本物の贅沢を船の旅で ガンツウに乗って

「船の旅」と聞くと、どんな旅を想像しますか?カリブ海や太平洋の島々巡り、船内にはカジノや免税品店。船長主催のディナーやエンターテイメントの公演が毎晩繰り広げられる大型客船でしょうか?

2017年10月に就航した「ガンツウ(guntu)」では、そんな大型客船と対極にある船の旅が経験できます。「せとうちの海に浮かぶ小さな宿」がコンセプト。客室はわずか19室です。この船は内海である瀬戸内海のみを航行する設計になっており、外海には出られません。その代わり、かなり狭い水路も航行可能ということで、東は小豆島沖・西は山口県上関沖まで、瀬戸内海の島々をめぐる様々なコースが2泊3日もしくは3泊4日で用意されています。

就航前から気になっていたガンツウに、やっと乗船する機会が!ワクワクしながら広島空港に降り立ちました。広島空港もしくはJR福知山線(新幹線)までスタッフが専用車でお迎えに来てくれます。小1時間ほどのドライブで、広島県尾道市にある母港ベラビスタマリーナにある専用ラウンジに到着。15時の乗船まではシャンパンを飲んで過ごしました。

定刻になり、いよいよ乗船。お部屋へ。今回は露天風呂付きテラススイートを予約しました。ガンツウの客室は4タイプあるのですが、「お湯に浸かりながら、瀬戸内海の海を眺めたい!」と露天風呂付きの部屋を迷わずチョイス。約50平米のテラススイートは、広いベッドに寝転んでいても、ソファに座っていても、大きな窓から美しい海が眺められます。

ミニバーには、愛媛産のミカンジュースや山口産のイチジクジュースなど、瀬戸内海沿岸各所のこだわりのソフトドリンクが。瀬戸内海の沿岸の日本酒、DUEZのシャンパンやKENZO ESTATEのasatsuyu など、アルコール類も素晴らしいラインナップです。「全部お飲みになられても、すぐ補充いたします」とスタッフが。そう、ガンツウは、乗船中の食べ物・飲み物は、どんなに頂いても全て乗船料金に含まれているのです!

いよいよガンツウがゆっくりと動き始めました。マリーナを出港すると、すぐに尾道市内の横を通って行きます。船と陸の距離が近い!街の人たちが手を振ってくれているのがよく見えます。

スタッフに船内を案内してもらいました。3階のメインデッキは、大きな屋根があるもののオープンエアなので、椅子やベンチに座って風を感じながらゆったり過ごすことができます。ラウンジやバー、そしてダイニングはどこも広々。満室時でも合計38名のゲストでは、十分すぎる余裕がある設計です。堀部安嗣氏設計のガンツウは、どこをどう写真に撮っても、美しい。

出航後メインデッキでウェルカムドリンクのシャンパンを楽しんでいると、漁船が近づいてきてガンツウに接舷、獲れたばかりの大きなタコをシェフが仕入れました。デッキでさばいてくれて、日本酒とともに味見させていただきました。プリプリしていて、美味しい!

日没までデッキでワインを飲みながら過ごし、瀬戸内海に沈む夕陽を堪能しました。ガンツウは時速18キロ。かなりゆっくりなスピードで航海します。瀬戸内海の人がたくさんすむ大きな島・小さな無人島・様々な形の間をゆったりと進みます。島影・空の雲や色・波の様々な変化のコンビネーションが、次々と新しい景色を見せてくれます。

いよいよお楽しみの夕食。シェフに本日のおすすめとおすすめ調理法を聞き、相談しながらメニューを組み立てていくのは究極のわがまま。計7-8品を和食の調理法で頂くことにしました。でも私はどうしても「車海老のフライ タルタルソース添え」が食べたくて、洋食メニューからさらに1品追加。ワインも甲州の日本ワイン・フランス・アメリカなど、種類も豊富です。お食事に合わせて、シャンパン・白・赤とたくさん頂きました。

ガンツウ 2日目。

朝食は和食で。船名の由来となった「ガンツウ」と呼ばれるワタリガニの一種のお味噌汁は、いいお出汁が出ています。スズキの焼き物やフレッシュな柑橘のジュース、色とりどりのみずみずしい野菜いっぱいのサラダバーなど、瀬戸内海の山海の幸に朝から大満足。

ガンツウには、午前と午後に申し込み制の船外アクティビティがあります。私は、2日目午前中に行われたアートの島・直島(なおしま)の散策を申し込みました。ガンツウは大きすぎて直島に接岸できないので、テンダーボートに乗り換えて直島に上陸。伝統的な家屋とモダンアートを融合させた「家プロジェクト」エリアを散策。一番印象に残ったのは、杉本博司氏設計の「護王神社」。地下の古墳のような石室から社殿に続くガラスの階段が神秘的で、地下に眠る魂が神の世界に昇っていくようなイメージを持ちました。このような、島へ上陸しての散策等は、ガンツウスタッフが同行してくれるので安心です。

もちろん、船外アクティビティに参加せず、ガンツウ内でゆっくり過ごすこともOK。船尾部分にはサウナ付きの大浴場もありますし、スパもあります。2泊3日の過ごし方は自由です!

ガンツウ乗船中にぜひ経験していただきたいことのもう一つは、ダイニングエリアにある淡路島名店「亙(のぶ)」が監修する鮨カウンター。私も2日目のランチ、直島から戻ってきた直後にこちらでお鮨を頂きました。生の鱧や、生のカワハギなど珍しい季節の食材を始め、瀬戸内海の海の幸を思う存分いただきました。もちろん、前日の出港直後に漁師さんから仕入れたタコも出てきましたよ!お席はカウンター6席しかありませんので、ぜひ乗船予約時か、遅くとも乗船時には予約をすることをお勧めします。

申し込んだ時は、正直「国内旅行でこの価格はかなりいいお値段だな。海外旅行に行ける」と思いました。でも乗船して2泊過ごしてみると、ガンツウの素晴らしさに感激。瀬戸内の穏やかな海、変わって行く風景、夕陽を浴びて輝く波、変化に富んだ島影。安全性と美しさを両立させた設計、美味しいお食事、スタッフのホスピタリティ。「来てよかった」「次は違うルートで3泊」と強く思いました。早く次の予約を入れたい!!

Text/トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクディビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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