目)の腕の見せ所です。
ピューターという錫を主成分とする金属のお皿には銘(めい=菓子の名前)を『夏夜』と題し暑い夏の夜、しかし見上げると涼やかな星空が、錦玉(きんぎょく)製で表現されていました。
朽ちた木の器には銘『芽吹き』と題し、菓子の割れ目から微かにのぞく生命力ある鮮やかな色合いが、自然の力強さ感じさせます。
鉄の器には夏の想い出が。琥珀製のガラスのような色合いについ桜貝を拾った時の波の音を思い出しました。銘は『宝箱』。宝物のような美しいものを大事に取っておいた幼い頃の記憶がよみがえります。
私が伺った日は亀屋良長8代目吉村氏とアラン・チャン氏もいらして、特別に中国の素材を菓子に使い、中国茶と合わせて楽しむイベントがありました。普通は京菓子には使わないリュウガン、クコ、高麗人参なども口の中で文化が融け合い新たな魅力を感じました。
アラン・チャン氏のデザイン哲学は「東情西韻」=東洋の情熱、西洋の調和。
それは、和菓子においても、またお茶室で、楽しく感想を述べ合った様々な地域からの客人たちおいても成功したと言えるでしょう。
この展覧会は金(予約制)、土、日のみ開かれています。
入場は無料。10時~17時まで。
場所:Kyoto27 京都市左京区鹿ヶ谷桜谷町6-5
電話:090-9691―5574
https://www.facebook.com/Kyoto27/
亀屋良長
電話:075-221-2005
Text /倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを経て、京都・歴史ライターへ転向。京都歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。個人ブログ『京都に来るなら…』https://ameblo.jp/ciaokyoto/