京都のモノづくりと聞くと、貴族文化や歴史からイメージする”西陣織”や”清水焼”など伝統工芸を思い浮かべる人が多いかもしれません。実は新しいモノづくりでも今、注目を浴びています。そう言えば京セラ、日本電産、村田製作所、島津製作所と有名なモノづくり企業も京都にありますね。
Panasonicの家電デザイングローバル拠点があったり、LINEも開発拠点を京都に開いています。その理由の一つが、「一度、京都に住んでみたい」という海外のエンジニアやデザイナーを採用しやすいという利点があるらしく、自由に働く場所を選べる時代というのとKYOTOのブランド力が上手くマッチしているようです。
京都の町の中心だけではなく、丹波口(その昔、京のはずれにある入り口である七口の一つ)に面白いモノづくりベンチャーが出来ているというので、見学してきました。ダルマテックラボ(株式会社 Darma Tech Labs)が運営するKyoto Makers Garage (以下KMG)です。
京都中央卸売市場は今でも朝は活発な卸しがされてますが、商店の中にはシャッターが降りている店も。KMGも元乾物店の倉庫なのですが、カフェに見えそうな入り口を入ると、そにはガラス越しに3Dプリンターなどで何やら製作に取り組む人達が。
ここは量産化に向けての試作に取り組んだり、それを投資家にプレゼンしてビジネスに育てていく場。「ここには昨夏、日本に研修で来ていたスタンフォード大学の教授と学生が作品を作りに来たし、シリコンバレ―からの視察も来ますよ」と語る若きダルマテックラボ社長の牧野成将氏。
神戸大学大学院で学んだのはファイナンスで、ベンチャーキャピタル出身。言わば、小さく生まれたものを大きく育てるプロですが「日本が勝てるのはモノづくり。京都でそんなモノづくりのハブを作る」のを目標に、企業が量産化するにあったての試作をきちんできる場がないことに着目したといいます。
近くには京都府の産業研究開発・ベンチャービジネス支援のためのリサーチパークのりっぱな施設もありますが、牧野氏には、KMGのような町中の小さな施設が人情も残る下町の町おこし的起爆剤になればという思いもあるようでした。
KMGでは、レザーカッターや3Dプリンターなどのツールを1時間から利用できるほか、それらを使用するトレーニング、また試作品等のオーダーを請け負いもします。また、楽器デバイスや電子工作プログラミング入門といったイベントも。
昔ながらのうどん屋さんがあるかと思うと、古民家を改装した洒落たAirbnbやレンタサイクルが置かれたカフェも!モノづくりの小さな一石は、町にも確実に何かを生み出そうとしているようです。そんなところが海外から見られているのはさすが京都というべきか。これからも注目していきたい「観光だけではない」京都の新たな側面です。
Kyoto Makers Garage https://kyotomakersgarage.com
Text/小野アムスデン道子
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。インバウンド・コンサルタント。日本旅行作家協会会員。
“海外からも熱い視線 京都の町外れにあるモノづくりの場がすごい” への1件のフィードバック