「Stayhomeで世界の名建築訪問 あの落水荘も… バーチャルツアー公開中」でフランク・ロイド・ライトの建築作品のバーチャルツアー配信について寄稿してくれたトラベルアクティビスト真里さん。4年前には実際にこの「落水荘 Fallingwater House 」 を訪問されています。美しい写真と共に、しばし、一緒に落水荘を訪れた気分を味わうバーチャル旅行へどうぞ。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93795112_2292083244427105_6133998148126769152_n-copy-1024x831.jpg)
4年前の初夏、私は一人、ペンシルバニア州の山中にある落水荘を訪れました。一番近い都市ピッツバーグから約100km、車で1時間30分ほどかかります。落水荘を見学するには、完全予約制の見学ツアーをHPから事前の申し込みが必要。ツアー集合時間が朝8時30分と早かったので、近隣のホテルに宿泊、レンタカーで出発しました。すれ違う車もない田舎道は、どんどん山の中に入っていきます。ナビを見ると正しい道順のようですが、大丈夫かな・・・と思った頃に“Fallingwater”の表示が。駐車場に車を駐めてしばらく歩くと、新緑の中に、滝の上に建てたられたあの有名な建物が見えました!
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93683494_627339901153330_2184691954707595264_n-768x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93574540_227062185034543_1102229032109342720_n-757x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93280420_682028559220134_8227017242831749120_n-1024x873.jpg)
受付で予約の確認をして、ガイドの先導でツアーの始まりです。落水荘は、ピッツバーグにあった百貨店の経営で成功を収めたエドガー・カウフマンがライトに別荘の設計を依頼したもので、1936年に完成しました。当初、カウフマンは「滝を眺められるように別荘を建ててほしい」という希望だったそうですが、ライトは滝が流れ落ちるすぐ上の岩盤に別荘を設計しました。そうすることによって、建物の各階の水平さと流れ落ちる滝の垂直さが構成上の対比を生み出し、室内では常に水の流れる音を聴くことができるという効果が生まれます。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/94003482_1267963826730587_534016141727629312_n-1024x768.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93151640_928982474219787_3365999078562332672_n-1024x768.jpg)
落水荘は、カウフマン一家が週末や休暇を過ごしたメインハウスと、本館から歩いて2-3分ほど離れたゲストハウスの2棟から成ります。本館のリビングダイニングに入って見ましょう。落水荘の設計の特徴は、建物を森や自然に溶け込ませるとともに、自然を家の中に取り込むこと。壁の面積は最小限にとどめてあり、窓から見える森の景色が部屋を取り囲みます。リビングにある暖炉の周りの大きな岩は、もともとその建築現場にあったものだそう。外壁も、流れる滝を導く岩盤のようなゴツゴツとしたものです。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93404366_652882998608141_4224512420548182016_n-1024x768.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93936790_2562471743991777_4291150118045876224_n-1024x768.jpg)
メインフロアの広い空間には、家族で食卓を囲むダイニングやソファセット、本棚や飾り棚の前には居心地の良さそうなカウチと家具が配置されています。デザインはとてもシンプルで、アクセントとしてクッション等で明るい色が配置されているのが印象的です。ライトは建物を設計しただけでなく、室内外の椅子・ベッドフレーム・テーブル・キャビネット・照明など170以上のアイテムを落水荘のためにデザインしました。椅子やソファに腰掛けた時に景色が自然と目に入るように家具の高さは概ね低め。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93876026_250323909343424_4040708466187173888_n-768x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93661793_247294496416343_8129513994789584896_n-1024x768.jpg)
隣接するキッチンは、今でいうシステムキッチンのような効率的な作りで、「本当に1930年代の設計?」と驚きます。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93721834_162388281703796_7514793141237448704_n-768x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/92939980_242236903588154_5685763687395098624_n-768x1024.jpg)
メインフロアから階段を降りると、なんと目の前には滝に続く川が。川といってもそれほど水量が多い感じではないので、ふくらはぎあたりまで浸かって水遊びして、家に直接上がって来ることができます!カウフマン一家の子供達が、夏に水遊びを楽しんだ様子が目に浮かびます。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93372186_1608474402625007_6851271082561765376_n-1024x768.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93305288_1092000814507018_5581009190232522752_n-1024x768.jpg)
上階に上がってみましょう。石を多用したメインフロアと違って、上階の寝室のいくつかは、ドア・壁面・クローゼットは全て同じ種類の木材でできています。扉を閉めてしまうとクローゼットと完全に一体化してしまうほど。大きな特徴は、壁面とクローゼットは木目が横向きに出るように、ドアは木目が縦向きに出るように設えてあるという点。木目の向きが違うことでそこがドアだとわかるのですが、そんなところにも落水荘の「水平と垂直」が表現されていると言えます。ベッドサイドに飾られているアートに、浮世絵が多いことに気づきました。日本にも度々来日していたライト。浮世絵や茶室など日本の伝統にも影響を受けたのでしょう。
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93621369_1068469856879769_5165221648349003776_n-768x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93998053_645331889647040_833978272587972608_n-768x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93798776_511775943061900_6962442673181425664_n-1-1.jpg)
私がこの落水荘で一番気に入った場所があります。それは、とある寝室の一角、デスクの横にある窓です。建物の角の部分に30cmほどの間隔で窓枠があり、内側にも外側にも開閉可能なのです。開閉の仕方によって空間に様々な表情が生まれます。外には新緑、見下ろすとメインフロアから続くテラスにある仏像の頭部が見えます。このコーナーに座って、本を読んだり手紙を書いたりして時間を過ごしてみたい!
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93372185_159554035364743_2722382887633551360_n-768x1024.jpg)
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/04/93354377_223935055377133_6021651948376162304_n-1024x768.jpg)
最後に、落水荘を訪問する前夜に宿泊したホテルをご紹介します。ネマコリン・ウッドランド・リゾートは、ホテル棟・ロッジなどの宿泊施設を中心に、スパ・屋内外のプール・ゴルフコースなどが完備されている大規模なリゾートです。落水荘まで車で20数分。ガイドツアーの集合が早いので、こちらに泊まると便利です。私は1泊だけという短い滞在でしたが、チェックイン後スパをお願いし、その後プールサイドでくつろいで、美味しいディナーを頂きました。とても素敵なリゾートですので、ここを足場にして落水荘をはじめ近隣の他のライトの建築を見て廻るのも良さそうです。
「Stayhomeで世界の名建築訪問 あの落水荘も… バーチャルツアー公開中」でご紹介したライト財団が中心となって配信しているライト設計の建築持ち回りバーチャルツアーですが、この記事を書いている4月14日時点では落水荘はまだ登場していません。6週間の配信期間のうちに、ぜひ見てみたいですね!
Fallingwater House https://fallingwater.org
Nemacolin Woodlands Resort https://www.nemacolin.com
Frank Lloyd Wright Site to Swap Virtual Visits
https://franklloydwright.org/wright-virtual-visits/
Text/トラベルアクティビスト真里
![](https://wlifejapan.com/wp-content/uploads/2020/01/27537345_1388965101209512_1830001016_o-840x1024.jpg)
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクディビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。