【不老脳 (8) 】睡眠と認知機能の関係 脳にいい良質な睡眠ができる入眠儀式って? 

日本人の睡眠時間は世界的にも短いことで知られています。40代の半数が「6時間未満の睡眠」というのが現状です。(平成29年、厚生労働省「国民健康・栄養調査」より)。またコロナ禍で、外出自粛による運動不足、パソコンやスマートフォンなどブルーライトを発する機器との接触時間が増えて、睡眠の量も質も悪くなっていることが懸念されます。

そんな状態が続いてしまうことで、脳の働きの低下を実感している人も多いのではないでしょうか? 最近の研究では、睡眠の質と量の低下が“認知症の発症リスクを高めること”も明らかになっています。


短時間睡眠が認知症のリスクに

認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症です。この原因物質として考えられているのが、「アミロイドβ」というタンパク質。このアミロイドβは脳の活動によって生産され、通常は脳内のゴミとして排出されます。しかしアミロイドβが集まって塊になってしまうと神経細胞が破壊され、記憶障害などの症状を引き起こしてしまうと考えられています。アメリカの研究によると、健常な人とアルツハイマー型認知症の人とでは、アミロイドβの“生産量”にはさほど違いがなく、“排出する力”に差があることがわかっています。

このアミロイドβの排出が促進されるのは、「睡眠時」であることも、研究から明らかになっています。アミロイドβは特に40代以降から蓄積しやすくなり、短時間睡眠や睡眠不足、浅い睡眠など、量と質の悪い睡眠が慢性的に続くと、アミロイドβが排出されずに蓄積していき、将来のアルツハイマー型認知症のリスクも高まっていくことになるのです。

繰り返しお伝えしているように、認知症は誰もがなる病気です。いかにその発症時期を遅らせられるかが大切。40代以降の私たちにとっては、「睡眠」は最優先の課題といえます。

質のよい睡眠をとるためには?

まずは、寝る間はテレビやパソコンの電源を切ります。スマホを寝る直前までいじっているのはNG。私たちが規則正しく睡眠と目覚めが出来るのは「メラトニン」というホルモンの働きのおかげです。でも、寝る前にテレビや携帯、パソコンなどの画面に使われている「ブルーライト」には、メラトニンの分泌を抑えてしまうという困った働きがあります。ですので、睡眠前のスマホは睡眠に悪い影響を及ぼしてしまいます。

そしてメラトニンの分泌を増やすために、朝起きたら、太陽の光を浴びることも大切です。私は毎朝、起きたらベランダに出て、全身で太陽の光を浴びます。自分が電池になって気分で、足元から膝に、お腹に、胸に頭に、どんどんとエネルギーが充電されるイメージです。数分かけて頭の先までフル充電になったら完了です。

自律神経を整える入眠儀式

また自律神経も睡眠の質と大きく関わっています。自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」の2つに分けられます。交感神経は、心拍数をあげたり血管を収縮させたりするなど体をアクティブにする働きを持ち、副交感神経は、心拍数を下げ血管を拡張させるなど、体をリラックスさせる働きをつかさどっています。特に毎日忙しく働いている私たちは、交感神経へとバランスが傾いているケースが多く、「自律神経が乱れている状態」となり、不眠などにつながっていきます。よい睡眠のためには、交感神経ではなく、副交感神経をしっかり働かせることが大切です。

最近私が自律神経を整えるために、寝る前にやっているのが、順天堂大学医学部の小林弘幸教授が勧める「3行日記」です。つぎの1~3を、できるだけ簡潔に、ゆっくり丁寧に、寝る前の5分で書きます。

1.よくなかったこと(うまくいかなかったこと、嫌だったこと)

2.よかったこと(うまくいったこと、感動したこと、嬉しかったこと)

3.明日の目標(関心を引いた些細なことでもOK)

スマホやパソコンを切った静かな環境で、今日うまくいかなかったことを書いて反省し、今日うまくいったことを書いて心を快適にでき、自分の経験を客観的にとらえることで「自律神経を良好に」保つことができるそう。そして、明日の目標は「自分の糧(力)」になるとのことです。

「3行日記」を書くときは、静かで穏やかな時間が流れ、副交感神経が優位になり、気持ちが落ち着きます。ある意味、自然な入眠儀式になるのです。

次回は、「【不老脳 (9) 】スマホのどこが脳に悪いのか? スマホのない生活は考えられないけれど、便利すぎるからこそのデメリットもいろいろあります。脳とスマホについてお話します。

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/ 【ストレスマネージャー】https://www.neu-active-brain.com/stress-manager/

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